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オレンジ色の世界と恐怖
かなちゃんは勘違いしたんだよね
しおりを挟む電話を切ったわたしは美奈達の後を追いかけた。美奈が死んでいるなんてもう生きていないなんてそんなわけない。
高校三年生の時に事故で亡くなったなんて有り得ないよ。
美奈は今もわたしの目の前をツインテールを揺らして歩いている。
「亜沙美、なんか叫んでいたけどどうかしたのか?」
松木がわたしの隣を歩きながら聞いてきた。
「……うん、ちょっと言いにくいことなんだけどかなちゃんから電話があって美奈ちゃんが……」
「美奈がどうしたんだ?」
「そ、それが死んだって言うんだよ。高校三年生の時に事故で」
「はぁ? 美奈が事故で死んだ? 美奈だったら目の前にいるじゃないか」
「うん、美奈は目の前にいるよね。幻じゃないよね。松木にも見えているんだね。良かった」
わたしはほっとした。
「誰がそんなことを言ったんだよ?」
「かなちゃんだよ」
「かなちゃんってショートヘアでバレーボール部だった活発な女子かな?」
「うん、そうだよ」
「そうか、嘘をつくような奴じゃなかったよな。なんか勘違いをしているんじゃないかな?」
「そうだよね。うん、きっとそうだ。かなちゃんは他の誰かと勘違いをしているんだよね」
そうだ。松木の言う通りかなちゃんは誰かと美奈を勘違いをしているんだ。
「ここ懐かしいよね。この町に一軒しかないスーパーでアイスとか買ったよね」
美奈がぴたりと足を止めこちらを振り向き笑った。
「俺は、当たりのつきアイスをよく買ったな。木の棒に当たりって書いてあった時は嬉しかったな」
久野君は目を細めて笑った。
「わたしも当たりつきアイスよく買ったよ。滅多に当たらないから当たるとはしゃいだな」
真由香もそう言ってにっこりと笑った。他のみんなも頷いている。
「じゃあさ、アイスを買おうよ」と美奈が言うと、みんなは賛成した。
わたし達は木々と湖が美しい自然が溢れる中をスーパーで買ったアイスを食べながら歩いた。
そして、わたし達が通っていた高校の前に立っていた。
「わたし達の母校だね。懐かしいな」
美奈はそう言って校舎をじっと眺めた。校門から見える赤色の校舎の屋根は緑に囲まれていて山々はそれはもう美しくて自然の中にある一枚の絵のように見える。
懐かしいあの日々がここに存在していた。
「高校生活の最後に行った夏祭りも楽しかったね」
美奈の発したその言葉にわたしはなぜだかドキッとした。懐かしそうに美奈は遠い目をした。今、この校舎を眺める美奈は何を考えているのだろうか。
そういえば思い出の場所巡りになっているなとわたしは思った。
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