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色々あった
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「ごちそうさま~ドーナツ美味しかったね」
ココナッツチョコレートドーナツもオールドファッションドーナツもそれからふわふわのシュガードーナツも美味しくてわたしのお腹は満足した。
「……俺のドーナツが」
奈央はお皿を眺め肩を落とした。
「奈央ってば美味しいドーナツを食べたのに冴えない顔だね」
わたしは紙ナプキンで口の周りを拭きながら言った。
「姉ちゃんのせいだろう。俺の大切なドーナツを三個も食べるんだならね」
「美味しく食べられたんだからいいじゃない。広い心を持とうよ。奈央もドーナツ三個食べたでしょ」
「……何が広い心を持とうよなんだかね。はいはい、早乙女様の言う通りですよ」
奈央は溜め息をつき投げやりに言った。
「奈央君、分かってくれたのならいいよ。姉弟仲良くしようよ」
わたしは微笑みを浮かべた。
「……姉ちゃんは姉らしくないけど俺のたった一人の血を分けた姉だから仕方ないね。仲良くしてやるよ」
「う~ん、なんかめちゃくちゃ貶されているような気がするんだけどまあいっか。奈央はわたしのたった一人の弟だから大目に見てあげるよ」
お父さんの話しは途切れてしまったけれど、またいつか話そうと思いながらわたしは自室に戻った。
今日はいろいろなことがあった。
祐介君からカフェノートにお返事が返ってきていた。それから亜子ちゃんにカフェノートの話をした。奈央にお父さんのことをちらっと聞いた。
わたしは机に座り開いたカフェノートをぼんやりと眺めた。
『きっと、俺は二十二年後もこのノートのことを忘れたりなんてしないと思う』
そう書かれた祐介君の文字をじっと眺めた。祐介君は今でも本当に忘れていないの? わたしのことを覚えているのかな。
このカフェノートで出会った早乙女という女の子のことを……。
わたしは、ページをめくり、『俺もチョコレートケーキを食べています。祐介』と書かれている祐介君の文字の下にお返事を書こうとペンを強く握った。
それから二十二年後もこのカフェノートを忘れていないかについても。
過去の祐介君と今の祐介君に向かってわたしはペンを走らせよう。
今の祐介君が高校生ではないなんて不思議な気持ちになります。だって、わたしの中では祐介君は高校生なのだから。
でも、わたしがカフェノートを通して話している祐介君はわたしと同じ高校三年生であることは間違いではないよね。
だって、早乙女ちゃんとこのカフェノートを通じて話をしている時間は楽しくて貴重な時間なのだから。
祐介君は『おっさんになって恥ずかしくて声をかけられないかも』と書いてくれているけれど、もしもわたしに気がついたら声をかけてね。
びっくりするかもしれないけれど、笑ったりしないからね。あ、そうだ、本人だと分かる何か言葉でも決めるといいかな?
早乙女
と、わたしはカフェノートに向かいペンを走らせた。
ココナッツチョコレートドーナツもオールドファッションドーナツもそれからふわふわのシュガードーナツも美味しくてわたしのお腹は満足した。
「……俺のドーナツが」
奈央はお皿を眺め肩を落とした。
「奈央ってば美味しいドーナツを食べたのに冴えない顔だね」
わたしは紙ナプキンで口の周りを拭きながら言った。
「姉ちゃんのせいだろう。俺の大切なドーナツを三個も食べるんだならね」
「美味しく食べられたんだからいいじゃない。広い心を持とうよ。奈央もドーナツ三個食べたでしょ」
「……何が広い心を持とうよなんだかね。はいはい、早乙女様の言う通りですよ」
奈央は溜め息をつき投げやりに言った。
「奈央君、分かってくれたのならいいよ。姉弟仲良くしようよ」
わたしは微笑みを浮かべた。
「……姉ちゃんは姉らしくないけど俺のたった一人の血を分けた姉だから仕方ないね。仲良くしてやるよ」
「う~ん、なんかめちゃくちゃ貶されているような気がするんだけどまあいっか。奈央はわたしのたった一人の弟だから大目に見てあげるよ」
お父さんの話しは途切れてしまったけれど、またいつか話そうと思いながらわたしは自室に戻った。
今日はいろいろなことがあった。
祐介君からカフェノートにお返事が返ってきていた。それから亜子ちゃんにカフェノートの話をした。奈央にお父さんのことをちらっと聞いた。
わたしは机に座り開いたカフェノートをぼんやりと眺めた。
『きっと、俺は二十二年後もこのノートのことを忘れたりなんてしないと思う』
そう書かれた祐介君の文字をじっと眺めた。祐介君は今でも本当に忘れていないの? わたしのことを覚えているのかな。
このカフェノートで出会った早乙女という女の子のことを……。
わたしは、ページをめくり、『俺もチョコレートケーキを食べています。祐介』と書かれている祐介君の文字の下にお返事を書こうとペンを強く握った。
それから二十二年後もこのカフェノートを忘れていないかについても。
過去の祐介君と今の祐介君に向かってわたしはペンを走らせよう。
今の祐介君が高校生ではないなんて不思議な気持ちになります。だって、わたしの中では祐介君は高校生なのだから。
でも、わたしがカフェノートを通して話している祐介君はわたしと同じ高校三年生であることは間違いではないよね。
だって、早乙女ちゃんとこのカフェノートを通じて話をしている時間は楽しくて貴重な時間なのだから。
祐介君は『おっさんになって恥ずかしくて声をかけられないかも』と書いてくれているけれど、もしもわたしに気がついたら声をかけてね。
びっくりするかもしれないけれど、笑ったりしないからね。あ、そうだ、本人だと分かる何か言葉でも決めるといいかな?
早乙女
と、わたしはカフェノートに向かいペンを走らせた。
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