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第一章 古書カフェ店のスタートです

10 暇だ。沖縄らしくゆったりしよう

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  それからしばらく暇な時間が続いた。

「みどりちゃん、お客さん来ないね、暇だね」

「真理子ってばそんなにウロウロしなくてもいいんじゃない?」

  みどりちゃんは大きなあくびをした。

「だって、お客さんがまだ一人も来ないんだよ。みどりちゃんも吉田さんも呑気過ぎるよ」

  わたしは、みどりちゃんの眠たそうなとろりんとした顔と吉田さんのやる気のない表情に呆れた。オープン前の二人と言えばテキパキ動いていたのに今のこのぬぼぬぼーとした姿はなんなのかなと思うと呆れてしまう。

  じたばたしても仕方がないけれど……。

  わたしは店内をぶらぶらと歩く。本がぎっしり詰まった木製の書棚この中には夢の溢れる世界がたくさんある。行ったことのない場所や世界や時代にだって行ける。

  お客さんが本を手に取り嬉しそうにページをぺらぺらと捲るそんな姿を想像すると幸せな気持ちになる。そして、レジカウンターに本を持って来てくれるんだ。

  わたしはニマニマと笑いながら正面奥にあるレジカウンターに入り椅子に腰を下ろした。


  
  楽しいことを考えよう。明るくわたしらしく笑っていよう。レジカウンターの上に置かれたシーサーの置物は大きな口を開けて笑っている。真理子ちゃんクヨクヨするなよと言ってくれているように見えた。

  沖縄の方言で『なんくるないさ』という言葉もあるじゃない。挫けずに正しい道を歩み努力をしているといつかは良い日が来る。

 せっかく南国の沖縄で生活をしているんだから真面目にのんびりしないとね。

  沖縄の人はゆっくりのんびりしている人が多くて集合時間には当たり前のように遅れて来るし、飲食店で食事が出て来るのがあまりにも遅くて店員さんにあとどれくらい時間がかかりますかと聞くと「あ、忘れていました」なんてこともあったな。

  東京では感じられないこのゆっくりゆるい感覚がわたしに合っているのもたしかだ。

「真理子、ちょっと真理子~」

  誰かがわたしの肩をぽんぽんと叩いている。うるさいな、せっかくゆっくりのんびりしているのになんだろか。
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