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第一章 古書カフェ店のスタートです

6 そろそろ古書カフェ店オープンです

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  それから数日後の朝、その日は良い天気だった。沖縄の日差しがキラキラ輝いている。

「よーし、今日も良い一日になるよ~」

  わたしは、窓を開けてベランダに出る。沖縄の風が吹き気持ちいいのでなんだか嬉しくなった。いつもは朝寝坊なわたしだけど今日は早く目が覚めた。

  新しい生活にワクワクドキドキして眠ってなんていられない。だって、今日からいよいよ古書カフェ店のオープンなのだから。

  お客さんは来てくれるかな。不安もあるけれど来てくれると信じよう。

  今日はわたしとみどりちゃんにとっての古書カフェ店のオープン初日ということもあり吉田さんがお店を手伝ってくれる。それもなんだか嬉しくなる。

「よーし頑張るぞ~」

  わたしは、綺麗な沖縄の真っ青な青空を見上げて気合いを入れた。

  

「梅木さん、並木さん、おはようございます。さあ、頑張りましょうね」

  吉田さんがにっこりと笑った。その笑顔は猫の寝顔みたいな笑顔だった。

「……可愛い、あっ……」

「はっ?  可愛いって何でしょうか?」

  吉田さんは首を傾げている。……しまった。猫の寝顔にあまりにも似ていて可愛いくて思わず可愛いと言ってしまった。

  不思議そうに首を傾げながらわたしをじっと見てくるその目もなんだか猫に似ていた。

「……あははっ、あ、その猫の寝顔に似ていて可愛かったのでつい言葉に出してしまいました」

  わたしは正直に答え頭を掻きながら笑った。そんなわたしをみどりちゃんは横目でギロリと睨みわたしの腕を肘でつついてきた。

「可愛いですか?  たまに猫の目に似ているとは言われますが……喜んでいいのか分かりませんがありがとうございます」

  吉田さんは、またまた猫のような笑顔を浮かべて笑った。

  「さてと、猫に似ているかはさておき仕事ですよ。気合いを入れなおして頑張りましょうね」

  今日もハイビスカスTシャツ姿の吉田さんは右手をグーにして気合いが入っている。

「はい、頑張ります」とわたしとみどりちゃんは元気よく答えた。

「梅木さん、何をしているんですか?  沖縄関連の本はこっちですよ。それは漫画ですよね?」

「あ、本当だ。すみません」

  わたしは、沖縄と書かれたインデックスプレートのある本棚に漫画本を並べてしまった。またドジをしてしまった。慌てて沖縄関連の本を探したが見つからない。

「真理子、これだよ」

  みどりちゃんが、ぱっと沖縄関連の本を渡してくれた。やっぱりみどりちゃんはテキパキしていて流石だなと思うのと同時にわたしは何をしてもドジばかりだと思うと嫌になる。

「……ありがとう。みどりちゃん」

  わたしの顔はきっと曇っているだろう。みどりちゃんから受け取った沖縄関連の本を本棚に並べながらわたしは溜め息をついた。

  
  何をやってもみどりちゃんのように上手くいかない。以前働いていたホテルの仕事でもそうだった。

  ドジで不器用で要領が悪くてミスばかり一生懸命頑張っても空回りこんな自分が嫌で落ち込んでしまう。

  手にした沖縄の本は透明度が抜群でエメラルドグリーンの海がキラキラ輝いていて吸い込まれそうだ。

  わたしもキラキラ輝きたい。だけど、何も出来ない。前向きなところが取り柄だなんて言ってはいるものの時には泣きたくなる日もあるのだ。

  綺麗な海が眩しい表紙の本を本棚に入れた。この本棚には夢がいっぱい詰まっている。綺麗な写真やワクワクする物語、悲しくなってしまうだけどそれでいて美しい物語。

  そんな夢があるこの場所でわたしは頑張って行こう。

「梅木さん、開店はもうすぐですよ。大丈夫ですか?」

  気がつくとわたしの後ろに吉田さんが立っていた。

「あ、すみません」

  わたしは慌てて山積みになっている本を本棚にしまった。またぼーっとしていた。
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