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高校生活を楽しもう
しおりを挟む家に辿り着きテーブルにケーキの箱を置く。すると、奈央が箱を開けヨダレを垂らしそうな顔で「おっ、ケーキじゃん」と言った。そんな奈央はまるで子犬のようで笑える。
「お母さん~ケーキを買ってきたよ。夕飯は何かな?」
わたしは、キッチンで料理をしているお母さんの背中に声をかける。
「あ、ありがとうケーキ買ってきてくれたのね。今日の夕飯は中華丼よ」
「おっ、やったね、中華丼ね」
「早乙女ちゃん、手を洗ってうがいをするのよ」
お母さんはこちらに振り返り言った。
「は~い、分かったよ」
わたしは素直に返事をし洗面所へ向かう。カフェノートで、祐介君という見知らぬ人とやり取りをした不思議な日もわたしの家はいつもと変わらない日常が広がっていた。
中華丼とケーキを食べ終え満足したわたしは自室に戻った。
カフェノートで祐介君としたやり取りを思い出す。
西暦二千年の祐介君は、今のわたしと同じ高校三年生、どんな学校生活を送っていたのかな? 西暦二千年といえばわたしはこの世に影も形もなかった。
それを考えると不思議な気持ちになる。この世に生まれてくる前の自分のことを思うとなんだかちょっと怖い。それと同時にいつかこの世からわたしがいなくなることを思うとなんともいえない気持ちになる。
人生って不思議だな。そして、生きていることは奇跡だ。
だから、今この瞬間を大切にしたい。カフェノートで過去の時代の祐介君と繋がったことでより強くそう思った。
わたしは高校三年生、進路が決まらない。勉強も好きではないので大学に行くのもなと思うのだけど、就職するにもやりたいことがはっきりしない。
祐介君も将来のことで悩んでいると言っていた。悩んでいるのはわたしだけじゃない。そう思うと心強い。
そんなことを考えているとふと思った。
現在の祐介君はどんな人生を送っているのだろうか。西暦二千二十二年の祐介君は幸せですか? やりたいことは見つかりましたか? 好きなことをして生きていますか。
この時代の祐介君に聞いてみたい。だけど、それもまた夢が壊れそうでなんだか怖いなと思う。
今はあのカフェノートでこれからもいろいろ話ができるといいな。
不思議なノートとの出会いがわたしの今後の人生に影響するのか分からないけれど、ワクワクすることを一つ見つけることができた。
そう思うと嬉しくて頬が緩んだ。
明日もお経を唱えるような退屈な授業がわたしを待っているけれど、それも楽しもうではないか。人生で一度きりの高校生活を悔いのないものにしたい。
今、できることを一つ一つやってみよう。
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