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会えるかな

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「そっか、会えるといいね。早乙女ちゃんは祐介君のことがとっても気になっているもんね」

  亜子ちゃんは口元に手を当てて笑った。

「だって、過去の世界からお返事が来るんだよ。気になるよ」

「ふ~ん、過去からお返事が来るからか~」

  亜子ちゃんはくっくっと笑いを堪え肩をぷるぷる震わせている。

「亜子ちゃんってば変な笑い方だね」

「だって、早乙女ちゃんは祐介君とのノートのやり取りを物凄く楽しんでいるみたいなんだもん」

  亜子ちゃんはまだくっくっと笑っているではないか。

「まあ、楽しんでいるかもしれないけど」

「祐介君がおじさんになっていてもいいじゃない。わたし、早乙女ちゃんとその祐介君いつか会えるんじゃないかなと思うよ」

  亜子ちゃんは笑っていたかと思うと急に真面目な顔になって言った。

「そうなのかな?  会えるかな」

  亜子ちゃんの言う通りおじさんになっている祐介君でもいいので会えるといいなと思った。

「うん、きっといつか会えるはずだよ」

「うん、そうだね。楽しみにしているよ」


  亜子ちゃんとカフェノートの話をしていると、その時ドアがバタンと開き奈央と青橋君とそれから久美佐ちゃんが入ってきた。

「あ、姉ちゃんと亜子さん来ていたんだ。早いね」

「こんにちは、早乙女さんに亜子さん」と青橋君が挨拶をした。

「早乙女さん、亜子さん、こんにちは~そうだ、わたしもドーナツ屋さんでアルバイトをすることになりましたよ」

  久美佐ちゃんそう言って微笑みを浮かべた。

「わっ、久美佐ちゃんもドーナツ屋でアルバイトをするんだね。チラシ配りそれとも販売員かな?」

「はぁ?  チラシ配りって何ですか?  販売員ですよ」

  久美佐ちゃんは不思議そうに首を傾げわたしの顔を見た。

「だって、奈央は、チラシ配りだからね」

  わたしは、奈央の顔をちらりと見て言ってやる。

「ね、姉ちゃん!  それは姉ちゃんの代わりにだろう」

  奈央は苦虫を噛み潰したような顔でわたしを見ている。

  あらあら、どうしたのでしょうか? 奈央君。

「奈央ってば猿みたいに真っ赤な顔をして面白いよ。チラシ配りのプロなんだから頑張ってね」

  わたしは、ふふんと笑い「華麗なるチラシ配りの舞いを見せてよね」と言って口笛を吹いた。

「姉ちゃんって小学生のガキみたいだね」

  奈央は真っ赤な顔で唇を尖らせている。どっちが小学生みたいなんだろうねと思う。

「奈央ってば花の女子高生に失礼だよ」

「誰が花の女子高生なんだよ。ふざけるなよ。早乙女!」

「ふざけてないもんね!  あ、お姉ちゃんと呼びなさいよ。小猿!」

  なんて奈央と言い合いをしていると、

「奈央君と早乙女さんは仲良し姉弟なんですね」と言って久美佐ちゃんが笑う。

「はぁ?  どこが仲良し?」、「はい?  どこが仲良しなんですか?」とわたしと奈央はほぼ同時に言った。

「仲良しすぎますね」と久美佐ちゃんは笑った。

「早乙女ちゃんと奈央君ってそっくりだよね。二人とも小猿みたいだよね」

「ちょっと亜子ちゃん。奈央とわたし似てないよ。それに小猿って何よ」

 わたしは頬をぷくりと膨らませる。

「ちょっと、亜子さん。姉ちゃんと俺は似てないですよ。小猿って姉ちゃんと同じこと言わないでくださいよ」

 奈央も頬を膨らませる。

  そんなわたし達のやり取りを青橋君はクスクスと笑いながら見ていた。



  奈央は腹の立つ弟であるし亜子ちゃんは失礼な友達だ。

  だけど、旅行研究部同好会の仲間とこうしてくだらないことで笑い合っている今この瞬間はキラキラと輝く宝物みたいな貴重な時間だなと思う。

  高校生でいられるのもあと少しなのだから。

「さてと、アルバイトもして旅行研究部同好会らしい活動もしなきゃね」

  わたしは頑張るぞと胸の前で拳を握った。

「そうだよね。沖縄に行きたいもんね」

「亜子さん、沖縄には行けませんよ。もっと近場ですよ」

「えっ!  そんな~このわたしが奈央君なんかとドーナツ屋さんのチラシ配りをしているというのにあんまりだよ」

「亜子さん、奈央君なんかとはなんですか?」

  わたしは亜子ちゃんと奈央が言い合っているのを遮り、「さあ、みんな旅行研究部同好会の活動を始めます」 と言って拳を強く握った。
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