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第三章 ここから始まる

7 古書カフェ開店企画ですよ

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「ねえ、みどりちゃん、吉田さんは結局何しに来たんだろうね?」

  わたしはテーブルを布巾で拭きながら言った。

「さあね?  お菓子を食べに来たのかな?  あ、それか動物のお客さんの話をしに来たのかな?」

「うん、だけど吉田さんの姿が忽然と消えたね」

「うん、帰ったみたいだね」

  わたしとみどりちゃんは顔を見合わせて首を傾げた。

  吉田さんはよく分からない人だ。わたし達にこの古書カフェ店を任せて何をしているのだろか?   お店が繁盛しなくても気にする素振りも見せない。考えると謎が深まるばかりだ。わたしは吉田さんのことを何も知らないということに今更ながら気がついた。

  あの猫のように自由きままな姿にハイビスカスのTシャツ。吉田さんの姿が頭の中に浮かんでは消えた。

  猫が寝ている時に見せる幸せそうな細くなるあの可愛らしい目に吉田さんの笑顔は似ている。なぜだか分からないけれどどんな人なのかなと吉田さんのことが気になってきた。

  吉田さんがどんな人なのか知りたくなってきた。


    それからもお客さんはなかなか来なかった。わたしとみどりちゃんはあくびをしたり本を読んだり書棚の整理をするなどして時間を過ごした。

  ゆっくりと考えていこうとは思ったけれどこんなことで良いのかなとやっぱり悩んでしまう。本がたくさん詰まった広い店内にわたしとみどりちゃんの二人だけ。これはなんとも言えない贅沢な空間だと思う。

「ねえ、真理子。古本の安売りセールでもやろうか?  それとチラシも配ろうよ」

  みどりちゃんは読んでいた本を机の上にパタンと置き立ち上がった。みどりちゃんの顔を見ると目がキラキラ輝いていた。

「うん、やりたい、やりたいよ。古本の安売りセールっていいかもね。それからチラシもあるとお客さんに気がついてもらえるかもね」

  わたしは嬉しくなって飛び跳ねた。

「真理子ってば飛び跳ねないでよ。埃が立つよ」

  みどりちゃんは嫌そうに眉間に皺を寄せた。

「だって、希望が湧いてきたんだもん」

  わたしは嬉しくてぴょんぴょんとうさぎのように跳んでしまった。


  「やっぱり開店セールだよね。お店の入口に看板を出したいね」

  みどりちゃんはペンを持ちノートに『安売りセール、看板』と書いた。

「うん、夢が膨らむね。全品半額セールとかはどうかな?」

「うん、だけど真理子いきなり全品半額というのもね」

  みどりちゃんはそう言ってうーんと唸った。

「全品半額はダメかな?  うーん、そうか……あ、じゃあわたしとじゃんけんして勝ったら半額とかは?」

「えっ、真理子とじゃんけん~何よそれ?」

「楽しくないかな?」

「そうだね、それ採用!」

  みどりちゃんはにんまりと笑いノートに『真理子とじゃんけん。真理子に勝ったら本を半額にする』なんて書いた。まさかのあっさり採用にわたしは驚いた。

「やったね、みどりちゃん」

  わたしは、嬉しくなってぴょんぴょん飛び跳ねた。

「だから真理子飛び跳ねないでよ。埃が立つでしょう」

「はい、はい、分かりました」と言いながらぴょんぴょん飛び跳ねてしまった。

「真理子ってば飛び跳ねないでよ」

  みどりちゃんはキッとわたしの顔を睨んだ。

「はーい」

「ふん、真理子、何がはーいよ。さあ、そうと決まればいろいろ忙しくなるよ」

  みどりちゃんはノートに『頑張ろう』と書いた。
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