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いつもの毎日と不思議なカフェノート

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  翌日、目を覚ますと枕元にカフェノートが置いてあった。

  昨日ベッドでごろごろしながらカフェノートを眺めているうちに寝てしまったことを思い出した。わたしは、慌てて体を起こしカフェノートがぐちゃぐちゃになってないか確認する。

  どうやら無事のようだったのでホッとする。そして、ノートを学校鞄に入れた。

  下に行くとおばあちゃんが台所で元気に動いていた。

「おはよう、おばあちゃん。お豆煮ているの?」

「早乙女ちゃん、おはよう。そうよ、金時豆よ。うふふ、おばあちゃんの金時豆はふっくら柔らかくて美味しいわよ」

  おばあちゃんは口元に手を当てて柔らかい笑みを浮かべた。

「おばあちゃんって金時豆煮るの好きだね」

「ふふっ、そうよ、自分で言うのもあれだけどわたしの金時豆は美味しいからね」

「あはは、おばあちゃんってば……あ、そうだ、お母さんと奈央は?」

「お母さんは寝ているわよ。奈央君はとっくに学校に行ったわよ」

「奈央の奴はまた先に行ったんだね」

「早乙女ちゃんがいつまでも寝ているからよ。さあ、急いで朝ごはんを食べなさい」

「は~い!」

  今日もおばあちゃんといつもの会話をして急いでトーストを食べ「いってきま~す」と家を出て学校に向かうのだった。




  休み時間、学校鞄からカフェノートを取り出しぱらぱらとめくった。

  すると、ノートに祐介君からの返事が書かれていた。わたしは返事がきていることが嬉しくてわくわくしながら読んだ。

『早乙女ちゃんって意外とドジっ子なんだね(あ、失礼)カフェノートを家に持って帰ってしまったんだね。

  なんてね、実は俺もカフェノート家に持って帰ってしまいました~(笑)俺達ドジっ子仲間ですね(あ、またまた失礼)でも、早乙女ちゃんが自分で書いているんだからね。それと、ドーナツ屋のアルバイトお疲れ様でした』

  わたしは、思わずクスクスと笑ってしまった。

  だって、祐介君もカフェノートを家に持って帰っているのだから。それに、ドジっ子仲間だなんて嬉しいようなおかしいような気持ちになった。


それからわたしは、カフェノートの続きを読んだ。

『二十二年後もあのカフェのことを忘れないでねと書いてくれていたね。きっと、俺は二十二年後もこのノートのことを忘れたりなんてしないと思う。

  だって、早乙女ちゃんとこのカフェノートを通じて話をしている時間は楽しくて貴重な時間なのだから。

  今、あのカフェで俺と早乙女ちゃんが再会していないのは俺が遠くに住んでいたりもしかしたらおっさんになっていて恥ずかしくて声をかけられないとかだったりしてね。

  でも、きっと、この不思議な出会いを忘れたりしないと思うよ。祐介』と書かれていた。

  わたしは、この文章を読み今の祐介君はどうしているのかな。もう高校生ではないなんてちょっと信じられないけれど……。そうなんだよねと思った。



  カフェノートに目を落とし祐介君のいろんな姿を想像するとなんだか可笑しくなる。

  でも、と気がついた。わたしは、高校生の祐介君の姿も知らない。このカフェノートに書かれている文章から想像しているのにすぎないのだった。

  わたしは、本当の祐介君のことは何一つ知らない。そう、何も……。

  でも、だけど、この教室の中にいる話したこともないクラスメイトよりは、遠くて近い存在のような気もするのだった。

「ねえ、早乙女ちゃん」

「えっ?  わっ!」

  顔を上げると、わたしの前の席に座っている菜々花《ななか》ちゃんが振り返りわたしの顔をじっと見ていた。

「早乙女ちゃんってばさっきから笑ったり眉間に皺を寄せたり、また笑ったりして顔がころころ七変化して笑えるんだけど」

 菜々花ちゃんはそう言ってニヤリと笑った。

「あはは、そっかな?」

  わたしは、笑いながらカフェノートをパッと閉じた。

「ねえ、早乙女ちゃん、何を読んでいるの?」

  菜々花ちゃんがわたしの閉じたカフェノートをじっと見ているではないか。

「あ、えっと、これは今日あった面白いことなど書いてる日記だよ……」

  わたしは、笑って誤魔化した。

  菜々花ちゃんはじっとノートを見ているけれど、「ふ~ん、そうなんだ」と言った。
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