鏡の中の娼年 ～不幸で性格の悪い俺が、スパダリの親友に溺愛されるようになるまでの話～

特別な講習 ①

「悪ぃな、暁」

「気にしないで、柊ちゃん。僕は僕でチームを立ち上げたばかりで、打合せするようだったし……
サブリーダーが良い奴で、任せっきりでも何も言わないから……つい、甘えちゃってね」

「おまえが下の奴等に、信頼されてるからだろ。暁の人徳だよ。なるべく早く終わらせる」

「大丈夫だって。慌てなくて、いいよ」



  暁は俺を見つめ、少し寂し気に微笑むと、部屋を出て行った。
  ずっと一緒にいてくれた暁がいないのが、なんだか慣れない。

  慣れないというか……
  柊と二人きりだと、すごく緊張してしまう。

  緊張を誤魔化す為に、ペラペラと無駄に喋って、すごくお喋りになってしまった。



「柊がSHGのリーダーって聞いた時は、なんとなく理解できたけど……暁がAHGのリーダーっていうのには、すごく驚いた……
……まあ、二人とも“お坊ちゃん”って感じで、不良には見えないけどね」

「俺は、そう見えないように気を付けてる。暁は物腰柔らかくて、優しくて良い奴だから、全然見えねぇよな。
……俺が悪い奴等とつるむようになって、引きずり込んじまった感じだし」

「二人は仲良いんだね」

「まあな。暁の両親にも、すげー世話になってるし……家族みたいなもんだよ。暁の事、あんま待たせる訳にいかないから、早速始めんぞ」

「あっ……うん」




  柊は立ち上がると、俺の隣に腰を掛けた。
  いつもの涼しげな目で、見つめてくる。
  あまりの緊張に、呼吸の仕方すら忘れ、息苦しい。
  顔が熱くて、真っ赤になっているのが、自分でもわかった。






  これから、講習が始まる……
  柊に…触られちゃう……
  どうしよう…………
  心臓の音、頭の中で響いてて、

  すごく……煩い…………