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また今度
しおりを挟むせっかく祐介君とノートのやり取りをしていたのになと思いながらスマホの画面を見ると『お母さん』と表示されていた。
「もしもし、お母さん」とわたしは電話に出る。
『早乙女ちゃん、何をしているのよ。今日、商店街のまりもちゃんでケーキの半額セールをしているのよ』
電話の向こうからお母さんの甲高い声が聞こえてきた。
「あ、そうなんだ」
『あ、そうなんだじゃないわよ。半額なのよ』
「ふ~ん、良かったね」
ノートが気になっているのでわたしの声は素っ気なくなる。
『早乙女ちゃんの大好きなケーキなのにどうしたのよ。わっ、ケーキ半額なんだ~って言わないのね。そうそう、まりもちゃんで半額のケーキを買ってきてよ』
「え~面倒くさいよ~」
『面倒くさいって! 早乙女ちゃん熱でもあるの? 後でお金を渡すからケーキ二個ずつ買ってきてね。売り切れちゃうから急いでね』
お母さんは『じゃあお願いね』と言って一方的に電話を切った。
わたしは溜め息をつきスマホを鞄に仕舞い視線をノートに向けた。
すると、ノートには『早乙女ちゃんはバイトをするんだね。頑張ってね。祐介』と書かれていた。
わたしは、急いでノートに、
『はい、ありがとうございます。良いバイトが見つかるといいな。あ、お母さんに半額ケーキを買うように頼まれたのでまた今度! 早乙女』と書きカフェノートを閉じた。
わたしは、祐介君ともっとたくさん話したかったなと思いながらカフェを出た。
それからお母さんに言われたとおりまりもちゃんで、ケーキを二個ずつ買った。
うふふ、中でもいちごをたっぷり使ったいちごのショートケーキはとても美味しそうでヨダレが出そうになった。
わたしは、ノートのことも気になるけれどケーキに胸を躍らせ家路に着いた。空を見上げると夜空に綺麗な満月が浮かんでいた。
祐介君もどこかでこの満月を見ているのだろうか? よく考えると西暦二千二十二年の祐介君はおじさんになっているんだよね。そんなことを考えると不思議な気持ちになった。
どうしてわたしは、カフェノートで西暦二千年の祐介君と出会ったのだろうか?
わたしは月夜をゆっくりと歩いた。
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