カフェノートで二十二年前の君と出会えた奇跡(早乙女のことを思い出して

なかじまあゆこ

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祐介Side5

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  俺は武也の腕をこっそりつねった。

「な、何するんだよ!  痛いな」

  武也は顔を歪め俺を見る。

「お前が余計なことを言うからだよ」と俺は武也の顔をじっと見て小声で言ったのだけど武也は、「はぁ?」と首を傾げている。

  そんな俺達を馬渡さんと星宮さんはクスクスと笑いながら見ている。笑われてしまったじゃないか。

  この後、俺は紫色のボストンバッグを買い武也は紺色のボストンバッグを買った。馬渡さん達もスーツケースを買ったようだ。

  そして、俺達と馬渡さん達は一緒に昼食を食べることになり駅ビルのファストフード店でハンバーガーとポテトを食べた。

  馬渡さんとお昼を食べる日が来るなんてと俺は人生の巡り合いに驚いた。だがしかし、早乙女ちゃんとカフェノートを通してやり取りをしている方がもっと不思議な巡り合いだけれど。

  馬渡さんもそして、星宮さんもハンバーガーにかぶりつきころころ笑う性格も可愛らしい女の子だなと思った。

  この日は想像以上に楽しい一日を過ごせたのだった。人生は本当に不思議である。


  家に帰るとお母さんが「祐介なんかいいことがあったの?」と聞いてきた。

  俺は、「別に何もないよ。格好いいボストンバッグが買えただけだよ」と答えたのだけど嬉しさが顔に出ているのかなと思い焦ってしまった。

  自室に戻り荷物を置き鞄からカフェノートを取り出した。

  早乙女ちゃんから手紙が来ていないかなと思いながらカフェノートを開いた。すると、早乙女ちゃんの細かくて可愛らしい文字で書かれた手紙が来ていた。

『今日は旅行に必要な物を買いに出かけました。紫色のボストンバッグが可愛らしくて買ったよ。このボストンバッグにお菓子や水着など詰め込むんだと思うと嬉しくなるよ。早乙女』と書かれていた。

  俺は「紫色のボストンバッグだって」と思わず叫んでしまった。

  だって、俺と偶然お揃いではないか。


  俺はボールペンを握りカフェノートに返事を書いた。

『早乙女ちゃん、こんばんは。俺も旅行用品を買いに出かけました。それで、早乙女ちゃんの文章を読んでびっくりしたよ。だって、俺も紫色のボストンバッグを買ったんだよ。偶然同じ色のボストンバッグを買うなんてね。祐介』

  俺は興奮しながらペンを走らせた。早乙女ちゃんと同じ日に旅行用品を買いに出かけ同じ色のボストンバッグを買ったなんてなんたる偶然なんだと思った。

  早乙女ちゃんから返事はすぐに来た。

『えっ!?  祐介君も紫色のボストンバッグを買ったの?  ちょっとびっくりしてしまいました。因みにわたしが買ったボストンバッグの紫色は濃いめの紫色だよ。祐介君は?』

  俺はペンを握り『俺が買ったボストンバッグも濃いめの紫色だよ。祐介』と書いた。

『そうなんだね。祐介君と同じ色のボストンバッグだなんてなんだか不思議な偶然だね。ちょっと嬉しいな。早乙女』と書かれていた。

『俺も嬉しいよ。旅行が楽しみだね。祐介』

『うん、めちゃくちゃ楽しみだよ。高校生活最後の旅行であり不思議なカフェノートを通して祐介君と過去と未来で繋がっているんだもんね。カフェノートにもたくさん旅行日記を書くね。早乙女』

  早乙女ちゃんの細くて可愛らしい浮かび上がってきた文字を俺はじっと眺めた。

  もう見慣れたこの文字を俺は愛おしく感じた。ずっと、この先もこのカフェノートでやり取りを続けたいなと思った。

「俺もカフェノートにたくさん旅行日記を書くよ。楽しみだね。祐介」と書いた。
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