「「中身が入れ替わったので人生つまらないと言った事、前言撤回致しますわ!」」

桜庵

文字の大きさ
上 下
151 / 170
最後の異世界生活~カノン編~

~きっと、大丈夫ですわ~

しおりを挟む
カノンが目を覚ますと、原さんに手を握られており、カノンを心配そうに見る原さんや峰岸君、一ノ瀬家の姿があった。

「…皆さん…ここは…わたくし…学校の廊下にいたはずでは…。」

カノンは状況を把握しようと体を起こし、空いている手をおでこに当て、記憶を思い起こした。
そんなカノンの疑問に原さんが事のいきさつを説明した。

「そう…でしたの…ご心配お掛けしました…申し訳ありません。」

「ううん、カノンちゃんが無事でよかったよ。あれから4時間も目を覚まさないからほんと、心配した。」

原さんとカノンのやり取りを見守っていた峰岸君が、原さんの後ろの方から身を乗り出し、眉を下げ、申し訳なさそうにカノンに声を掛けた。


「……カノンさん…ごめんね…。僕が、からかうなんてしなければ、こんな事には…。」

「…いいえ、雅君のせいではありませんわ。
……おまじないの力が…弱まっていると思うのです…。
以前、占いをされる方に…そう言われました。」

「それ…美桜ちゃんも言ってた。」

峰岸君や原さん、カノンが三人で会話している中に、それまで離れた場所に座って様子を見守っていたかなめゆいとおるも会話に加わるため、ベッド横の空いてる場所に腰を下ろした。

「力が弱まっているとは…どういう事だよ…。それ…この先…どうなるんだ。
二人とも…大丈夫なのか…。」

「……どうなるかは…わかりません…。
ただ…力が弱まっている理由は…回数制限や…おまじないをする時の気持ちの問題のようです。

おまじないの本を解読している時に、ある程度把握はしていますの。」

「……そうか…。」

カノンの言葉に肩を落とすかなめ
かなめと同様にゆいとおるも肩を落とし、沈んだ顔で俯いた。
重い空気の中、口を開いたのは原さんだった。

「……今…カノンちゃんがこうやって倒れたという事は…カノンちゃんの国にいる、美桜ちゃんも同じような事が起きてる…と言うのは、考えられないのかな?

だって、二人とも…運命共同体なんでしょ?」

「……たしかに…。
わたくし、体調が悪くなったりした際は、おまじないを唱えて欲しいとお手紙を書きましたわ。

……今回は…危うく夢に閉じ込められそうになりましたが、きっと…大丈夫ですわ。

もし、わたくしと同じ事が美桜さんにも起こっているのなら、ものすごく、頭の回る方ですから、何かしら行動すると思うのです。
二度と目を覚まさない、夢に閉じ込められる…そんな事にはならないと思います。

と、言いますか、そんな事にはさせませんわ。
今は…大切な人達がいますから…。

きっと、美桜さんも同じ思いですわ。」

カノンは、沈んだ表情を浮かべている皆の顔を真っ直ぐに見ながら、力強く伝えた。

そのカノンの言葉に、俯いていた顔を上げ、全部の不安は拭いきれなくても、幾分か安心したような表情に戻った。

「……そういえば…いのりちゃん、いまだに手を握ってくれていますが……。」

カノンは目覚める前に手を掴まれた感覚がしたが、実際に原さんに手を握られており、それは今現在も握られていた為、手に視線を向けながら、原さんに声を掛けた。

「うわぁ!ご、ごめんね!私、ずっと、握ったままだったね…。
えっと…カノンちゃんがなかなか目を覚まさないなと思っていたら、急に苦しそうにうなされたから、とっさに手を握って、名前を呼んでいたの。」

「…そうでしたか…。いのりちゃんや皆さんの呼びかけのおかげで、苦しい夢から覚める事が出来ましたわ。ありがとうございます。」

カノンの笑顔に、皆は安心したように優しい笑顔を向けた。

空気が重いものから和やかなものに変わり、ゆいの提案で皆は夕食を食べる事になり、各々が美桜の部屋からダイニングテーブルへと移動した。
その間、原さんや峰岸君は家に連絡を入れ、帰りが遅くなる事を伝えた。

カノンは皆が部屋から出て行ったのを確認し、制服から部屋着へと着替えを始めた。


その頃、美桜の部屋の外では、ダイニングテーブルに向かいながらかなめと峰岸君が会話をしていた。

「……あの…かなめさん…。」

「んだよ。」

「……この間は…言い過ぎました。」

「…この間?…何かあったか?」

「えっと…美桜ちゃんの名前呼び…背中を押してくれた時です。」

「………あったか?そんな事…。つーか、もう名前呼びしてんのかよ、生意気な。」

「……。(…かなめさんが背中押してくれたのに…。素直じゃないんだな…でも、やっぱり、優しい人なんだな。)」

「…妹が笑ってんなら、それでいい。……俺は…そういうの、へたくそだから…。
しゃくだが、お前になら任せられる。

……だがな!!まだ、『お兄さん』なんて呼ぶんじゃねぇぞ!!それだけはまだ許さねぇし、認めねぇ!!

あと、今日は俺が夕食を作ったから、有り難く食え!!
それで一応チャラだ!!!」

かなめは不器用な優しさで峰岸君を気遣い、峰岸君もその気持ちが伝わり、笑顔で意気揚々とダイニングテーブルに向かっていった。

原さんはその様子を安心したような、楽しそうな表情で見ていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

処理中です...