オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしの笑顔と恐怖

なかじまあゆこ

文字の大きさ
上 下
78 / 87
オレンジ色の世界と恐怖

かなちゃんは勘違いしたんだよね

しおりを挟む

  電話を切ったわたしは美奈達の後を追いかけた。美奈が死んでいるなんてもう生きていないなんてそんなわけない。

  高校三年生の時に事故で亡くなったなんて有り得ないよ。

  美奈は今もわたしの目の前をツインテールを揺らして歩いている。

「亜沙美、なんか叫んでいたけどどうかしたのか?」

  松木がわたしの隣を歩きながら聞いてきた。

「……うん、ちょっと言いにくいことなんだけどかなちゃんから電話があって美奈ちゃんが……」

「美奈がどうしたんだ?」

「そ、それが死んだって言うんだよ。高校三年生の時に事故で」

「はぁ?  美奈が事故で死んだ?  美奈だったら目の前にいるじゃないか」

「うん、美奈は目の前にいるよね。幻じゃないよね。松木にも見えているんだね。良かった」

  わたしはほっとした。

「誰がそんなことを言ったんだよ?」

「かなちゃんだよ」

「かなちゃんってショートヘアでバレーボール部だった活発な女子かな?」

「うん、そうだよ」

「そうか、嘘をつくような奴じゃなかったよな。なんか勘違いをしているんじゃないかな?」

「そうだよね。うん、きっとそうだ。かなちゃんは他の誰かと勘違いをしているんだよね」

  そうだ。松木の言う通りかなちゃんは誰かと美奈を勘違いをしているんだ。

「ここ懐かしいよね。この町に一軒しかないスーパーでアイスとか買ったよね」

  美奈がぴたりと足を止めこちらを振り向き笑った。

「俺は、当たりのつきアイスをよく買ったな。木の棒に当たりって書いてあった時は嬉しかったな」

  久野君は目を細めて笑った。

「わたしも当たりつきアイスよく買ったよ。滅多に当たらないから当たるとはしゃいだな」

  真由香もそう言ってにっこりと笑った。他のみんなも頷いている。

「じゃあさ、アイスを買おうよ」と美奈が言うと、みんなは賛成した。

  わたし達は木々と湖が美しい自然が溢れる中をスーパーで買ったアイスを食べながら歩いた。

  そして、わたし達が通っていた高校の前に立っていた。

「わたし達の母校だね。懐かしいな」

  美奈はそう言って校舎をじっと眺めた。校門から見える赤色の校舎の屋根は緑に囲まれていて山々はそれはもう美しくて自然の中にある一枚の絵のように見える。

  懐かしいあの日々がここに存在していた。

「高校生活の最後に行った夏祭りも楽しかったね」

  美奈の発したその言葉にわたしはなぜだかドキッとした。懐かしそうに美奈は遠い目をした。今、この校舎を眺める美奈は何を考えているのだろうか。

  そういえば思い出の場所巡りになっているなとわたしは思った。

  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

The Last Night

泉 沙羅
ホラー
モントリオールの夜に生きる孤独な少女と、美しい吸血鬼の物語。 15歳の少女・サマンサは、家庭にも学校にも居場所を持てず、ただひとり孤独を抱えて生きていた。 そんな彼女が出会ったのは、金髪碧眼の美少年・ネル。 彼はどこか時代錯誤な振る舞いをしながらも、サマンサに優しく接し、二人は次第に心を通わせていく。 交換日記を交わしながら、ネルはサマンサの苦しみを知り、サマンサはネルの秘密に気づいていく。 しかし、ネルには決して覆せない宿命があった。 吸血鬼は、恋をすると、その者の血でしか生きられなくなる――。 この恋は、救いか、それとも破滅か。 美しくも切ない、吸血鬼と少女のラブストーリー。 ※以前"Let Me In"として公開した作品を大幅リニューアルしたものです。 ※「吸血鬼は恋をするとその者の血液でしか生きられなくなる」という設定はX(旧Twitter)アカウント、「創作のネタ提供(雑学多め)さん@sousakubott」からお借りしました。 ※AI(chatgpt)アシストあり

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

逢魔ヶ刻の迷い子3

naomikoryo
ホラー
——それは、閉ざされた異世界からのSOS。 夏休みのある夜、中学3年生になった陽介・隼人・大輝・美咲・紗奈・由香の6人は、受験勉強のために訪れた図書館で再び“恐怖”に巻き込まれる。 「図書館に大事な物を忘れたから取りに行ってくる。」 陽介の何気ないメッセージから始まった異変。 深夜の図書館に響く正体不明の足音、消えていくメッセージ、そして—— 「ここから出られない」と助けを求める陽介の声。 彼は、次元の違う同じ場所にいる。 現実世界と並行して存在する“もう一つの図書館”。 六人は、陽介を救うためにその謎を解き明かしていくが、やがてこの場所が“異世界と繋がる境界”であることに気付く。 七不思議の夜を乗り越えた彼らが挑む、シリーズ第3作目。 恐怖と謎が交錯する、戦慄のホラー・ミステリー。 「境界が開かれた時、もう戻れない——。」

あの子が追いかけてくる

なかじまあゆこ
ホラー
雪降る洋館に閉じ込められた!! 幼い日にしたことがわたしを追いかけてくる。そんな夢を見る未央。 ある日、古本屋で買った本を捲っていると 『退屈しているあなたへ』『人生の息抜きを』一人一泊五千円で雪降る洋館に宿泊できますと書かれたチラシが挟まっていた。 そのチラシを見た未央と偶然再会した中学時代の同級生京香は雪降る洋館へ行くことにした。 大雪が降り帰れなくなる。雪降る洋館に閉じ込められるなんて思っていなかった未央は果たして……。 ホラー&ミステリになります。悪意、妬み、嫉妬などをホラーという形で書いてみました。最後まで読んで頂くとそうだったんだと思って頂けるかもしれません。 2018年エブリスタ優秀作品です。

不労の家

千年砂漠
ホラー
高校を卒業したばかりの隆志は母を急な病で亡くした数日後、訳も分からず母に連れられて夜逃げして以来八年間全く会わなかった父も亡くし、父の実家の世久家を継ぐことになった。  世久家はかなりの資産家で、古くから続く名家だったが、当主には絶対守らなければならない奇妙なしきたりがあった。  それは「一生働かないこと」。  世久の家には富をもたらす神が住んでおり、その神との約束で代々の世久家の当主は働かずに暮らしていた。  初めは戸惑っていた隆志も裕福に暮らせる楽しさを覚え、昔一年だけこの土地に住んでいたときの同級生と遊び回っていたが、やがて恐ろしい出来事が隆志の周りで起こり始める。  経済的に豊かであっても、心まで満たされるとは限らない。  望んでもいないのに生まれたときから背負わされた宿命に、流されるか。抗うか。  彼の最後の選択を見て欲しい。

さや荘へようこそ!(あなたの罪は何?)

なかじまあゆこ
ホラー
森口さやがオーナーのさや荘へようこそ!さや荘に住むと恐怖のどん底に突き落とされるかもしれない! 森口さやは微笑みを浮かべた。 上下黒色のスカートスーツに身を包みそして、真っ白なエプロンをつけた。 それからトレードマークの赤リップをたっぷり唇に塗ることも忘れない。うふふ、美しい森口さやの完成だ。 さやカフェで美味しいコーヒーや紅茶にそれからパンケーキなどを準備してお待ちしていますよ。 さやカフェに来店したお客様はさや荘に住みたくなる。だがさや荘では恐怖が待っているかもしれないのだ。さや荘に入居する者達に恐怖の影が忍び寄る。 一章から繋がってる主人公が変わる連作ですが最後で結末が分かる内容になっています。

田舎のお婆ちゃんから聞いた言い伝え

菊池まりな
ホラー
田舎のお婆ちゃんから古い言い伝えを聞いたことがあるだろうか?その中から厳選してお届けしたい。

処理中です...