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祐介君が近くに

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  新大阪駅から京都駅まで行き京都駅からJR湖西線に乗り換え近江舞子駅へと向かった。

  亜子ちゃんは京都駅のお土産屋で買った八つ橋をぱくぱく食べている。

「亜子ちゃんってば八つ橋食べるの宿まで我慢できないの?」とわたしは言いながら亜子ちゃんが手にしている八つ橋に手を伸ばし食べた。

「あ、早乙女ちゃんってばあげるって言っていないのに勝手に食べないでよ」

「亜子ちゃんのケチ~あ、この八つ橋美味しいね」

「姉ちゃんも亜子さんも電車の中でうるさいですよ」

「いいじゃない旅行なんだもん。楽しまなきゃね。京都は行かなかったんだから味だけでも楽しまないとね」

  わたしはにんまりと笑いながら八つ橋を食べた。柔らかくて濃厚な抹茶のお味が最高だ。

「早乙女ちゃん、その八つ橋わたしが買ったんだけどね」

  亜子ちゃんにギロリと睨まれた。

「早乙女さん、亜子さん見てくださいよ~車窓から琵琶湖が見えますよ」

  久美佐ちゃんが言った。わたし達は車窓に目を向けた。すると、青空と琵琶湖がキラキラと輝いて見えた。

「うわぁ~めちゃくちゃ綺麗だね」

「とても良い景色で癒されるね」

 そんなことを話しているうちに目的地である近江舞子駅に到着した。

「やった~着いたよ」

  わたし達は電車から降りた。お父さん琵琶湖が見えるよとわたしは心の中で呟いた。

  それから祐介君、近江舞子駅に着いたよと呟きわたしはカフェノートを開いた。

  すると、カフェノートにいつものように祐介君の豪快で大きくて綺麗な文字が浮かび上がっていた。

『早乙女ちゃん近江舞子駅に着いたよ。祐介』

「えっ!?」

  わたしはびっくりして思わず辺りを見回した。なんだか近くに祐介君がいるそんな感覚に陥った。


「早乙女ちゃん、どうしたの? 何をしているの?  行くよ」

  亜子ちゃんに呼ばれてわたしは現実の世界に引き戻される。

「あ、うん、そうだね」

  わたしは慌てて亜子ちゃん達の後を追いかける。祐介君は過去の世界にいるのにわたしは馬鹿だなと思う。

  でも、過去と未来ではあるけれど同じ場所に立っているこの奇跡に感謝したい。そう思うのだった。


  近江舞子駅から五分ほど歩いたところにその宿はあった。

「ねえ、ここじゃない?」

  亜子ちゃんがそう言いながら足をぴたりと止めた。見ると、木製の立て看板に 『花風荘はなかぜそう』と書かれていた。庭には色とりどりの花が咲き乱れている。

「うん、ここみたいだね。じゃあ、行こか」

  わたしがそう言って歩き出そうとしたその時、突然白色の玄関の扉が開き「旅行研究部同好会のみなさんですか?」と言いながら女性が出てきた。

「はい、そうです。予約をしていました旅行研究部同好会の部長のわたしは星宮早乙女です」

 わたしは部長らしく女性に挨拶をした。

「お待ちしていました。では、中にどうぞ」

  女性は柔らかい笑顔を浮かべた。

  優しい雰囲気が漂っている女性は年齢は五十代くらいかなと思うけれどどこか可愛さが残っていた。

  この女性を見たことがあるようなそんな気がした。だけど誰だか思い出せないし琵琶湖に知り合いなんていないのだ。

  わたし達は玄関で靴を脱ぎスリッパに履き替えた。

「では、お部屋に案内しますね」

  そして、案内された部屋は窓から青空と湖を眺めることができる眺めの良い部屋だった。

「わっ、素敵な部屋だね」

「うん、めちゃくちゃ良い部屋だね」

「わたしも気に入りました」

   わたしと亜子ちゃんに久美佐ちゃんは部屋に荷物を置き窓から湖を眺めた。

「お部屋の鍵をどうぞ」と女性から鍵を渡された。

「俺達は隣の部屋だから」と言って奈央と青橋君は女性と一緒に部屋から出ていった。
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