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俺達がこの世界にやって来たのは意味があるのかもしれない

空から貧神が舞い降りてきた

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「貧神はどうしたのかな?」
「空の旅を楽しんでいるのかなにゃん?」
「そんなわけないと思うぞ。あの声は怯えた声だぞ」

  だって耳をつんざくような悲鳴なのだから。

「う~ん、たしかにね……宙をぷかぷかにゃんと浮いているのが怖くなったのかな?」

  チャーミにゃんは立ち上がり顎に肉球のある可愛らしい手を当てて唸った。

「それもあるかもしれないけど何か起きたのかもしれないぞ」

  そう俺が言ったその時、

「うわぁーうわぁーうわぁー!!  た、助けてくれー」 

  貧神の絹を裂くような叫び声とほぼ同時に何かが俺とチャーミにゃんの頭上に舞っていることに気がついた。

「あ、あれは!?」
「あれはにゃん!?」

「うわぁーうわぁーうわぁーうわぁー!!」

「あれは貧神だぞ」
「ほ、本当だにゃん。あれは貧神だ~にゃん」

「うわぁーうわぁーうわぁー!!」と貧神の情けない叫び声とともに貧神が空からゆらゆらゆらーりと落ちてきて川にバッシャンと落下した。

「あ、貧神だにゃん!」とチャーミにゃんは川に落下した貧神をじっと見ている。

「お、おい貧神大丈夫なのかよ?  この川浅いから体を強く打ったりしていないか?」

  俺は心配になり、川にぷかぷか浮いている貧神に視線を落とし尋ねた。

「な、なんとか大丈夫だ……だけどびっくりしたぞ」

  貧神のその声は恐怖に震えている。

「貧神、何故川に落っこちてきたんだ?」

「それは俺が聞きたいよ。体が勝手に動いたかと思うとまるでブレーキが壊れた自転車が坂道を転がり落ちるように俺は空を転がり落ちたんだぞ!」

  貧神体を起こし震える声で言った。

「貧神は大変だったんですにゃん」

  チャーミにゃんも貧神に近づき眉間に皺を寄せ心配そうに見ている。

「あのな……誰のせいだと思っているんだよ?」

   貧神がチャーミにゃんを睨んだ。

「わたしだよにゃん」

「即答かよ!」

「はいにゃん。わたしが魔法の杖で貧神を空にぷかぷかと浮かせてしまったのでにゃん」

  チャーミにゃんは申し訳なさそうに言ってはいるがどこか得意げな声にも聞こえた。
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