上 下
28 / 75
第三章 ここから始まる

2 お客さん来てください

しおりを挟む
  わたしは夢と希望を持ち『まりみど古書カフェ店』のシャッターを開けて扉にかかっている木製のドアプレートをクローズからオープンにひっくり返しお店の前にオープンの看板を出した。

「みどりちゃん、今日こそは人間のお客様も来てくれるよね?」

  わたしは、みどりちゃんの前向きな返事を期待したのだけど、「……だといいね」なんて言うみどりちゃんの表情は不安げだから期待外れだ。

  壁に掛かっている時計の針が十時を指した。いよいよ『まりみど古書カフェ店』オープン二日目の始まりだ。

  今日は店内にお客さんが溢れかえり大忙しになるんだ。きっとお客さんは本を片手にお茶を飲み楽しい一時を過ごしてくれるはずた。そう考えるとワクワクドキドキしてきた。

  「ねえ、みどりちゃんお客さん来ないね。  どうしてかな?  ねえ、みどりちゃんてば聞いてるの?」

「聞いてるよ……」

「だったらどうして返事をしないのよ」

  みどりちゃんは足を伸ばしでーんと椅子に座り読書をしている。

「あのね、真理子……そのお客さんが来ないね。どうしてかな?  って何回言った?」

  みどりちゃんは本から顔を上げ眉間に皺を寄せてふぅーと溜め息をついた。

「えーっと、一回、二回、三回、四回、五回、あー何回言ったかな?」わたしは指を折りながら考えた。うーん、何回かな?

「真理子、何回言ったかなんて真面目に考えなくてもいいから……」

  みどりちゃんは呆れたように溜め息をつく。

「だって、お客さんがたくさん来るといいなと思って本を片手にお茶を飲み嬉しそうに笑っているお客さんをイメージしているのに一人も来ないんだよ」

  わたしは、はぁーと溜め息をついた。まりみど古書カフェ店のオープン二日目もまだ人間のお客さんが来てくれません。

  たくさんお客さんで溢れかえるまりみど古書カフェ店になりますように。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

マルチ商法女と戦っていたら、もっととんでもないものと戦うことになってしまった件

青山済
キャラ文芸
SNSでマルチ商法を小馬鹿にしていたら、マルチ商法信者に絡まれてしまった主人公、青山済。 友人との特定作戦、ライバル団体によるコメント連打攻撃でマルチ商法女を再起不能にするものの、最近知り合った別のマルチ商法信者と思われる人物の調査を進めるうち、さらに危険なものの真相に触れることになったのだった...。 元政治活動系エンジニアと変わり者の仲間達が日本の闇を暴く、大スペクタクルロマン! ※他のサイトでも同時連載中です。

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

後宮見習いパン職人は、新風を起こす〜九十九(つくも)たちと作る未来のパンを〜

櫛田こころ
キャラ文芸
人間であれば、誰もが憑く『九十九(つくも)』が存在していない街の少女・黄恋花(こう れんか)。いつも哀れな扱いをされている彼女は、九十九がいない代わりに『先読み』という特殊な能力を持っていた。夢を通じて、先の未来の……何故か饅頭に似た『麺麭(パン)』を作っている光景を見る。そして起きたら、見様見真似で作れる特技もあった。 両親を病などで失い、同じように九十九のいない祖母と仲良く麺麭を食べる日々が続いてきたが。隻眼の武官が来訪してきたことで、祖母が人間ではないことを見抜かれた。 『お前は恋花の九十九ではないか?』 見抜かれた九十九が本性を現し、恋花に真実を告げたことで……恋花の生活ががらりと変わることとなった。

ガダンの寛ぎお食事処

蒼緋 玲
キャラ文芸
********************************************** とある屋敷の料理人ガダンは、 元魔術師団の魔術師で現在は 使用人として働いている。 日々の生活の中で欠かせない 三大欲求の一つ『食欲』 時には住人の心に寄り添った食事 時には酒と共に彩りある肴を提供 時には美味しさを求めて自ら買い付けへ 時には住人同士のメニュー論争まで 国有数の料理人として名を馳せても過言では ないくらい(住人談)、元魔術師の料理人が 織り成す美味なる心の籠もったお届けもの。 その先にある安らぎと癒しのひとときを ご提供致します。 今日も今日とて 食堂と厨房の間にあるカウンターで 肘をつき住人の食事風景を楽しみながら眺める ガダンとその住人のちょっとした日常のお話。 ********************************************** 【一日5秒を私にください】 からの、ガダンのご飯物語です。 単独で読めますが原作を読んでいただけると、 登場キャラの人となりもわかって 味に深みが出るかもしれません(宣伝) 外部サイトにも投稿しています。

【完結】古都奈良 妖よろず相談所

衿乃 光希(恋愛小説大賞参加します)
キャラ文芸
太陽のように明るい夏樹16歳。 人と距離を置く冬樺18歳。 口が悪くてケンカっ早い、でもかわいいカマイタチのカマ吉。 所長、啓一郎の指示のもと、妖の困り事を解決するため、古都奈良を駆けまわる。 X(旧Twitter)にてキャラ投票をしていました。 結果は4項目全部に票が入ったあと、夏樹とカマ吉が同列1位で終了しました。 投票してくださいました方々、ありがとうございました。

禁色たちの怪異奇譚 ~ようこそ、怪異相談事務所へ。怪異の困りごと、解決します~

出口もぐら
キャラ文芸
【毎日更新中!】冴えないおっさんによる、怪異によって引き起こされる事件・事故を調査解決していくお話。そして、怪異のお悩み解決譚。(※人怖、ダーク要素強め)怪異のお姉さんとの恋愛要素もあります。 【あらすじ】  大学構内掲示板に貼られていたアルバイト募集の紙。平凡な大学生、久保は時給のよさに惹かれてそのアルバイトを始める。  雇い主であるくたびれた中年、見藤(けんどう)と、頻繁に遊びに訪れる長身美人の霧子。この二人の関係性に疑問を抱きつつも、平凡なアルバイト生活を送っていた。  ところがある日、いつものようにアルバイト先である見藤の事務所へ向かう途中、久保は迷い家と呼ばれる場所に迷い込んでしまう ――――。そして、それを助けたのは雇い主である見藤だった。 「こういう怪異を相手に専門で仕事をしているものでね」 そう言って彼は困ったように笑ったのだ。  久保が訪れたアルバイト先、それは怪異によって引き起こされる事件や事故の調査・解決、そして怪異からの依頼を請け負う、そんな世にも奇妙な事務所だったのだ。  久保はそんな事務所の主――見藤の人生の一幕を垣間見る。 お気に入り🔖登録して頂けると励みになります! ▼この作品は「小説家になろう」にも投稿しています。

サザン・ホスピタル 短編集

くるみあるく
青春
2005年からしばらくWeb上で発表していた作品群。 本編は1980~2000年の沖縄を舞台に貧乏金髪少年が医者を目指す物語。アルファポリスに連載中です。 この短編は本編(長編)のスピンオフ作品で、沖縄語が時折出てきます。 主要登場人物は6名。  上間勉(うえま・つとむ 整形外科医)  東風平多恵子(こちんだ・たえこ 看護師)  島袋桂(しまぶくろ・けい 勉と多恵子の同級生 出版社勤務)  矢上明信(やがみ・あきのぶ 勉と多恵子の同級生 警察官)  粟国里香(あぐに・りか 多恵子の親友で看護師)  照喜名裕太(てるきな・ゆうた 整形外科医) 主人公カップルの子供である壮宏(たけひろ)と理那(りな)、多恵子の父母、サザン・ホスピタルの同僚たちが出たりします。

月の許嫁と太陽〜世子の許嫁になった少女の運命〜

空岡
キャラ文芸
世子の許嫁に指名された平民の子翠月と、世子や世子の兄夏月のもつれあう運命の物語。

処理中です...