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最後の異世界生活~カノン編~
~兄の話~
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カノンが着替え終え、ダイニングテーブルに顔を出すと、結が夕食の準備をしており、結以外の皆は、席に着いて他愛のない会話をしていた。
「今日はカレーなの。…カノンちゃん、起きたばかりだけど、カレー…食べれそう?おかゆにしましょうか?」
「大丈夫ですわ。嫌な夢を見たという事だけで、気分や体調は平気ですの。」
「よかった。それじゃぁ…はい、これと…これ、それから…。」
結とカノンは、話しながら手際よく夕食の準備を済ませていき、全員分の食事を運び終えたところで、皆と同様に席に座り、手を合わせて夕食を進めていった。
カノンが黙々と銀食器を進めていると、原さんが声を掛けてきた。
「そういえばカノンちゃん、嫌な夢を見た…って言っていたけど、夢の記憶あるの?」
「…い、一応…。」
「どんな夢だったか聞いてもいい?あ!嫌な夢って言うくらいだから、無理には…。」
「大丈夫ですわ。お話します…とても…お恥ずかしい話なのですが…。」
カノンは動かしていた銀食器を止め、夢の中での出来事を話した。
カノンの話に皆も夕食を採りながら静かに聞いていた。
「…お前が弱気とか…珍しいな。」
「はい…不覚にもそんな状態に…。」
「でも、お兄さんの事を思ったからある程度の暗い感情はなくなったんだよね。すごいね、カノンさんのお兄さん。どんな方なんだい?」
要に続いて徹が、カノンに声を掛け、徹の疑問にカノンは気まずそうな表情をし、そんなカノンの様子に、皆は疑問の表情を浮かべた。
「……何と言いますか…とても明るくて、陽気な方…ですわ…。少し…いえ、かなりうるさいですが…。」
「…カノンちゃんのお兄さん…全然想像つかない…。」
原さんの言葉にカノンは一つ息を吐き、決意した眼差しで原さんを見つめた。
「…お兄様を言葉で表現するのは難しいですわ…。いのりちゃんをわたくしだと思って、お兄様を演じてみます。」
「う、うん…。」
カノンは立ち上がり、原さんに近づき深く深呼吸をした。
その様子を皆が静かに見ていた。
「…コホン……。おぉ~~可愛い妹よ!!今日も美しい!!可憐だ!!さすがは僕の妹だ!!!うんうん、今日も麗しいなぁ~~!!!」
カノンは自分の兄、フロックスの事を思い出しながら普段言われている事や口調、調子などを全力で演じながら、原さんに抱き着いた。
カノンが演じ終わり、原さんから離れて皆を見ると、皆は目を丸くしてカノンを見ていた。
「…皆様、そんな目で見ないでくださいまし。これが兄の姿なのですから。」
「な、なんというか…とても愉快な方なんだね…。」
「徹お父様、はっきり、うるさい方だと言ってもいいのですよ。実際、姉やわたくしもそう思っておりますし、姉に関してはあしらってますし。」
カノンが席に戻り、銀食器を再び動かし始めた。
要は最後の一口をゴクッと飲み込み、すごいものを見たように顔を引きつらせた。
「すげー…俺とは正反対だな…。妹溺愛がすご過ぎる…。」
「妹愛がすごいのは、要さんも負けてないですわよ。」
「はぁ?!べ、別に、そんなじゃねぇし!俺のどこをどう見たら、そんな風に見えるんだよ!」
「全部ですわ。全身から美桜さんを思う気持ちが溢れています。以前、わたくしがこの国に来た時よりも…ですわ。違いまして?」
「~~~!!おかわりしてくる!!」
「ふふっ勝ちましたわ。」
「「「(つ、強い…。)」」」
「(なんか…デジャブ…。)」
カノンと要のやり取りを峰岸君や、原さん、結や徹は苦笑いを浮かべながら見ていた。
そんな中、徹がふと思い出したようにカノンに話し掛けた。
「そういえばカノンさん、来月はもう期末試験があるよね。
それに向けて帰りが遅くなるとか…。あまり無茶しちゃダメだよ。
いくら空手が強くても、女の子だからね。
帰りが遅くなりそうなら連絡くれるかい?
迎えに行くから。」
「わかりましたわ。お迎え、お願い致します。」
カノンと徹の会話を聞いていた原さんの顔が次第に真っ青になっていった。
「うぅ…期末…私の天敵…。」
「いのりちゃん…まだ時間はありますわ。わたくしもお手伝いしますから。」
「僕も…今度こそ、カノンさんと協力するから。」
「カノンちゃん…峰岸君…ありがとう~。」
「原さんは勉強、苦手なのか?」
カレーのおかわりを入れ終わった要が席に戻り、カノン達の会話に入ってきた。
「は…はい…。日本語が日本語に聞こえないくらいには…苦手です…。中間はカノンちゃんのおかげで結構な高得点を取れました。
…けど、期末は範囲も広いし…自信ないです…。」
「…そうか…。人には向き不向きがあると思うんだが…。
うーん…そういや、大学で勉強が苦手な俺のダチが、勉強はパズルだ!頭の体操だ!って自分に言い聞かせながら机に向かっているのを何度も見たな…。」
「勉強はパズルで…体操…。それ、私もやってみます!勉強だと思うから身に付かないって、この間の中間の時に感じました!ありがとうございます!」
「お、おう…。」
原さんの満面の笑みにたじろぐ要。
そんな二人の会話を皆がにこやかな表情で見ており、夕食の時間が和やかに刻々と過ぎていくのだった。
「今日はカレーなの。…カノンちゃん、起きたばかりだけど、カレー…食べれそう?おかゆにしましょうか?」
「大丈夫ですわ。嫌な夢を見たという事だけで、気分や体調は平気ですの。」
「よかった。それじゃぁ…はい、これと…これ、それから…。」
結とカノンは、話しながら手際よく夕食の準備を済ませていき、全員分の食事を運び終えたところで、皆と同様に席に座り、手を合わせて夕食を進めていった。
カノンが黙々と銀食器を進めていると、原さんが声を掛けてきた。
「そういえばカノンちゃん、嫌な夢を見た…って言っていたけど、夢の記憶あるの?」
「…い、一応…。」
「どんな夢だったか聞いてもいい?あ!嫌な夢って言うくらいだから、無理には…。」
「大丈夫ですわ。お話します…とても…お恥ずかしい話なのですが…。」
カノンは動かしていた銀食器を止め、夢の中での出来事を話した。
カノンの話に皆も夕食を採りながら静かに聞いていた。
「…お前が弱気とか…珍しいな。」
「はい…不覚にもそんな状態に…。」
「でも、お兄さんの事を思ったからある程度の暗い感情はなくなったんだよね。すごいね、カノンさんのお兄さん。どんな方なんだい?」
要に続いて徹が、カノンに声を掛け、徹の疑問にカノンは気まずそうな表情をし、そんなカノンの様子に、皆は疑問の表情を浮かべた。
「……何と言いますか…とても明るくて、陽気な方…ですわ…。少し…いえ、かなりうるさいですが…。」
「…カノンちゃんのお兄さん…全然想像つかない…。」
原さんの言葉にカノンは一つ息を吐き、決意した眼差しで原さんを見つめた。
「…お兄様を言葉で表現するのは難しいですわ…。いのりちゃんをわたくしだと思って、お兄様を演じてみます。」
「う、うん…。」
カノンは立ち上がり、原さんに近づき深く深呼吸をした。
その様子を皆が静かに見ていた。
「…コホン……。おぉ~~可愛い妹よ!!今日も美しい!!可憐だ!!さすがは僕の妹だ!!!うんうん、今日も麗しいなぁ~~!!!」
カノンは自分の兄、フロックスの事を思い出しながら普段言われている事や口調、調子などを全力で演じながら、原さんに抱き着いた。
カノンが演じ終わり、原さんから離れて皆を見ると、皆は目を丸くしてカノンを見ていた。
「…皆様、そんな目で見ないでくださいまし。これが兄の姿なのですから。」
「な、なんというか…とても愉快な方なんだね…。」
「徹お父様、はっきり、うるさい方だと言ってもいいのですよ。実際、姉やわたくしもそう思っておりますし、姉に関してはあしらってますし。」
カノンが席に戻り、銀食器を再び動かし始めた。
要は最後の一口をゴクッと飲み込み、すごいものを見たように顔を引きつらせた。
「すげー…俺とは正反対だな…。妹溺愛がすご過ぎる…。」
「妹愛がすごいのは、要さんも負けてないですわよ。」
「はぁ?!べ、別に、そんなじゃねぇし!俺のどこをどう見たら、そんな風に見えるんだよ!」
「全部ですわ。全身から美桜さんを思う気持ちが溢れています。以前、わたくしがこの国に来た時よりも…ですわ。違いまして?」
「~~~!!おかわりしてくる!!」
「ふふっ勝ちましたわ。」
「「「(つ、強い…。)」」」
「(なんか…デジャブ…。)」
カノンと要のやり取りを峰岸君や、原さん、結や徹は苦笑いを浮かべながら見ていた。
そんな中、徹がふと思い出したようにカノンに話し掛けた。
「そういえばカノンさん、来月はもう期末試験があるよね。
それに向けて帰りが遅くなるとか…。あまり無茶しちゃダメだよ。
いくら空手が強くても、女の子だからね。
帰りが遅くなりそうなら連絡くれるかい?
迎えに行くから。」
「わかりましたわ。お迎え、お願い致します。」
カノンと徹の会話を聞いていた原さんの顔が次第に真っ青になっていった。
「うぅ…期末…私の天敵…。」
「いのりちゃん…まだ時間はありますわ。わたくしもお手伝いしますから。」
「僕も…今度こそ、カノンさんと協力するから。」
「カノンちゃん…峰岸君…ありがとう~。」
「原さんは勉強、苦手なのか?」
カレーのおかわりを入れ終わった要が席に戻り、カノン達の会話に入ってきた。
「は…はい…。日本語が日本語に聞こえないくらいには…苦手です…。中間はカノンちゃんのおかげで結構な高得点を取れました。
…けど、期末は範囲も広いし…自信ないです…。」
「…そうか…。人には向き不向きがあると思うんだが…。
うーん…そういや、大学で勉強が苦手な俺のダチが、勉強はパズルだ!頭の体操だ!って自分に言い聞かせながら机に向かっているのを何度も見たな…。」
「勉強はパズルで…体操…。それ、私もやってみます!勉強だと思うから身に付かないって、この間の中間の時に感じました!ありがとうございます!」
「お、おう…。」
原さんの満面の笑みにたじろぐ要。
そんな二人の会話を皆がにこやかな表情で見ており、夕食の時間が和やかに刻々と過ぎていくのだった。
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