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祐介Side4
しおりを挟む俺は馬渡さんをじっと見てしまった。小学生の頃何度か同じクラスになったことがある。
馬渡さんは小学生の頃から目が大きくて鼻筋が通った美人だった。
俺は馬渡さんが読書クラブに入ったので俺も入ったけれど読書に興味なんて全くなくて本を読むふりをして、ぼーっと読書をする馬渡さんを眺めていた。
そんな馬渡さんは中学受験をして私立の中高一貫の女子校へ行ってしまいそれっきり疎遠になった。
懐かしいなと思いながら思わず高校生になった馬渡さんを眺めてしまった。今も変わらずと言うか美しさにいっそう磨きがかかっていた。
「おい、祐介」
俺の肩を武也がポンと叩いた。
「わっ、なんだよ! びっくりするな」
「びっくりするなじゃないよ。祐介ってば馬渡さんに見惚れているんだからな」
「そう言う武也こそ馬渡さんに見惚れていたんじゃないの?」
「あはは、バレたか。だって、彼女めちゃくちゃ綺麗だからさ」
そう言って武也は舌を出して笑った。
「綺麗だよね。武也ってば馬渡さんの真似をして小学生の頃読書クラブに入ったもんな。それで、本を読むふりをして馬渡さんをチラチラ眺めていたよね」
「……それは祐介お前じゃないか。って仲間だよな」
なんて言い合いながら俺達は笑った。
その頃からコイツと俺は友達だった。
馬渡さんはスーツケースのコーナーを友達らしい同じセーラー服の制服に身を包んだ女子高生と話をしながら眺めていた。卒業旅行にでも行くのだろうか?
「おい、祐介、まだ馬渡さんを見ているのかい?」
「あ、えっ! ボストンバッグを買うんだったよね」
俺はそう言いながらボストンバッグが並べられている棚に向き直った。
「祐介ってまさか馬渡さんのことが気になるとか?」
「はぁ! どうして」
俺はちょっとびっくりして声を上げた。だって、馬渡さんのことなんて今日見かけるまで忘れていたのだから。
それに今は早乙女ちゃんが……って早乙女ちゃんは未来の女の子だった関係ないやと俺はブンブン手を振った。
「なあ、祐介、手をブンブン振り回して何しているんだ?」
武也が呆れた声で聞いてきた。
「あ、いや別になんでもないよ……」
俺は慌てて答え目の前に並べられている紫色のボストンバッグを手に取り「このボストンバッグ格好いいよな」と言って笑ってみせた。
その時。
「ねえ、祐介君と武也君じゃない?」と懐かしい声が聞こえてきた。その声に振り返ると馬渡さんがニコニコと笑顔を浮かべこちらに向かってきたではないか。
「あ、馬渡さんこんにちは」と俺と武也は声を合わせて言った。
まさか馬渡さんに話しかけられるとは思ってもいなかったので、俺の胸はドキドキしてきた。それに俺達のことを覚えていてくれていたなんてちょっと嬉しかった。
隣に立っている武也に視線を向けると嬉しそうに鼻の下を伸ばしているではないか。
「久しぶりだね。二人とも旅行に行くの?」
馬渡さんはニコニコと笑いながら聞いてきた。
「あ、うん、そうだよ」
俺は答えながら誰と旅行に行くのか聞かれたら嫌だなと思った。
「わたしは、友達の千加子ちゃんと卒業旅行に行くのよ。あ、千加子ちゃんはこの子、星宮千加子ちゃんよ」
そう言って馬渡さんは隣にいるツインテールの女の子を俺達に紹介した。その女の子も目が大きくて鼻筋の通った美少女だった。
俺と武也は「どうもこんにちは」と言って星宮さんに挨拶をした。
「ねえ、祐介君と武也君も二人で卒業旅行に行くの?」
俺は家族旅行だと言いたくないので武也と卒業旅行に行くと言って誤魔化そうとした。
それなのに武也の奴はバカ正直に、「違うよ俺と祐介は家族旅行だよ」と答えた。
「……あ、そうなのね」
馬渡さんは笑顔ではあるけれど心の中でなんと思っているのかなと俺は気になった。
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