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帰れない
ポストカード
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「あら、多香子ちゃん、手紙を書いているんだね」
美奈は多香子の目の前にカモミールティーを置きながら言った。
「うん、自分宛にね。同窓会の良い思い出になるかなと思ってね。あ、カモミールティーありがとう」
「それっていいね。わたしも書きたいな」
美奈はティーポットからわたしと自分のティーカップにカモミールティーを注ぎながら言った。
「じゃあ、美奈ちゃんにも一枚あげるよ。このポストカード三枚入りだから」
「わ~い、嬉しいな。じゃあ、頂戴」
美奈は多香子から提灯柄のポストカードを受け取りご機嫌だ。美奈はオレンジ色の提灯キーホルダーが舞い戻りそして消えたのに気にならないんだ。
「亜沙美ちゃんはいらないよね?」
多香子が提灯柄のポストカードをぴらりとわたしに見せた。
「う、うん、ごめんね。遠慮しとく」
「そうだよね。一応聞いただけだから気にしないでね」
多香子はそう言ってカモミールティーに口をつけ「うん、美味しい」と微笑みを浮かべた。
一方美奈は提灯柄のポストカードを眺めにっこりと笑っているのだった。笑っていられるなんて信じられない。
多香子と美奈は楽しそうに自分宛の手紙を書いている。その姿を見ているとわたしも自分宛の手紙を書きたくなってくるけれど、提灯柄のポストカードを使って手紙なんて書けない。
わたしは、ティーカップを口に運びカモミールティーを飲む。口の中に広がる甘酸っぱくてりんごのような香りにまたほっとする。
「わたしね、みんなとこの同窓会で会えて嬉しいなと思っているよ」
美奈がペンを置き顔を上げわたしと多香子の顔を交互に見た。
「わたしもだよ」と多香子が艶やかな黒髪を触りながら言った。
「わたしも美奈ちゃんやみんなに会えたことは嬉しいよ」
わたしもそう言ったことは嘘じゃない。美奈やみんなに会えたことは本当に嬉しいのだ。ただ、オレンジ色の提灯キーホルダーや浴衣などが気になるだけなのだ。
オレンジ色の提灯キーホルダーがわたしを追いかけてこなければもっと楽しい同窓会になったはずなのに残念でならない。
今度このメンバーで集まれるのはいつになるのか分からないのだから。多香子と美奈が手紙を書いてる提灯柄のポストカードが視界に入りちょっとゾワゾワする。
でも、この時間はなんだかほっこりして大切な時間だと思った。そう大切で愛おしくてちょっと怖いそんな空間だった。
「ねえ、美奈ちゃん、この提灯のポストカードを見ていると高校時代の夏祭りを思い出さない?」
多香子が顔を上げて美奈に言った。
「うん、思い出すよ。亜沙美ちゃん達と夏祭り一緒に行った時だよね。そしたら多香子ちゃん達とばったり会ったよね」
美奈は遠い目をした。きっと、あの夏祭りを思い出しているのだろう。
「うん、確か美奈ちゃんは紫陽花柄の浴衣を着ていたよね」
多香子が言った『紫陽花柄』にわたしは、ドキッとする。ここで紫陽花柄が出てくるなんて……。
「うん、そうだったね。え~っと多香子ちゃんはダリア柄だったかな?」
「うふふ、そうだよ。美奈ちゃん懐かしいね。亜沙美ちゃんは椿柄の浴衣だったよね?」
と言って多香子がわたしに視線を向けた。
「えっ、あ、うん。わたしは椿柄だったよ。よく覚えているね」
「うん、あの夏祭りは心に強く残っているから」
多香子はそう言って艶やかな黒髪を触った。あの夏祭りの日、多香子はお団子ヘアですっきりしていたなと思った。
「まだ、十年も経ってないけど懐かしいね。そうだ、佐和ちゃんはインパクトのあるアザミ柄の浴衣だったよね」 と美奈が言った。
わたしは、ゾクッとした。どうしてアザミ柄が出てくるのよ。
「うん、佐和ちゃんはアザミ柄だったね。可愛い花だけどトゲが痛そうだなって思ったことを覚えているよ」
そう言って多香子は妖艶な笑みを浮かべた。
美奈は多香子の目の前にカモミールティーを置きながら言った。
「うん、自分宛にね。同窓会の良い思い出になるかなと思ってね。あ、カモミールティーありがとう」
「それっていいね。わたしも書きたいな」
美奈はティーポットからわたしと自分のティーカップにカモミールティーを注ぎながら言った。
「じゃあ、美奈ちゃんにも一枚あげるよ。このポストカード三枚入りだから」
「わ~い、嬉しいな。じゃあ、頂戴」
美奈は多香子から提灯柄のポストカードを受け取りご機嫌だ。美奈はオレンジ色の提灯キーホルダーが舞い戻りそして消えたのに気にならないんだ。
「亜沙美ちゃんはいらないよね?」
多香子が提灯柄のポストカードをぴらりとわたしに見せた。
「う、うん、ごめんね。遠慮しとく」
「そうだよね。一応聞いただけだから気にしないでね」
多香子はそう言ってカモミールティーに口をつけ「うん、美味しい」と微笑みを浮かべた。
一方美奈は提灯柄のポストカードを眺めにっこりと笑っているのだった。笑っていられるなんて信じられない。
多香子と美奈は楽しそうに自分宛の手紙を書いている。その姿を見ているとわたしも自分宛の手紙を書きたくなってくるけれど、提灯柄のポストカードを使って手紙なんて書けない。
わたしは、ティーカップを口に運びカモミールティーを飲む。口の中に広がる甘酸っぱくてりんごのような香りにまたほっとする。
「わたしね、みんなとこの同窓会で会えて嬉しいなと思っているよ」
美奈がペンを置き顔を上げわたしと多香子の顔を交互に見た。
「わたしもだよ」と多香子が艶やかな黒髪を触りながら言った。
「わたしも美奈ちゃんやみんなに会えたことは嬉しいよ」
わたしもそう言ったことは嘘じゃない。美奈やみんなに会えたことは本当に嬉しいのだ。ただ、オレンジ色の提灯キーホルダーや浴衣などが気になるだけなのだ。
オレンジ色の提灯キーホルダーがわたしを追いかけてこなければもっと楽しい同窓会になったはずなのに残念でならない。
今度このメンバーで集まれるのはいつになるのか分からないのだから。多香子と美奈が手紙を書いてる提灯柄のポストカードが視界に入りちょっとゾワゾワする。
でも、この時間はなんだかほっこりして大切な時間だと思った。そう大切で愛おしくてちょっと怖いそんな空間だった。
「ねえ、美奈ちゃん、この提灯のポストカードを見ていると高校時代の夏祭りを思い出さない?」
多香子が顔を上げて美奈に言った。
「うん、思い出すよ。亜沙美ちゃん達と夏祭り一緒に行った時だよね。そしたら多香子ちゃん達とばったり会ったよね」
美奈は遠い目をした。きっと、あの夏祭りを思い出しているのだろう。
「うん、確か美奈ちゃんは紫陽花柄の浴衣を着ていたよね」
多香子が言った『紫陽花柄』にわたしは、ドキッとする。ここで紫陽花柄が出てくるなんて……。
「うん、そうだったね。え~っと多香子ちゃんはダリア柄だったかな?」
「うふふ、そうだよ。美奈ちゃん懐かしいね。亜沙美ちゃんは椿柄の浴衣だったよね?」
と言って多香子がわたしに視線を向けた。
「えっ、あ、うん。わたしは椿柄だったよ。よく覚えているね」
「うん、あの夏祭りは心に強く残っているから」
多香子はそう言って艶やかな黒髪を触った。あの夏祭りの日、多香子はお団子ヘアですっきりしていたなと思った。
「まだ、十年も経ってないけど懐かしいね。そうだ、佐和ちゃんはインパクトのあるアザミ柄の浴衣だったよね」 と美奈が言った。
わたしは、ゾクッとした。どうしてアザミ柄が出てくるのよ。
「うん、佐和ちゃんはアザミ柄だったね。可愛い花だけどトゲが痛そうだなって思ったことを覚えているよ」
そう言って多香子は妖艶な笑みを浮かべた。
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