33 / 51
壊れてく ②
しおりを挟む
仕事を終え、ホテルに帰り、ぬるめのお湯にゆっくり浸かった。
髪は濡れたまま、上質なタオル地のバスローブを羽織り、ベッドへ沈み込むように寝そべる。
暁は奥にある、もう一つのベッドルームで寝ているみたいだった。
ライトをつけない薄暗い部屋の中、ベッドの上でスマホだけがボウッと光ってる。
何度見ても、メッセージは未読のままで、電話はかかってこない。
こめかみに温かい涙が、ツーっと流れ落ちる。
ーー同棲……始めてたなんて…………
俺は柊のマンションへ、一度も行った事なかった。
それどころか、一晩一緒に過ごした事すらない。
柊はセックスが終わると、いつも家に帰っちゃうから……
考えれば考えるほど、あのチビが……
柚希は“特別”なんだって、思い知らされる。
嫉妬なんて……された事ない……
仕事とはいえ、沢山の男に抱かれてるのに……
柊にとって、俺は……
ただの、“商品”でしかないんだ……
枕は涙でビチョビチョになる。
苦しくて、
苦しくて……
ケロイドのような古傷と、まだ瘡蓋や血が滲む左腕。
そこに、新品のカミソリをあてがい、スーっとゆっくりと引いた。
ジワッと血が滲み、何本もの紅い筋が、腕に刻まれていく。
痛いとか、怖いとかは気にならない。
自分を傷付ける事で、現実の辛さや悲しみを紛らわした。
「痛っ…………!」
思ったより、手首を深く切りすぎた。
皮肉にも流れる血と痛みで、自分は生きているんだって思い知らされる。
血……止まんない……
このまま……
死んじゃえばいいのに……
こんな出血量では死なない事くらい、頭ではわかっていた。
それでも、もしかしたら死ねるんじゃないかって……
死ぬ事で、楽になれるんじゃないかって……
ーー柊…………愛してる…………
こんな状況でも、頭に浮かぶのは柊の事だけだった。
柊の情熱的な口付け、
逞しい身体と、熱い体温、
涼しさの中にある、熱っぽい視線……
忘れられない……
忘れたくない……
涙で視界が滲んで、目を開けていられない。
「美玲!」
突然、部屋の明かりがつき、動揺しながら大声で呼ぶ、暁の声が聞こえた。
いろいろとショックで、頭が呆然としていた。
だから、シャワーを浴びた後、ベッドルームのドアを閉めずに、開けっ放しにしている事に全く気付かなかった。
様子を見に来た暁が、開きっ放しのドアから血を流す俺を見て、慌てて中へ入って来た。
「血が、止まらない……!美玲、今、直人先生呼ぶから!」
焦ってパニックになりながらも、肘の内側を圧迫して、冷静な判断で止血をする暁。
その姿をただ瞳に映しながら、意識はだんだんと薄れていった。
髪は濡れたまま、上質なタオル地のバスローブを羽織り、ベッドへ沈み込むように寝そべる。
暁は奥にある、もう一つのベッドルームで寝ているみたいだった。
ライトをつけない薄暗い部屋の中、ベッドの上でスマホだけがボウッと光ってる。
何度見ても、メッセージは未読のままで、電話はかかってこない。
こめかみに温かい涙が、ツーっと流れ落ちる。
ーー同棲……始めてたなんて…………
俺は柊のマンションへ、一度も行った事なかった。
それどころか、一晩一緒に過ごした事すらない。
柊はセックスが終わると、いつも家に帰っちゃうから……
考えれば考えるほど、あのチビが……
柚希は“特別”なんだって、思い知らされる。
嫉妬なんて……された事ない……
仕事とはいえ、沢山の男に抱かれてるのに……
柊にとって、俺は……
ただの、“商品”でしかないんだ……
枕は涙でビチョビチョになる。
苦しくて、
苦しくて……
ケロイドのような古傷と、まだ瘡蓋や血が滲む左腕。
そこに、新品のカミソリをあてがい、スーっとゆっくりと引いた。
ジワッと血が滲み、何本もの紅い筋が、腕に刻まれていく。
痛いとか、怖いとかは気にならない。
自分を傷付ける事で、現実の辛さや悲しみを紛らわした。
「痛っ…………!」
思ったより、手首を深く切りすぎた。
皮肉にも流れる血と痛みで、自分は生きているんだって思い知らされる。
血……止まんない……
このまま……
死んじゃえばいいのに……
こんな出血量では死なない事くらい、頭ではわかっていた。
それでも、もしかしたら死ねるんじゃないかって……
死ぬ事で、楽になれるんじゃないかって……
ーー柊…………愛してる…………
こんな状況でも、頭に浮かぶのは柊の事だけだった。
柊の情熱的な口付け、
逞しい身体と、熱い体温、
涼しさの中にある、熱っぽい視線……
忘れられない……
忘れたくない……
涙で視界が滲んで、目を開けていられない。
「美玲!」
突然、部屋の明かりがつき、動揺しながら大声で呼ぶ、暁の声が聞こえた。
いろいろとショックで、頭が呆然としていた。
だから、シャワーを浴びた後、ベッドルームのドアを閉めずに、開けっ放しにしている事に全く気付かなかった。
様子を見に来た暁が、開きっ放しのドアから血を流す俺を見て、慌てて中へ入って来た。
「血が、止まらない……!美玲、今、直人先生呼ぶから!」
焦ってパニックになりながらも、肘の内側を圧迫して、冷静な判断で止血をする暁。
その姿をただ瞳に映しながら、意識はだんだんと薄れていった。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる
KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。
ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。
ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。
性欲悪魔(8人攻め)×人間
エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』
山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜
ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。
高校生×中学生。
1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。
彼女ができたら義理の兄にめちゃくちゃにされた
おみなしづき
BL
小学生の時に母が再婚して義理の兄ができた。
それが嬉しくて、幼い頃はよく兄の側にいようとした。
俺の自慢の兄だった。
高二の夏、初めて彼女ができた俺に兄は言った。
「ねぇ、ハル。なんで彼女なんて作ったの?」
俺は兄にめちゃくちゃにされた。
※最初からエロです。R18シーンは*表示しておきます。
※R18シーンの境界がわからず*が無くともR18があるかもしれません。ほぼR18だと思って頂ければ幸いです。
※いきなり拘束、無理矢理あります。苦手な方はご注意を。
※こんなタイトルですが、愛はあります。
※追記……涼の兄の話をスピンオフとして投稿しました。二人のその後も出てきます。よろしければ、そちらも見てみて下さい。
※作者の無駄話……無くていいかなと思い削除しました。お礼等はあとがきでさせて頂きます。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話
ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。
悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。
本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ!
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209
人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
BL
八架 深都は好奇心から売り専のバイトをしている大学生。
ある日、不眠症の小説家・秋木 晴士から指名が入る。
秋木の家で深都はもこもこの部屋着を着せられて、抱きもせず添い寝させられる。
戸惑った深都だったが、秋木は気に入ったと何度も指名してくるようになって……。
●八架 深都(はちか みと)
20歳、大学2年生
好奇心旺盛な性格
●秋木 晴士(あきぎ せいじ)
26歳、小説家
重度の不眠症らしいが……?
※性的描写が含まれます
完結いたしました!
可愛い子にはお仕置きを
たまゆらりん
BL
◆《エロ読み切り短編集》◆ヤンデレでドSな半グレDV男に監禁される、不憫なドMツンデレDCの話。/【陽のあたる場所】のパラレルです。登場人物や世界観は一緒ですが、話は繋がってない別物です。読みきりの短編集になります。ボツネタも投稿予定です。/◆本編のネタバレがあります。/◆本編を読まなくても、わかる内容になってます。こちら単独でも、十分に楽しめます。/◆柊×柚希メインです。/◆モブ×柚希もあるので、総受け傾向になります。/◆ストーリーはありません。ただ、柚希が柊に酷い目に遭わされるだけの話です。/◆本編より、柊のクズ度、鬼畜度が増してます。/◆全編エロがあります。無いものにはタイトルへ表記します。/◆受け(柚希)視点です。/【登場人物】●内海柚希(うつみ ゆずき)《受》中学3年/155cm/華奢/猫系で女顔/元々色素が薄く色白。地毛と瞳は栗色/金髪(ミルクティーベージュ系)、ピアス/◎見た目だけのマイルドヤンキー。陰キャでぼっちな、弱虫の元いじめられっ子。生意気な見た目とエロい雰囲気でビッチに見られる。変態やドSを引き寄せる、不幸な体質。淡白だけど体は敏感。/●樋浦柊(ひうら しゅう)《攻》20歳/大学生/187cm/細マッチョ/クール系の美形/茶髪(アッシュ系)、ピアス、タトゥー、愛煙家、酒飲み、香水は甘め/◎鬼畜ドSの俺様。半グレ集団、SHGの創設者でリーダー。建築会社の社長令息で金持ち。独占欲が強く、嫉妬深い。エッチが上手い。/【※不定期更新】/《以下の要素を含みます。苦手な方は注意》無理矢理、監禁、拘束、DV、SM要素、モブ姦、複数プレイ、総受け、淫語、タトゥー、喫煙/(※まだあげてない話に、入る予定のものがあります)/⚠️地雷のある方は、各話の注意事項を確認の上、お読み下さい⚠️/◆fujossy、pixivでも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる