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第二章 もふもふが集う古書カフェ店へようこそ!
2 ようこそ! 可愛いお客様
しおりを挟むわたしは信じられないものを見てしまった。この目に見えているものは果たして本物何だろうか? わたしの目がおかしくなってしまったのではないかなと思い目を擦る。
そして、もう一度扉の方向に目を向ける。
だけど、やっぱりいる。大きく目を見開きもう一度見てみるけれど、やっぱりそこに信じられないものがいる。
「……み、みどりちゃん、あれは?」
きっとわたしの声は震えているのではないかなと思う。
「こんばんは、お茶を飲ませてくださいワン」
「こんばんは、ケーキが食べたいですにゃん」
みどりちゃんが返事をするよりも先に扉の前にいる人間のように後ろ足だけで立っている犬とトラ猫の茶和ちゃんが言った。その隣にヤンバちゃんもちょこりんといるじゃないの。
やっぱり、茶和ちゃんとヤンバちゃんは存在していたんだ。
わたしとみどりちゃんが口を開けて呆然と立ち尽くしていると、
「久しぶりですにゃん。真理子ちゃんにみどりちゃん、会いたかったですにゃん」と言って茶和ちゃんがにゃぱにゃぱと笑った。
ヤンバちゃんも「久しぶりです。わたしも真理子ちゃんとみどりちゃんに会いたかったよ~コッコッコー」と笑っている。
「茶和ちゃん、ヤンバちゃん久しぶりだね。元気にしてた?」とわたしも笑顔を浮かべて言った。
「茶和ちゃんとヤンバちゃんってやっぱり存在していたんだね」とみどりちゃん。
「当たり前ですにゃん」、「当たり前だよ。コッコッコー」と茶和ちゃんとヤンバちゃんが言った。
猫の毛玉ボールとヤンバルクイナの羽根を置き土産にした二人は存在していた。この現実が嬉しくてわたしは笑顔になった。横目でちらりとみどりちゃんを見るとわたしと同じように頬を緩めていた。
茶和ちゃんとヤンバちゃんと再会出来て良かったと思ったところで、チワワかなと思われる犬の大きな目と視線が合った。
「こんばんは。お茶を飲ませてくださいワンワン」
どうやらこの犬はお客様らしい。
「お好きな席にどうぞ」
まりみど古書カフェ店の初めてのお客様は動物だった。それも喋る動物だっただなんてまるでお伽の国か夢みたいで信じられないけれどどうやらこれは夢ではないようだ。自分の頬をぎゅっとつねってみるがやっぱり痛い。
「お邪魔しますワン」
犬はまるで人間のように手足を振り二本足で歩く。その後をにゃんにゃんと茶和ちゃんとコッコッコーとヤンバちゃんが続く。
二匹と一羽は店内をくるりと見渡す。その姿が可愛らしくてわたしは笑ってしまう。
「ねえ、みどりちゃん、あの子達って椅子に座れるのかな?」
「あ、そう言えばそうだね。子供用のハイチェアに座ってもらおうか」
わたし達は急いで店内の片隅に置いてある木製のハイチェアを運んだ。
「ここにしましょうにゃん」
茶和ちゃんは店内左奥にあるテーブル席を選んだ。
「茶和ちゃんどうぞ」わたしはハイチェアを並べそして茶和ちゃんを抱っこして座らせた。
「にゃはにゃん。ありがとう」
茶和ちゃんはお腹を丸出しにして足をでーんと伸ばして座るその姿は人間のおじさんみたいに見えた。
犬も茶和ちゃんと同じような姿で座りヤンバちゃんはハイチェアに乗る形だ。
「では、改めて、まりみど古書カフェ店へようこそ」
わたしとみどりちゃんは両手を大きく広げてとびっきりの笑顔で動物達をお客様として迎え入れた。
「こんばんはにゃん、茶和ですにゃん」
「こんばんは、ヤンバだよ。コッコッコー」
「こんばんはワン、はじめまして、チワワンで~すワンワンワン」
二匹と一羽の可愛らしいお客様は挨拶をしてくれた。
「チワワンちゃんって名前なんだね」
わたしは、目が大きくて可愛らしいチワワンちゃんの頭を撫でながら言った。
「そうだよワン。チワワンって名前お気に入りなんだ」
チワワンちゃんは大きな目を潤ませて答えた。チワワでチワワンというそのままの名前のようにも感じられるけれど、どうやら自分の名前が誇らしいようだ。
可愛らしいなと思いその小さな頭をわたしはもう一度撫でた。
「ご注文は何でしょうか? あ、一応メニューがあるから見てね」とみどりちゃんがテーブルの上にメニューを置いた。
そのメニューを二匹と一羽は興味津々な表情で眺めている。この子達は何を注文するのかな?
楽しくなりそうな夜の始まりだった。
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