オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしの笑顔と恐怖

なかじまあゆこ

文字の大きさ
15 / 87
同窓会参加者の近況報告

小説のタイトルと同窓会の幕開け

しおりを挟む

  わたしの小説のタイトルは『オレンジ色の夕日とわたしの青春』なのだ。

  表紙はオレンジ色の夕日とツインテールの女の子の後ろ姿だった。とても美しい夕日がちょっと切なくてツインテールの女の子の後ろ姿が可愛らしいお気に入りの表紙だったのに……。

  あのオレンジ色の提灯の夢を見るようになってから好きではなくなった。夕日とオレンジ色の提灯は全く別物なのにだ。

「ねえ、亜沙美ちゃん、どうしたの?」

「あ、真夜ちゃん……ううん、なんでもないよ」

  わたしは無理に笑ってみせた。

  それから、何気なく視線を美奈に向けるとツインテール姿の美奈がそこにいた。わたしの小説の表紙の女の子の後ろ姿と美奈のツインテールが重なって見えた。

  オレンジ色の夕日とツインテールの女の子……。美奈とツインテールの女の子の後ろ姿が……。

 オレンジ色の美しい夕日とツインテールの女の子の後ろ姿。そして、オレンジ色の提灯が頭の中に浮かんでくる。

  オレンジ色の提灯がなんだか怖い。

「亜沙美ちゃん顔色が悪いよ。大丈夫?」

  その声に顔を上げるといつの間にか美奈がわたしの目の前に立っていて心配そうにわたしの顔を覗き込んでいた。


  その美奈の顔はとても可愛らしくて懐かしくて高校時代にタイムスリップした感覚に陥った。

「亜沙美ちゃん、ちょっと大丈夫?」

  そう言った美奈は眉間に皺を寄せわたしの顔をじっと見る。

「あ、うん、大丈夫だよ……」

「亜沙美ちゃん本当に大丈夫?  もし具合が悪いんだったら部屋で休んだほうがいいよ」

「うん、大丈夫だよ。ごめんね、ぼーっとしてただけだよ。近況報告の続きをしてね」

  わたしは精一杯の笑顔を浮かべた。

「そう、だったらいいんだけど無理はしないでね」

  美奈はそう言って席に戻った。

  近況報告は再開され次は佐和の番だ。

久島ひさしま佐和です。みなさん、久しぶりです。高校時代はわたしにとって楽しい時代でした。なので今回同窓会に参加しました。今はアパレルの販売員をしています。よろしくお願いします」

  佐和はにっこりと微笑み席に座る。

  その微笑みは華やかであか抜けていてアパレルの販売員らしいなと思った。ふわりとしたワンピースもとても可愛らしくて佐和に似合っている。

  次は、真由香の番だ。


「みなさ~ん、こんばんは、久しぶりです。桃川ももかわ真由香です。同窓会で楽しいことがあったらいいなと思い参加しました。企画してくれた美奈ちゃんありがとう。

  今はコールセンターでオペレーターとして働いています。亜沙美ちゃんと同じ職場です。みんな同窓会を楽しみましょう。よろしくお願いしま~す」

  真由香は明るく元気よく挨拶をした。真由香らしいなと思い微笑ましい気持ちになった。

  先ほどまでの不安な気持ちや恐怖もほんの少し和らいだ。

  次は、多香子の番だ。

「こんばんは。久しぶりです。浜西はまにし多香子です。みなさんに久しぶりに会うことができて嬉しいです。今は都内で事務の仕事をしています。よろしくお願いします」

  多香子はぺこりとお辞儀をして着席した。多香子の艶やかな黒髪のロングストレートヘアが印象的だ。確か高校時代もこのヘアスタイルで大人しい女の子だったはずだ。



  夕食のお寿司も天ぷらも美味しかった。そして、みんなと久しぶりに話ができて楽しかった。

  それから各々の部屋に戻った。わたしは部屋のドアを開けて中に入り電気をつける。

  その時はオレンジ色の提灯キーホルダーのことなんてすっかり忘れていたのだけど。

  部屋の中に明かりが灯ると木製のテーブルの上にオレンジ色の提灯キーホルダーが置かれていることに気がついた。

「どうしてテーブルの上にあるの!?」

  だって、オレンジ色の提灯キーホルダーは床に投げ捨て放置した状態だったはずなのに。

  どうしてテーブルの上にあるの?  ねえ、どうして?  わたしは、テーブルの上にあるオレンジ色の提灯キーホルダーに恐れ慄く。

  ひとりでにオレンジ色の提灯キーホルダーが動いたのだろうか? 

   いや、そんなはずはないとわたしは冷静に考える。誰かがこの部屋に入ってきてオレンジ色の提灯キーホルダーをテーブルに置いた。

  それはそれでなんだか恐ろしく感じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

皆さんは呪われました

禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか? お勧めの呪いがありますよ。 効果は絶大です。 ぜひ、試してみてください…… その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。 最後に残るのは誰だ……

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...