オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしの笑顔と恐怖

なかじまあゆこ

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恐怖の同窓会の始まり

なんとなく

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  室内は木の温もりを感じ窓からは日差しが差し込みゆったり落ち着ける空間だった。

「わっ、めちゃくちゃ良い感じだね~」と真由香は喜びの声を上げる。

  だけど、わたしはなんとなく嫌な感じがした。それがどうしてなのか分からないけれど……。

  松木も「なかなか良いコテージだね」と呟いた。

「でしょう。わたしもここに入った途端いいなって思ったんだよ。亜沙美ちゃんもそう思うよね?」

  美奈はキッチンから顔を出して尋ねてくる。

「……あ、うんそうだね」

  わたしは嫌な感じがするとは答えることができず頷いた。

「みんなお茶を淹れるね~コーヒーと紅茶どっちにする?」

「わたしは、紅茶~」と真由香が答え、「わたしも紅茶をお願い~」とわたしも言った。松木は「俺はコーヒーね」と答えた。

「了解~」

  美奈はにっこりと笑いキッチンに引っ込んだ。なんだか高校時代に戻ったような気がした。

  でも、懐かしいけれど楽しくない。

  それから四人でお茶を飲んで過ごした。紅茶は甘くてそして苦く感じた。

「ねえ、美奈ちゃん。わたし達以外の同窓会参加者は誰かな?  あと何人来るの?」

  わたしはふと思い聞いた。

「あと四人だよ」

  美奈は紅茶のティーカップを両手で包み込むように持ち答えた。

「へぇ意外と少ないんだね」

「うん、思ったより集まらなかったよ……」

  美奈は残念そうに唇を尖らせた。


「きっとみんな忙しいんだよね……」

「うん、そうかもね」

  美奈は紅茶のティーカップから顔を上げ笑った。その顔は可愛らしいけれどどこか妖しげな雰囲気に包まれた花のようだ。

「まあ、ぽんこつ先生の亜沙美と真由香は暇なんだよ」

  松木が意地の悪い顔でニヤリと笑った。

「ちょっとぽんこつって酷いな」、「わたしのこと暇人みたいに言わないでよ」とわたしと真由香は松木を睨み抗議をする。

  松木はフフンと笑いコーヒーを飲んだ。いつも憎たらしくて頭にくる。

「松木だって同窓会に来ているよね」

「それは亜沙美が小説のアイデアでも見つけることが出来たらいいなと思ったんだよ。俺は付き添いだ」

  フフンと笑う松木があまりにも憎たらしくて松木が痛い目に遇う小説でも書いてやろうかなと思った。そしたらぽんこつを卒業できるかもね。

「亜沙美ちゃんは小説家になったんだよね。すごいな~」

  美奈が目をキラキラ輝かせ視線をわたしに向けた。

「あ、でも一冊だけだよ。そのあとはまったくだよ~」

「そうだよ。亜沙美はぽんこつだからね」

「松木うるさいよ」

  わたしが松木を睨み付けていると美奈が「二人はいつも仲良しだね」と言ってクスクスと笑った。

「どこがよ」、「どこがだよ」とわたしと松木はほぼ同時に言った。

「高校時代から良いコンビじゃない」

  美奈はふふっと笑い紅茶を飲んだ。



  それからしばらくの間わたし達四人は近況報告をし合う。

  美奈は都内で事務員として働いているとのことだった。一日中自分のデスクに座りパソコンと向き合い目も疲れるし肩も凝るよと言って溜め息をついた。

  美奈が事務員の仕事をしていることは少し意外だった。

  オシャレな美奈の雰囲気から何となくアパレル関係の仕事でもしているのかなと思っていた。

「まあ、でも好きなように仕事も出来るしいいんだけどね」

  そう言って美奈は微笑みを浮かべた。

  わたしも普段はコールセンターで働きお客様対応が大変で同じことの繰り返しでつまらないよと話す。

  真由香もまだまだ人生に悩み中だよと言って溜め息をつく。

  松木はぽんこつ対応が大変だなんて憎たらしいことを言うのだからわたしは松木をキッと睨んだ。

  それから他の四人が来るまでの間各自部屋で過ごすことになりわたしはボストンバッグを持ち立ち上がった。

  すると、なぜだかこのコテージに泊まっても大丈夫かなと嫌な胸騒ぎがした。
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