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早乙女の学校
しおりを挟む授業はいつもつまらなくてどうして先生は毎日お経を唱えるような話し方をするのだろうかなと思う。
これでは眠たくなり夢の世界へと旅立ってしまいそうになるのも仕方がない。もうわたしは夢の世界の入り口こんにちは状態なのだ。
「早乙女さん?」
誰かがわたしの名前を呼んでいる。
「おい、早乙女さん。星宮早乙女さん!」
お経を唱えるような授業を聞かされ苦痛だったので夢の世界へと片足を踏み入れたばかりだというのに、今度は誰かがわたしの名前を呼んでいる。けれど、眠たくて眠たくて対応出来かねてしまいます。むにゃむにゃでございます。
「早乙女さん。おい、奈央君どうにかしてくれないか?」
うん? 奈央が一体どうしたというのだろうか。わたしは、眠い目を擦りながら目を開けた。
すると……。
クラスメイトの視線がわたしに一斉に集まった。だけど、なんだか違和感を感じる。何かが違う。だって、いつもより教室の雰囲気が明るく感じるのだ。
その違和感がなんなのか気がついた。クラスメイトの顔が若いのだ。
わたしのクラスメイトはもっと、おっさんぽい子や大人っぽい女の子がたくさんいるのにこのクラスのみんなの顔にはあどけなさが残っていた。
その時、クラスメイトの何人かがどっと笑った。と言うかクラスメイトではない。
「奈央君のお姉さんだ~」
「さ、早乙女先輩だ~」
そうなのだ。ここは奈央の一年生の教室ではないか。クラスを間違えた。
そして、顔を上げると先生が、「早乙女さんの教室は三階です」と言った。
「えへへ、間違えました」
わたしは、頭をぽりぽり掻いてみせた。
「早乙女さんは昨年この教室でしたね。では、三年生の教室にお帰りください。奈央君、お姉さんを見送ってあげて」
この先生は昨年のわたしのクラスの担任の先生だ。
すると、クラスの何人かがまた、どっと笑った。そんなに笑わなくてもいいのになと思いながら視線を窓際の一番前の席に座っている奈央に向けると頭を抱えていた。
「姉ちゃん、勘弁してくれよ」
教室を出ると奈央は顔を真っ赤にして唇を尖らせている。
「うん? どうした奈央君」
「どうしたじゃないよ。俺はめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど」
「えっ? どうして奈央が恥ずかしいのよ」
わたしが首を傾げると奈央は、
「だって、クラスのみんなが笑っていたじゃないか。これで当分お前の姉ちゃんがって言われるんだぜ!」
奈央は唇をギュッと噛みわたしを睨んだ。その顔は小学生の頃とあまり変わらず子犬みたいで可愛らしかった。
「あはは、それはごめんね。これも青春だよ」
わたしは、うっしっしと笑い奈央の肩をぽんぽんと叩いた。
「ふざけるな~早乙女! 何が青春なんだよ」
「早乙女って呼ぶな! お姉ちゃんと言いなさい。それに奈央君、青春は恥ずかしいものだよ」
「早乙女は早乙女だ~。はぁ? 青春は恥ずかしいって早乙女の存在そのものが恥ずかしいんだよ」
「今、なんて言ったのかな?」
わたしは奈央をキッと睨んだ。
「さ、早乙女の存在が恥ずかしいって言ったんだよ」
「ふざけるな~」
わたしの叫び声が授業中の静かな廊下に響き渡った。
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