鏡の中の娼年 ～不幸で性格の悪い俺が、スパダリの親友に溺愛されるようになるまでの話～

いつも側にいてくれたのは

  ドスッと鈍い音が聞こえ、親父は苦しそうに呻き、仰け反った。
  そのまま親父は腕をを掴まれ、ベッドの脇へ投げ飛ばされる。
  フローリングに踞る親父に、容赦なく何発も蹴りが入れられてる……

  今まで見た事がないような形相で、静かに憤怒する暁が、そこにはいた。

  吐付く親父の胸ぐらを掴み、締め上げる。
  親父は「ぐるじぃ……たすけて……」とみっともなく懇願した。



「あんた……自分の借金ぐらい、テメェで払えよ……息子に背負わせてるんじゃ、ねぇよ……」

「ずびばぜん……」

「だらしなさそうなわりには、肌艶も、顔色も良いな……
……あんたの眼球、皮膚、内臓、骨……それで借金、チャラにしてやるよ……」

「ゆるじでぐださい……」

「……美玲は……ずっと、地獄だったんだ……身体も、金も、勉学も…………全て、あんたに奪われて……
…………人生、狂わされたんだよ……！」

「はぃ……ずみ゛ばぜん……」

「二度と近付くな……美玲の側には、必ず僕がいる……
今度姿が見えたら、あんたを即、ブローカーへ売り飛ばす…………いいな？」

「あぃ……二度と…近付きまぜん……」



  腰を抜かした様に這いつくばりながら、ドアノブを掴み何とか立ち上がると、親父はフラついたまま、一目散に逃げて行った。






「うっ……うぅ……、ひっ……うぐっ…………」

「大丈夫？……美玲……、怖かったね……」



  怯えて縮こまる俺を、優しく抱きしめ、頭を撫でてくれる暁。
  包帯には血が滲んでいて、あの時の傷口が開いてるのがわかった。



「もう、大丈夫だよ。安心していいからね……」



  暁の言葉に、小さくコクコクと頷いた。






  そうだった……

  俺を地獄から救い、助けてくれたのは……
  柊だけじゃない。

  暁もいつも、一緒だった。



  俺が辛い時、悲しい時、苦しい時、
  いつも、いつでも側にいてくれて……
  慰めたり、優しくしてくれたり、
  励ましてくれたのは……
  柊じゃなくて……

  暁だった。

  柊しか見えなくて、気付かなかったけど……



  いつも側にいて

  いつだって助けてくれたのはーーー



  暁なんだ……