オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしの笑顔と恐怖

なかじまあゆこ

文字の大きさ
上 下
18 / 87
泊まりがけの同窓会とオレンジ色

ポストカード……

しおりを挟む

  陶芸体験が終わるとわたし達はお昼ご飯を食べた。ランチメニューも豊富で迷った末わたしは生姜焼きランチを選んだ。

「体験で作ったマグカップ届くのが楽しみだね~」なんて話をした。

 それからお土産コーナーを見て歩いた。陶器類、ガラス製品、ポストカード、お菓子にジャムなど色々あり見るだけでも楽しかった。

  わたしは、お土産にブルーベリージャムを買った。

「ねえ、亜沙美ちゃん見てみてこのポストカード可愛いね」

  隣を歩いていた真夜が言った。

「わぁ、その猫ちゃんのポストカード可愛いね」

  見ると真夜は猫があくびをしている可愛らしいポストカードを手にしていた。

「このポストカードで自分宛に絵葉書を送ろうかな~」

  真夜は楽しそうに頬を緩めている。

「わっ、それ、なんか良いね」

「亜沙美ちゃんも自分宛に絵葉書を送る?」

「うん、送ってみようかな~」

  わたしはわくわくしながらポストカードラックやオープン棚に並べられているポストカードを眺める。

  可愛らしい絵柄がたくさんあるなと思いながら、わたしはポストカードラックから何気なく取り出した。

  そのポストカードを見てわたしは「あ!」と思わず声を出してしまった。

  だって、そのポストカードの絵柄はオレンジ色の提灯だったのだから。


  闇夜にころんとした丸型のオレンジ色の提灯が明かりを灯し浮かんでいる。

  ポストカードに描かれているオレンジ色の提灯はそこにあるだけで圧倒的な存在感がある。ポストカードを持つわたしの手が恐怖に震える。

  オレンジ色の提灯が明かりを灯し浮かんでいる。浮かんでいる、浮かんでいる。

  まるでオレンジ色の提灯に追いかけられているように感じる。わたしのことをオレンジ色の提灯が追いかけてくる。

  亜沙美ちゃん、待ちなさい。逃げても無駄よ、待ちなさい、待ちなさい。

  逃がさないーーーーーー!

  逃げても逃げても亜沙美ちゃん、ずっと、追いかけ続けるからね。

  ポストカードの中のオレンジ色の提灯がまるで意思を持ったかのようにわたしを追いかけてくる。

 亜沙美ちゃん、逃がさないからと言って。

「亜沙美ちゃん、ねえ、亜沙美ちゃん」

  ぽんぽんと肩を叩かれた。わたしは、ビクッとして「わっ!  ぎゃっ!」と声をあげ恐る恐る振り返った。

  艶やかなロングヘアの女性がわたしをじっと見ていた。

「亜沙美ちゃん、びっくりした?」

「あ、なんだ……多香子か」

  わたしの後ろに立っていたのは多香子だった。


「幽霊を見たような顔で見ないでよ。それはそうと亜沙美ちゃん顔が真っ青だけど大丈夫?」

  多香子が眉間に皺を寄せて聞いてくる。

「……あ、うん、大丈夫だよ」

  わたしは、無理に笑顔を作ってみせた。オレンジ色の提灯が怖いなんて言えないよ。そんなことを言うと笑われてしまいそうだ。

「亜沙美ちゃんがポストカードを持ったまま固まっているように見えたからわたし心配になって……」

「ごめんね。ちょっとこの提灯柄が不気味に感じただけだよ」

  わたしは言ってポストカードを見せて笑った。

「え?  不気味に感じたの?  幻想的で美しいポストカードなのにね」

  ポストカードを見た多香子は不思議そうに首を傾げた。

「うん、わたしの気のせいだったみたいだよ。この提灯綺麗だよね」

「うん、とても綺麗だね」

  多香子は艶然と笑った。その表情が美しい人形のようにも見えた。

「そ、そうだね……」と返事をしながらオレンジ色の提灯が描かれたポストカードをラックに戻そうとしたわたしの手を多香子が掴んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

The Last Night

泉 沙羅
ホラー
モントリオールの夜に生きる孤独な少女と、美しい吸血鬼の物語。 15歳の少女・サマンサは、家庭にも学校にも居場所を持てず、ただひとり孤独を抱えて生きていた。 そんな彼女が出会ったのは、金髪碧眼の美少年・ネル。 彼はどこか時代錯誤な振る舞いをしながらも、サマンサに優しく接し、二人は次第に心を通わせていく。 交換日記を交わしながら、ネルはサマンサの苦しみを知り、サマンサはネルの秘密に気づいていく。 しかし、ネルには決して覆せない宿命があった。 吸血鬼は、恋をすると、その者の血でしか生きられなくなる――。 この恋は、救いか、それとも破滅か。 美しくも切ない、吸血鬼と少女のラブストーリー。 ※以前"Let Me In"として公開した作品を大幅リニューアルしたものです。 ※「吸血鬼は恋をするとその者の血液でしか生きられなくなる」という設定はX(旧Twitter)アカウント、「創作のネタ提供(雑学多め)さん@sousakubott」からお借りしました。 ※AI(chatgpt)アシストあり

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

逢魔ヶ刻の迷い子3

naomikoryo
ホラー
——それは、閉ざされた異世界からのSOS。 夏休みのある夜、中学3年生になった陽介・隼人・大輝・美咲・紗奈・由香の6人は、受験勉強のために訪れた図書館で再び“恐怖”に巻き込まれる。 「図書館に大事な物を忘れたから取りに行ってくる。」 陽介の何気ないメッセージから始まった異変。 深夜の図書館に響く正体不明の足音、消えていくメッセージ、そして—— 「ここから出られない」と助けを求める陽介の声。 彼は、次元の違う同じ場所にいる。 現実世界と並行して存在する“もう一つの図書館”。 六人は、陽介を救うためにその謎を解き明かしていくが、やがてこの場所が“異世界と繋がる境界”であることに気付く。 七不思議の夜を乗り越えた彼らが挑む、シリーズ第3作目。 恐怖と謎が交錯する、戦慄のホラー・ミステリー。 「境界が開かれた時、もう戻れない——。」

不労の家

千年砂漠
ホラー
高校を卒業したばかりの隆志は母を急な病で亡くした数日後、訳も分からず母に連れられて夜逃げして以来八年間全く会わなかった父も亡くし、父の実家の世久家を継ぐことになった。  世久家はかなりの資産家で、古くから続く名家だったが、当主には絶対守らなければならない奇妙なしきたりがあった。  それは「一生働かないこと」。  世久の家には富をもたらす神が住んでおり、その神との約束で代々の世久家の当主は働かずに暮らしていた。  初めは戸惑っていた隆志も裕福に暮らせる楽しさを覚え、昔一年だけこの土地に住んでいたときの同級生と遊び回っていたが、やがて恐ろしい出来事が隆志の周りで起こり始める。  経済的に豊かであっても、心まで満たされるとは限らない。  望んでもいないのに生まれたときから背負わされた宿命に、流されるか。抗うか。  彼の最後の選択を見て欲しい。

あの子が追いかけてくる

なかじまあゆこ
ホラー
雪降る洋館に閉じ込められた!! 幼い日にしたことがわたしを追いかけてくる。そんな夢を見る未央。 ある日、古本屋で買った本を捲っていると 『退屈しているあなたへ』『人生の息抜きを』一人一泊五千円で雪降る洋館に宿泊できますと書かれたチラシが挟まっていた。 そのチラシを見た未央と偶然再会した中学時代の同級生京香は雪降る洋館へ行くことにした。 大雪が降り帰れなくなる。雪降る洋館に閉じ込められるなんて思っていなかった未央は果たして……。 ホラー&ミステリになります。悪意、妬み、嫉妬などをホラーという形で書いてみました。最後まで読んで頂くとそうだったんだと思って頂けるかもしれません。 2018年エブリスタ優秀作品です。

田舎のお婆ちゃんから聞いた言い伝え

菊池まりな
ホラー
田舎のお婆ちゃんから古い言い伝えを聞いたことがあるだろうか?その中から厳選してお届けしたい。

招く家

雲井咲穂(くもいさほ)
ホラー
その「家」に招かれると、決して逃げられない――。 仕事を辞めたばかりで先の見えない日々を送っていた谷山慶太は、大学時代の先輩・木村雄介の誘いで、心霊調査団「あやかし」の撮影サポート兼記録係としてバイトをすることになった。 初仕事の現場は、取り壊しを控えた一軒家。 依頼者はこの家のかつての住人――。 ≪心霊調査団「あやかし」≫のファンだという依頼人は、ようやく決まった取り壊しの前に木村達に調査を依頼する。この家を、「本当に取り壊しても良いのかどうか」もう一度検討したいのだという――。 調査のため、慶太たちは家へ足を踏み入れるが、そこはただの空き家ではなかった。風呂場から聞こえる水音、扉の向こうから聞こえるかすかな吐息、窓を叩く手に、壁を爪で削る音。 次々と起きる「不可思議な現象」は、まるで彼らの訪れを待ち構えていたかのようだった。 軽い気持ちで引き受けた仕事のはずが、徐々に怪異が慶太達の精神を蝕み始める。 その「家」は、○△を招くという――。 ※保険の為、R-15とさせていただいております。 ※この物語は実話をベースに執筆したフィクションです。実際の場所、団体、個人名などは一切存在致しません。また、登場人物の名前、名称、性別なども変更しております。 ※信じるか、信じないかは、読者様に委ねます。 ーーーーーーーーーーーー 02/09 ホラー14位 ありがとうございました! 02/08 ホラー19位 HOT30位 ありがとうございました! 02/07 ホラー20位 HOT49位 ありがとうございました! 02/06 ホラー21位 HOT81位 ありがとうございました! 02/05 ホラー21位 HOT83位 ありがとうございました! 

処理中です...