上 下
165 / 170
最後の異世界生活~カノン編~

~感謝~

しおりを挟む
カノンの演奏が終わり、院長先生の風音かざねさんとともに駆け寄って来た原さん達。

風音かざねさんとカノンの話が終わり、風音かざねさんが他の演者のもとへ挨拶に行ったのと入れ替わるように原さん達がカノンに声を掛けた。

「カノンちゃん、お疲れ様!演奏、すっごく良かったよ!
本当に効果てき面だったよ!サブリミナル効果!!」

「おっ、原さんがちゃんと言えた。サブリミナル効果。」

「そりゃぁ、言えるように猛特訓したんだから!」

「……猛特訓…。
それにしても、ほんと、すごく良かった!こう…ジーンときたよ。」

「ふふっ…。ありがとうございます、いのりちゃん、雅君。」

「カノンちゃんの演奏、やっと聞けたわ!もぅ、すっごく良かった!!
いつの間にか涙が出ちゃったわ。
最後のカノンをアレンジしたものを弾いていたわよね。
すごく素敵なアレンジだったわ。
聞かせてくれてありがとう。」

「本当に。お母さんの言うように、すごく良かったよ。お疲れ様。」

「お約束ですもの。いずれ機会があれば…と。今回がその機会だったのですわ。」

「……まぁ…よかったよ…。お疲れ………カノン。」

「…かなめさん…今…初めて名前…呼んでくださいましたわ…。」

「べ、別に、いいだろ!」

「初めての名前呼び、すごく嬉しいですわ。ありがとうございます。

今回演奏した曲は…風音かざねさんの仰る通り、わたくしのこれまでの出来事を思いながら演奏してみましたの。

転調から最後にかけては……出会った方々の優しさを思いながら演奏しました。

本当に…わたくしは恵まれています…。ありがとうございます。」

各々がカノンに感想を伝え、カノンの感謝の言葉に照れた表情を浮かべた皆は、しばらく和気あいあいと談笑していた。
会話が一段落したところで、とおるが軽食でも食べようと提案し、一行は挨拶周りをしていた風音かざねさんに挨拶をしてその場を後にした。


その後、カノン達はとおるの提案通り、帰る途中でカフェに寄り、軽食を食べたのち帰路に着いた。


チャリティーコンサートの翌日の午前中。

カノンは美桜の部屋でいつものように机に向かい、参考書やルーズリーフを広げて勉強にいそしんでいた。
「(今日は午後から空手部に顔を出すので…それまでにできる事をしてしまいましょう。

…………。
………だいぶペンを走らせましたわ。
家を出るまでまだお時間は……もう少しありますわね。

昨日のチャリティーコンサート…思い出すとまた胸がドキドキしますわ…。
あんなにも嬉しい反応が来るとは…。
……お世話になった皆さんにお手紙でも書いてみようかしら。)」

カノンは家を出る時間まで物思いにふけったり、手紙を書いたりのんびりと過ごしていた。

そうして、しばらくゆっくり過ごしていると、家を出る時間が迫り、カノンは机の上を片付け、軽くお昼ご飯を済まして家を出た。


カノンが家を出て学校の武道場に着いた頃、すでに皆が揃い、部活の準備も終え、談笑していた。

カノンも足早に更衣室に行き、着替えを素早く済ませ談笑している皆と合流した。

部の皆と談笑して過ごしていると、顧問の先生が顔を出し、部活が始まっていった。

カノンや皆がケガもなく部活を終えた頃。
部活の後片付けを皆としていたカノンは、顧問の先生に呼ばれ昇級試験の結果を伝えられた。

結果は見事合格。
晴れて初段になり、黒帯をもらい受けた。

「や…やりましたわーーーー!!!!!
ありがとうございます!!!すっっっごく嬉しいですわ!!!」

「一ノ瀬が頑張った結果だよ。
昇級試験…初段まで上り詰めたいと相談を受けた時は正直驚いたよ。
初段までいくつもの試験の項目を受ける事に心配はあったが…見事な頑張り、見事な結果だ。
初段…おめでとう。」

「ありがとうございます!!」

カノンは黒帯を受け取ると、念願の昇級が叶ったという実感に感情があふれ出た。
顧問の先生もカノンの頑張りを見ていた事もあり、祝福の言葉と同時に優しい笑みをカノンに向けた。

カノンも嬉しさのあまり、受け取った帯を持ち、その場でピョンピョン飛び跳ね、満面の笑みを見せた。
そんなカノンの様子を見た主将のひいらぎさんや、後輩の皆が駆け寄り、カノンに祝福の声を掛けた。

カノンと部の皆が落ち着きを取り戻した頃、途中だった後片付けに戻り、着替えも済ませていった。

部活後、カノンはいつも通り図書室や第三音楽準備室に寄り、本を読んだり、ピアノの練習をして帰宅した。

時刻はすでに夕刻。
一ノ瀬家に帰宅し、ダイニングテーブルに顔を出すと、とおるゆいかなめが揃っていた。

カノンが帰宅の挨拶をすると、機嫌の良いカノンに気付いたゆいが理由を聞いてきた。

「おかえり、カノンちゃん。なんだか嬉しそうね。何かあったの?」

「はい!この間受けた昇級試験!無事に合格して初段になりましたの!
黒帯もこの通りですわ!!」

カノンは意気揚々とカバンから黒帯を出して見せた。

「わぁ!やったわね!努力の賜物たまものね!!おめでとう!!」

「本当、すごく頑張っていたからな。おめでとう。今日の夕食は豪華に作らなきゃだな。」

「…まぁ、あんだけ頑張ってりゃ当然だよな。……一応、おめでと。」

「ふふっお兄ちゃんの方が誇らしげなのは気のせいかしら?」

「はぁ?!別に、そんなんじゃないし!」

「皆さん…ありがとうございます!着替えてお夕食の準備、お手伝いしますわ!」

カノンは一ノ瀬家の皆から祝福の言葉をもらい、にこやかな笑みを浮かべながら着替えに行った。
着替えを素早く済ませたカノンは、手を洗ったり、夕食の準備を手伝い、少しだけ豪華に出来上がった食事を手際よくテーブルに並べていった。

皆が食卓を囲い、改めてカノンに祝福の言葉をかけ、食事を進めていった。

一ノ瀬家の皆と談笑しながらも夕食を終えた後、カノンはお風呂を済ませ、寝るには少しだけ早い時間だが、美桜の部屋に戻り、一日の出来事を日記を書いていた。

カノンが日記を書き終わり、席を立った矢先、再びめまいに襲われた。

「(こ…れは…あの時の…。
こう…何度も訪れるとは…いったい…何なんですの…。
意識が…また…引っ張られる感覚…。今…回は…以前よりも…増して……。

っ…こんな……こんな所で…夢に…閉じ込められるなんて……つまらないですわ!!)」

カノンは意識や感覚が遠のき始めている中、力を振り絞り、机の上に置いていたおまじないの本を開き、目を強く閉じ、おまじないを唱えた。

「何か状況、変わってください!!リアライズチェンジ!!」

おまじないを唱えたのと同時に、カノンの意識は遠のき、気を失いその場に倒れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アニラジロデオ ~夜中に声優ラジオなんて聴いてないでさっさと寝な!

坪庭 芝特訓
恋愛
 女子高生の零児(れいじ 黒髪アーモンドアイの方)と響季(ひびき 茶髪眼鏡の方)は、深夜の声優ラジオ界隈で暗躍するネタ職人。  零児は「ネタコーナーさえあればどんなラジオ番組にも現れ、オモシロネタを放り込む」、響季は「ノベルティグッズさえ貰えればどんなラジオ番組にもメールを送る」というスタンスでそれぞれネタを送ってきた。  接点のなかった二人だが、ある日零児が献結 (※10代の子限定の献血)ルームでラジオ番組のノベルティグッズを手にしているところを響季が見つける。  零児が同じネタ職人ではないかと勘付いた響季は、献結ルームの職員さん、看護師さん達の力も借り、なんとかしてその証拠を掴みたい、彼女のラジオネームを知りたいと奔走する。 ここから第四部その2⇒いつしか響季のことを本気で好きになっていた零児は、その熱に浮かされ彼女の核とも言える面白さを失いつつあった。  それに気付き、零児の元から走り去った響季。  そして突如舞い込む百合営業声優の入籍話と、みんな大好きプリント自習。  プリントを5分でやっつけた響季は零児とのことを柿内君に相談するが、いつしか話は今や親友となった二人の出会いと柿内君の過去のこと、更に零児と響季の実験の日々の話へと続く。  一学年上の生徒相手に、お笑い営業をしていた少女。  夜の街で、大人相手に育った少年。  危うい少女達の告白百人組手、からのKissing図書館デート。  その少女達は今や心が離れていた。  ってそんな話どうでもいいから彼女達の仲を修復する解決策を!  そうだVogue対決だ!  勝った方には当選したけど全く行く気のしない献結啓蒙ライブのチケットをプレゼント!  ひゃだ!それってとってもいいアイデア!  そんな感じでギャルパイセンと先生達を巻き込み、ハイスクールがダンスフロアに。 R15指定ですが、高濃度百合分補給のためにたまにそういうのが出るよというレベル、かつ欠番扱いです。 読み飛ばしてもらっても大丈夫です。 検索用キーワード 百合ん百合ん女子高生/よくわかる献血/ハガキ職人講座/ラジオと献血/百合声優の結婚報告/プリント自習/処世術としてのオネエキャラ/告白タイム/ギャルゲー収録直後の声優コメント/雑誌じゃない方のVOGUE/若者の缶コーヒー離れ

二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す

SO/N
ファンタジー
主人公、ウルスはあるどこにでもある小さな町で、両親や幼馴染と平和に過ごしていた。 だがある日、町は襲われ、命からがら逃げたウルスは突如、前世の記憶を思い出す。 前世の記憶を思い出したウルスは、自分を拾ってくれた人類最強の英雄・グラン=ローレスに業を教わり、妹弟子のミルとともに日々修行に明け暮れた。 そして数年後、ウルスとミルはある理由から魔導学院へ入学する。そこでは天真爛漫なローナ・能天気なニイダ・元幼馴染のライナ・謎多き少女フィーリィアなど、様々な人物と出会いと再会を果たす。 二度も全てを失ったウルスは、それでも何かを守るために戦う。 たとえそれが間違いでも、意味が無くても。 誰かを守る……そのために。 【???????????????】 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー *この小説は「小説家になろう」で投稿されている『二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す』とほぼ同じ物です。こちらは不定期投稿になりますが、基本的に「小説家になろう」で投稿された部分まで投稿する予定です。 また、現在カクヨム・ノベルアップ+でも活動しております。 各サイトによる、内容の差異はほとんどありません。

きっと幸せな異世界生活

スノウ
ファンタジー
   神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。  そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。  時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。  異世界レメイアの女神メティスアメルの導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?  毎日12時頃に投稿します。   ─────────────────  いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、 婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、 話の流れから婚約を解消という話にまでなった。 ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、 絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...