オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしの笑顔と恐怖

なかじまあゆこ

文字の大きさ
上 下
80 / 87
オレンジ色の世界と恐怖

そんな……

しおりを挟む
「みんな気づいているよね。ここはわたしが半分作り上げた世界だと言うことを……」

  みんなは美奈の顔をじっと見ている。わたし以外のみんなはどんな気持ちで美奈のことを見ているのだろうか。

「美奈、どういうことだよ。どうして泣いているんだよ?  俺は全然分からないぞ!」

  久野君はびっくりしてパニックになっているようだ。

「そっか、久野君は気づいていないんだね。わたしが死んでいることを」

「はぁ!  死んでいるって何の冗談を言っているんだよ!」

「うふふ、悲しいけどわたし死んでいるんだよ。誰かに殺されたのかな……」

  美奈の目は悲しみと苦しみにそれから怒りが混ざっているように見えた。

「美奈ちゃん!  死んでいるなんて言わないで美奈ちゃんはここに存在しているじゃない」

  わたしは黙っていられなくて叫んでしまった。

「亜沙美ちゃん、ありがとう。でもわたしはこの世にいないみたいなんだよ」

  美奈は悲しげに微笑みそれから悔しそうに唇を噛んだ。

「そ、そんな。紫陽花柄の浴衣姿なのはもしかして、その時に……」

「うん、そうだよ。わたし夏祭りの日に誰かに殺されたんだよ。大好きなみんなとずっと夏祭りみたいな日々を送りたくて招待したけれど、もう電車も動いているしわたしの力もうダメみたい」

  美奈の顔は悲しげに曇った。

「美奈ちゃん、そんなことってあるの。あんまりだよ」

  みんなが目を見開きびっくりしたり泣いたり様々な表情をしている。

「でも、どうしてわたし達は何も覚えていないの?」

  真由香がわたしも気になっていることを聞いた。

  美奈は流した涙を手の甲で拭き顔を上げ笑った。

「それはみんなが忘れたいと思っているからかもしれないね」

  確かにもし美奈が死んだのであれば忘れたいけれど、だからと言って忘れてしまったなんて信じられない。

「ふふっ、みんな驚いた顔をしているね」

  美奈は先程まで涙を流していたのに今はニヤリと笑いこの状況を楽しんでいるようにも見える。わたし達の顔をじっと見た。

「だって、驚くの当然だよな。それと、同窓会の案内状はクラスの奴全員に届いたのか?」

「松木君の言う通りだね。ねえ、みんなどうして案内状が届いたか分かる?」

「それってクラスメイト全員に届いていないってことかな?」

「うん、そうだよ。みんなはわたしに選ばれたのかもね。まあ、あの夏祭りで会っているからだけどね」

  美奈のツインテールが風にさらさらと揺れた。

「美奈ちゃんに選ばれた!」
  わたし達みんなの声が重なった。

「そうよ。わたしに選ばれたのよ」

  だから、かなは同窓会の案内状なんて知らないと言ったのだ。でも、どうしてわたし達は美奈に選ばれたのだろうか。

「どうして?」アザミ柄の浴衣姿の佐和が聞いた。

「それはね。じゃあ、順番に言うわよ。先ずは、久野君からね」

「えっ?  俺?」と久野君は自分の顔を指差し聞いた。

「うん。久野君は明るくて同窓会を盛り上げてくれるからよ」

「なんかただ盛り上げ役じゃないか」

「うふふ、ごめんね」

  

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

The Last Night

泉 沙羅
ホラー
モントリオールの夜に生きる孤独な少女と、美しい吸血鬼の物語。 15歳の少女・サマンサは、家庭にも学校にも居場所を持てず、ただひとり孤独を抱えて生きていた。 そんな彼女が出会ったのは、金髪碧眼の美少年・ネル。 彼はどこか時代錯誤な振る舞いをしながらも、サマンサに優しく接し、二人は次第に心を通わせていく。 交換日記を交わしながら、ネルはサマンサの苦しみを知り、サマンサはネルの秘密に気づいていく。 しかし、ネルには決して覆せない宿命があった。 吸血鬼は、恋をすると、その者の血でしか生きられなくなる――。 この恋は、救いか、それとも破滅か。 美しくも切ない、吸血鬼と少女のラブストーリー。 ※以前"Let Me In"として公開した作品を大幅リニューアルしたものです。 ※「吸血鬼は恋をするとその者の血液でしか生きられなくなる」という設定はX(旧Twitter)アカウント、「創作のネタ提供(雑学多め)さん@sousakubott」からお借りしました。 ※AI(chatgpt)アシストあり

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

逢魔ヶ刻の迷い子3

naomikoryo
ホラー
——それは、閉ざされた異世界からのSOS。 夏休みのある夜、中学3年生になった陽介・隼人・大輝・美咲・紗奈・由香の6人は、受験勉強のために訪れた図書館で再び“恐怖”に巻き込まれる。 「図書館に大事な物を忘れたから取りに行ってくる。」 陽介の何気ないメッセージから始まった異変。 深夜の図書館に響く正体不明の足音、消えていくメッセージ、そして—— 「ここから出られない」と助けを求める陽介の声。 彼は、次元の違う同じ場所にいる。 現実世界と並行して存在する“もう一つの図書館”。 六人は、陽介を救うためにその謎を解き明かしていくが、やがてこの場所が“異世界と繋がる境界”であることに気付く。 七不思議の夜を乗り越えた彼らが挑む、シリーズ第3作目。 恐怖と謎が交錯する、戦慄のホラー・ミステリー。 「境界が開かれた時、もう戻れない——。」

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

あの子が追いかけてくる

なかじまあゆこ
ホラー
雪降る洋館に閉じ込められた!! 幼い日にしたことがわたしを追いかけてくる。そんな夢を見る未央。 ある日、古本屋で買った本を捲っていると 『退屈しているあなたへ』『人生の息抜きを』一人一泊五千円で雪降る洋館に宿泊できますと書かれたチラシが挟まっていた。 そのチラシを見た未央と偶然再会した中学時代の同級生京香は雪降る洋館へ行くことにした。 大雪が降り帰れなくなる。雪降る洋館に閉じ込められるなんて思っていなかった未央は果たして……。 ホラー&ミステリになります。悪意、妬み、嫉妬などをホラーという形で書いてみました。最後まで読んで頂くとそうだったんだと思って頂けるかもしれません。 2018年エブリスタ優秀作品です。

不労の家

千年砂漠
ホラー
高校を卒業したばかりの隆志は母を急な病で亡くした数日後、訳も分からず母に連れられて夜逃げして以来八年間全く会わなかった父も亡くし、父の実家の世久家を継ぐことになった。  世久家はかなりの資産家で、古くから続く名家だったが、当主には絶対守らなければならない奇妙なしきたりがあった。  それは「一生働かないこと」。  世久の家には富をもたらす神が住んでおり、その神との約束で代々の世久家の当主は働かずに暮らしていた。  初めは戸惑っていた隆志も裕福に暮らせる楽しさを覚え、昔一年だけこの土地に住んでいたときの同級生と遊び回っていたが、やがて恐ろしい出来事が隆志の周りで起こり始める。  経済的に豊かであっても、心まで満たされるとは限らない。  望んでもいないのに生まれたときから背負わされた宿命に、流されるか。抗うか。  彼の最後の選択を見て欲しい。

田舎のお婆ちゃんから聞いた言い伝え

菊池まりな
ホラー
田舎のお婆ちゃんから古い言い伝えを聞いたことがあるだろうか?その中から厳選してお届けしたい。

視える僕らのルームシェア

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

処理中です...