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幸せな時間だった
しおりを挟む串カツをたくさん食べることができて幸せな時間だった。
大阪名物の紅しょうがの串カツはピリッとした辛みとサクサクな食感がちょっと不思議でクセになる。わたしのお気に入りだと頭にメモをしておこう。それとじゃがいもの串カツも。
「みんな、串カツ美味しかったね」
「うん、早乙女ちゃんわたしはれんこんの串カツが美味しかったな。シャキッとした食感が最高だったよ」
亜子ちゃんが満足そうな笑みを浮かべた。
奈央も久美佐ちゃんも青橋君もみんなが笑顔を浮かべている。この関西旅行に来て良かったなと改めて感じた。
わたし達は串カツ屋を出ると新大阪駅に戻り駅のコインロッカーに預けていたボストンバッグを取り出し本日の宿泊先であるビジネスホテルに向かった。
宿はごく普通のビジネスホテルだった。わたしと亜子ちゃんと久美佐ちゃんは三人部屋に泊まり奈央と青橋君は二人部屋だ。
わたし達三人は夜遅くまで女子トークを繰り広げた。関西旅行の初日はとても楽しかった。
そして、わたしは布団に入る前にカフェノートを開いた。
するといつものように豪快で大きくて綺麗な祐介君の文字がカフェノートに浮き上がっていた。
『早乙女ちゃん、旅行の初日はとても楽しかったよ。ビリケンさんに会えたし串カツも美味しかった。
それに早乙女ちゃんと過去と未来の空間を飛び越えて一緒に旅をしているように感じるから尚更かな? 明日は奈良に鹿を見に行きます。楽しみ~祐介』と書かれていた。
『祐介君、じゃがいもの串カツ美味しかったよ。それから大阪名物の紅しょうがの串カツもピリッ辛サクサクと美味しかったよ。
過去と未来で同じ場所を旅しているなんてなんだか不思議だよね。この不思議に感謝です。奈良県に鹿を見に行くんだね。早乙女』
と書いてわたしは微笑みを浮かべた。
「早乙女ちゃん、朝だよ。起きろ~」
朝は亜子ちゃんの大きな声で目を覚ました。
眠たい目をゴシゴシ擦りながらパジャマから服に着替えビジネスホテルのバイキングの朝食をたらふく食べた。
そして、朝食を終えるとわたし達旅行研究部同好会も奈良公園の鹿を見に行くことにした。
わたしは鹿に会えると思うとわくわくしたのと同時に今日も祐介君と同じルートで旅行ができると思うと嬉しかった。
『おはよう、祐介君。わたし達も奈良に鹿を見に行くよ。鹿に鹿せんべいをあげるんだ~早乙女』
『おはよう、早乙女ちゃん。今日も過去と未来で同じルートで旅行ができると思うと嬉しいよ。鹿の餌やりも楽しみだね。祐介』
わたしは、カフェノートで祐介君に朝の挨拶をして電車で奈良に向かった。
奈良公園に着くとたくさんの鹿がいた。売店のおばさんから鹿せんべいを買うと同時に鹿がぶわーっと近づいてきた。
「し、鹿さん、そんなに急がなくても鹿せんべいあげるから待ってよ」
鹿は待ちきれなさそうにじーっとわたしの持っている鹿せんべいを見てくるではないか。
奈央なんて「うわぁ~鹿さん俺のお尻を噛もうとするなよ~」と叫びながら鹿に追いかけられているのだから笑ってしまった。
そんな奈央をのことを笑っている亜子ちゃんも鹿に鼻で突っつかれ「もう鹿さんってはば待ってよ」と言いながら慌てて鹿せんべいに巻かれている紙をはずしている。
久美佐ちゃんも青橋君も大勢の鹿に囲まれ慌てるも楽しそうだった。
もちろんわたしも鹿に囲まれ楽しく鹿せんべいをあげた。
とても楽しめた一日だった。
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