陽のあたる場所【加筆訂正中】

たまゆらりん

文字の大きさ
上 下
131 / 134

エピローグ2

しおりを挟む
  ーーちゃんと、罪、償わねぇとな……






「810番。面会だ」



  ーー弁護士か……?



  刑務官の後についていき、案内された面会室へ入った。



「父…さん……」

「久しぶり……だな……」

「ご迷惑おかけして……申し訳ありませんでした」

「その事は…………いい」



  責められると思ってたのに、何も文句を言わずにあっさりと答えられた。
  きっと、跡継ぎとしての役割をこなせないどころか、多大な迷惑をかけた事に激怒しているんだ。



  たった一人の家族だけど……

  親子の縁を切られる日が、
  とうとう来たんだって……



  目を瞑り覚悟決めて、
  父さんからの絶縁の言葉を、静かに待った。






「お前が養子縁組をしていた少年に……会ったよ。透子にそっくりで…………本当に、驚いた」






  父の口から出たのは絶縁の言葉ではなく、柚希の話だった。
  只でさえ、俺が逮捕されたせいで忙しいのに、養子縁組を解消する為に、父さんに手間を掛けさせた事が、本当に悪いと思った。



  ーー父さんが驚くぐらいだから……やっぱり母さんに似てるんだ……



「その少年に、ガツンと叱られたよ。『ちゃんと、柊と向き合ってくれ』って……。『たった一人の家族なんだから、愛してやって』って。…………まるで、天国から様子を見ていた透子が現れて、怒られているみたいだった……」

「父さん……」

「……わかってたんだよ……透子がどんな気持ちで、おまえを生んだのか……どんなにおまえを、愛してたのか…………それでも……私は、臆病者で……」



  父さんは涙で声が詰まり、嗚咽を上げてる。



「透子の死を、受け入れる事が出来なかった……おまえを認めたら……透子が死んだ事になる……だから……おまえを受け入れる事が、どうしても出来なかった……。すまない……柊……本当に……すまない……」

「父さん……もう、謝らないで……」

「今からおまえの父親になるのを……許してくれないか……?」

「とう……さん……」

「この世で……たった一人の……私の息子になってほしい……」

「許すも何も……俺は父さんの息子で……父さんは俺の、たった一人の家族だから……」

「……ありがとう……ありがとう、柊……」

「父さん……」



  無機質なアクリル板越しに、手と手を重ねる。
  父さんが俺に触れようとするのは、生まれて初めてだった。
  掌に当たってるのは分厚いアクリル板なのに、何故だか父さんの手の温もりを感じて、心がじんわりとして感動で震えた。



「柊がここを出るのを、何年でも待ってる……いや、待たせてくれないか……」

「ありがとう……父さん……」






  柚希と俺は、結ばれる事はなかった。

  それでも、こんな俺を愛してくれた。

  そして、俺の一番欲しかったーーー



  家族の愛を、俺にくれた。






  ーー柚希……ありがとう……






  小さな少年が、  大きな愛を

  俺に運んできてくれた。





 
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

真面目な部下に開発されました

佐久間たけのこ
BL
社会人BL、年下攻め。甘め。完結までは毎日更新。 ※お仕事の描写など、厳密には正しくない箇所もございます。フィクションとしてお楽しみいただける方のみ読まれることをお勧めします。 救急隊で働く高槻隼人は、真面目だが人と打ち解けない部下、長尾旭を気にかけていた。 日頃の努力の甲斐あって、隼人には心を開きかけている様子の長尾。 ある日の飲み会帰り、隼人を部屋まで送った長尾は、いきなり隼人に「好きです」と告白してくる。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

処理中です...