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過去の君が歩いた大阪
しおりを挟むたこ焼きタッコ~ちゃんでたこ焼きをたらふく食べて満足したわたし達は店を出る。
そして、わたしは鞄からカフェノートを取り出した。開いたページに祐介君からの返事が来ていた。
『早乙女ちゃん、たこ焼き美味しかったよ。これこそ大阪のたこ焼きって感じだったよ。たこ焼きの外はふわふわで中身はとろ~りとしていてほっぺたが落っこちそうになりました。
俺達は今から、通天閣に行きます。ビリケンさんが楽しみだよ。祐介』と書かれていた。
「祐介君達は通天閣に行くんだって! わたし達はどうする?」
「わたしは行きたいよ~ビリケンさんに会いたいな」
亜子ちゃんが目をキラキラ輝かせながら言った。
「亜子ちゃんはさっき新大阪駅に着いた時にビリケンさん会いたいって言ってたもんね。他のみんなも通天閣でいいかな?」
「うん、俺もビリケンさんを見てみたいからいいよ」と奈央が言った。
久美佐ちゃんと青橋君も通天閣にビリケンさんを見に行くことに賛成してくれた。
「みんなありがとう~では、次の目的地は通天閣だよ~」
わたし達は駅に向かって歩き出した。
わたし達はJR新今宮駅で電車から降りて通天閣出口からビリケンさんの居る通天閣へと向かった。
「早乙女ちゃん、楽しみだね~ビリケンさんを撫でて御利益を得たいな~」
「うん、亜子ちゃんビリケンさんの足の裏を撫でると御利益があるらしいよね~」
なんて話をしながらひたすらまっすぐ歩いていると大阪のシンボルである通天閣が見えてきた。
「わ~い、通天閣だよ~」
わたしは、通天閣に向かって走り出した。
「あ、早乙女ちゃん待ってよ~」
「お~い、姉ちゃん走るなよ」
「ちょっと早乙女さん待ってくださいよ~」、「早乙女さん急がなくても通天閣は逃げたりしませんよ」と言って久美佐ちゃんと青橋君もわたしを追いかけてくる。
だって、通天閣が見えてくると祐介君もあの通天閣に向かっているのかなと思うと走らずにいられなかった。
わたしは通天閣を見上げた。このタワーにビリケンさんがいるんだねと思い頬を緩めていたのだけど、待ち時間五十分と書かれた看板が視界に入り目を見開いた。
「待ち時間五十分ってどういうことなの~」
わたしは思わず叫んでしまった。
「え? 五十分待ちなの!」
わたしに追いついた亜子ちゃんも大きな声を出した。
「うわ~マジで五十分待ちかよ」
「うん、そうみたいだね……仕方がない、並ぼうよ」
わたしはずらっと並んでいる列に向かって歩き出した。
「姉ちゃん並ぶの面倒臭くないか?」
奈央がぶつくさと文句を言う。
「奈央もビリケンさんの足の裏を触りたいんでしょ? だったら文句言わないで並ぶんだよ。そうだ、チケットを買わなきゃ」
わたし達はチケットを購入し長蛇の列に並んだ。
でも、ビリケンさんに会えると思うと苦にならないのだ。奈央は「ビリケンさんだったらいろんな店の前とかにも居たよね」と言ってぶつくさ文句を言っているけれど気にしないのだ。
それにカフェノートをそっと開くと祐介君も長蛇の列に並んでいるのだから。
わたしはカフェノートをこっそり開きふふふっと笑った。
『早乙女ちゃん、俺はビリケンさんがいる通天閣展望台に登るため長蛇の列に並んでいるところです。早乙女ちゃんはどの辺りを観光しているのかな? 祐介』と書かれている。
わたしは、ボールペンを握り返事を書いた。
『祐介君、わたしもビリケンさんがいる通天閣展望台に登るため長蛇の列に並んでいるところだよ。そうそうわたしも祐介君と同じルートで観光をしています。早くビリケンさんに会いたいな。早乙女』と書いた。
待ち時間が長くても祐介君とこうしてカフェノートを通してやり取りをしていると楽しくて時間なんてあっという間に経ちそうだ。
わたしはカフェノートをぎゅっと抱きしめ笑みを浮かべた。
すると、誰かがわたしの肩をトントンと叩いた。振り返ると奈央が眉間に皺を寄せて立っていた。
「あ、奈央!」
「あ、奈央じゃないよ。まったく何が早くビリケンさんに会いたいなだよ」
「ちょっと、奈央ってばわたしのカフェノートを勝手に読んだんだね!」
奈央と言い合いをしていると、「早乙女ちゃん、列が動き出したよ」と亜子ちゃんが呆れたような声で言った。
「あ、やっと動き出したね」
わたしはカフェノートを鞄に詰め込みエレベーターに向かって歩き出した。さあ、いよいよビリケンさんに会えるぞと思うとわくわくしてきた。
そして、わたし達旅行研究部同好会のメンバーはエレベーターに乗り込み五階の展望台へと向かった。
五階の展望台に到着したのでわたし達はエレベーターから降りた。すると、目の前に二千二十二年時点で日本で一番高いビルであるあべのハルカスが目に入った。
「わっ! あべのハルカスだよね」
「うん、あれはあべのハルカスだよ~」
わたしと亜子ちゃんは通天閣の展望台から見える景色を眺めわいわいと言い合った。奈央や久美佐ちゃんにそれから青橋君も「大阪らしい景色だね」と言い合っている。
「亜子ちゃん、大阪城も見えるね」
「うん、わたし達は大阪に来たんだって実感が湧くよね」
しばらくの間わたし達は展望台から見える景色を眺めた。そして、黄金に輝く幸運の神様ビリケンさんの前に行く。
「うふふ、ビリケンさんだよ~足の裏を撫でないと」
わたしはそう言いながらゆっくり手を伸ばしビリケンさんの足の裏に触れ撫でた。
そして、わたしは心の中でお父さんに会えますようにそれと祐介君とずっとこの先もカフェノートを通して会話ができますようにと祈った。
ビリケンさんのにまっと笑ったように見える愛嬌のあるその顔がうんうんと頷いているように見えた。
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