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早乙女のお家
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「ただいま~」
玄関で靴を脱ぎ台所に行くとお母さんが野菜をとんとんと切り夕飯の準備をしていた。
「早乙女ちゃん、おかえりなさい。手を洗ってうがいをするのよ」
「は~い!」
わたしは、返事をしながらテーブルの上に置かれているチョコレートをこっそり口に放り込んだ。うん、美味しい。
「早乙女ちゃん、ダメでしょ。手を洗ってから食べなさい! それにもうすぐ夕飯よ」
お母さんはそう言ってこちらに振り返った。いつも思うんだけど、お母さんの背中には目がついているのかなと疑いたくなるのだ。
「は~い、分かったよ」
わたしが渋々洗面所に行こうとしたその時、
「ただいま~」と元気な声が聞こえてきた。
この声は弟の奈央だ。
「奈央、おかえりなさい」
お母さんは振り返らずに言った。
「めちゃくちゃお腹が空いたよ」
奈央はテーブルの上に置かれているチョコレートに視線を向け目をキラキラと輝かせたのとほぼ同時にチョコレートに手を伸ばし口に放り込んだ。
「奈央、あんたもつまみ食いをして、まったくよく似た姉弟なんだから! 奈央も手を洗ってきなさいよ」
お母さんは振り向きわたしと奈央の顔をじっと見た。
わたしと奈央は顔を見合わせ「似てないよ」、「似てないぞ」と言った声が揃ってしまった。
手を洗って居間でテレビを観ていると奈央が入ってきた。
わたしの隣に腰を下ろし「姉ちゃんお腹が空いたね」と言った。
「うん、わたしもお腹が空いたよ」とテレビ画面を眺めながら答える。
「なぁ、姉ちゃん。俺の友達がお前の姉ちゃん可愛いじゃんって言ってたんだよ」
「な、なんですって! わたしってやっぱり可愛いかな~」
わたしは頬に手を当ててニコニコと微笑みを浮かべ奈央の顔を見た。
「いや~俺の友達は近眼なんだよ」
奈央はふぅーと溜め息をついた。
「奈央、あんたわたしに喧嘩を売っているのかな?」
「はぁ、喧嘩なんて売ってねえよ」
「ふ~ん、じゃあ、わたしのこと可愛いって認めなさいよ」
「早乙女、自分で可愛いって言うか?」
「ちょっと奈央、早乙女って呼ぶな。お姉ちゃんって言いなさい」
「早乙女は早乙女なんだからいいじゃん」
「よくありません」
わたしは奈央のほっぺたに手を伸ばしてぎゅっとつねった。
「い、痛いよ~ほっぺたがちぎれそうだよ」
奈央は顔を歪めて叫んだ。
ふん、早乙女と呼ぶからそうなるのよ。
「早乙女ちゃん、何をしているのよ。奈央のほっぺたがちぎれるじゃない」
お母さんが居間のテーブルにお皿を並べながら言った。
「だって、奈央が悪い子なんだもん」
「姉ちゃん痛いってば」
「はいはい、喧嘩はしないの。二人ともいつまでも子供なんだから。早乙女ちゃん、夕飯運ぶの手伝って」
「は~い」
わたしは、奈央のほっぺたから手を離し台所ヘ向かった。テーブルの上に置かれているサラダをお盆に載せて居間に戻り並べる。
今日の夕飯はわたしの大好物のカレーだった。
「わっ、美味しそうだね」
「美味しそうだぜ」
「うふふ、わたしの得意料理よ。さあ、食べるわよ」
その時、
「ただいま~」
玄関からおばあちゃんの元気な声が聞こえてきた。
「おっ、今日はカレーなんだね。美味しそうだね」
おばあちゃんがニコニコ笑いながらよっこらしょと座布団に腰を下ろそうとするとお母さんが、「お母さん、手を洗ってうがいをしなさいよ」と言っておばあちゃんの顔をじっと見た。
「はいはい、うるさい子だね」
おばあちゃんは立ち上がり洗面所へと向かった。
「本当に困った人だわ。手も洗わないで」
お母さんは洗面所の方向に視線を向けぶつぶつ文句を言っている。
「別にいいじゃん」
「良くないわよ」
「千加子は子供の頃から優等生でうるさい子なんだよ」
手を洗って居間に戻ってきたおばあちゃんはそう言いながらよっこらしょと今度こそ座布団に腰を下ろした。
玄関で靴を脱ぎ台所に行くとお母さんが野菜をとんとんと切り夕飯の準備をしていた。
「早乙女ちゃん、おかえりなさい。手を洗ってうがいをするのよ」
「は~い!」
わたしは、返事をしながらテーブルの上に置かれているチョコレートをこっそり口に放り込んだ。うん、美味しい。
「早乙女ちゃん、ダメでしょ。手を洗ってから食べなさい! それにもうすぐ夕飯よ」
お母さんはそう言ってこちらに振り返った。いつも思うんだけど、お母さんの背中には目がついているのかなと疑いたくなるのだ。
「は~い、分かったよ」
わたしが渋々洗面所に行こうとしたその時、
「ただいま~」と元気な声が聞こえてきた。
この声は弟の奈央だ。
「奈央、おかえりなさい」
お母さんは振り返らずに言った。
「めちゃくちゃお腹が空いたよ」
奈央はテーブルの上に置かれているチョコレートに視線を向け目をキラキラと輝かせたのとほぼ同時にチョコレートに手を伸ばし口に放り込んだ。
「奈央、あんたもつまみ食いをして、まったくよく似た姉弟なんだから! 奈央も手を洗ってきなさいよ」
お母さんは振り向きわたしと奈央の顔をじっと見た。
わたしと奈央は顔を見合わせ「似てないよ」、「似てないぞ」と言った声が揃ってしまった。
手を洗って居間でテレビを観ていると奈央が入ってきた。
わたしの隣に腰を下ろし「姉ちゃんお腹が空いたね」と言った。
「うん、わたしもお腹が空いたよ」とテレビ画面を眺めながら答える。
「なぁ、姉ちゃん。俺の友達がお前の姉ちゃん可愛いじゃんって言ってたんだよ」
「な、なんですって! わたしってやっぱり可愛いかな~」
わたしは頬に手を当ててニコニコと微笑みを浮かべ奈央の顔を見た。
「いや~俺の友達は近眼なんだよ」
奈央はふぅーと溜め息をついた。
「奈央、あんたわたしに喧嘩を売っているのかな?」
「はぁ、喧嘩なんて売ってねえよ」
「ふ~ん、じゃあ、わたしのこと可愛いって認めなさいよ」
「早乙女、自分で可愛いって言うか?」
「ちょっと奈央、早乙女って呼ぶな。お姉ちゃんって言いなさい」
「早乙女は早乙女なんだからいいじゃん」
「よくありません」
わたしは奈央のほっぺたに手を伸ばしてぎゅっとつねった。
「い、痛いよ~ほっぺたがちぎれそうだよ」
奈央は顔を歪めて叫んだ。
ふん、早乙女と呼ぶからそうなるのよ。
「早乙女ちゃん、何をしているのよ。奈央のほっぺたがちぎれるじゃない」
お母さんが居間のテーブルにお皿を並べながら言った。
「だって、奈央が悪い子なんだもん」
「姉ちゃん痛いってば」
「はいはい、喧嘩はしないの。二人ともいつまでも子供なんだから。早乙女ちゃん、夕飯運ぶの手伝って」
「は~い」
わたしは、奈央のほっぺたから手を離し台所ヘ向かった。テーブルの上に置かれているサラダをお盆に載せて居間に戻り並べる。
今日の夕飯はわたしの大好物のカレーだった。
「わっ、美味しそうだね」
「美味しそうだぜ」
「うふふ、わたしの得意料理よ。さあ、食べるわよ」
その時、
「ただいま~」
玄関からおばあちゃんの元気な声が聞こえてきた。
「おっ、今日はカレーなんだね。美味しそうだね」
おばあちゃんがニコニコ笑いながらよっこらしょと座布団に腰を下ろそうとするとお母さんが、「お母さん、手を洗ってうがいをしなさいよ」と言っておばあちゃんの顔をじっと見た。
「はいはい、うるさい子だね」
おばあちゃんは立ち上がり洗面所へと向かった。
「本当に困った人だわ。手も洗わないで」
お母さんは洗面所の方向に視線を向けぶつぶつ文句を言っている。
「別にいいじゃん」
「良くないわよ」
「千加子は子供の頃から優等生でうるさい子なんだよ」
手を洗って居間に戻ってきたおばあちゃんはそう言いながらよっこらしょと今度こそ座布団に腰を下ろした。
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