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最後の異世界生活~カノン編~
~きっと、大丈夫ですわ~
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カノンが目を覚ますと、原さんに手を握られており、カノンを心配そうに見る原さんや峰岸君、一ノ瀬家の姿があった。
「…皆さん…ここは…わたくし…学校の廊下にいたはずでは…。」
カノンは状況を把握しようと体を起こし、空いている手をおでこに当て、記憶を思い起こした。
そんなカノンの疑問に原さんが事のいきさつを説明した。
「そう…でしたの…ご心配お掛けしました…申し訳ありません。」
「ううん、カノンちゃんが無事でよかったよ。あれから4時間も目を覚まさないからほんと、心配した。」
原さんとカノンのやり取りを見守っていた峰岸君が、原さんの後ろの方から身を乗り出し、眉を下げ、申し訳なさそうにカノンに声を掛けた。
「……カノンさん…ごめんね…。僕が、からかうなんてしなければ、こんな事には…。」
「…いいえ、雅君のせいではありませんわ。
……おまじないの力が…弱まっていると思うのです…。
以前、占いをされる方に…そう言われました。」
「それ…美桜ちゃんも言ってた。」
峰岸君や原さん、カノンが三人で会話している中に、それまで離れた場所に座って様子を見守っていた要や結、徹も会話に加わるため、ベッド横の空いてる場所に腰を下ろした。
「力が弱まっているとは…どういう事だよ…。それ…この先…どうなるんだ。
二人とも…大丈夫なのか…。」
「……どうなるかは…わかりません…。
ただ…力が弱まっている理由は…回数制限や…おまじないをする時の気持ちの問題のようです。
おまじないの本を解読している時に、ある程度把握はしていますの。」
「……そうか…。」
カノンの言葉に肩を落とす要。
要と同様に結や徹も肩を落とし、沈んだ顔で俯いた。
重い空気の中、口を開いたのは原さんだった。
「……今…カノンちゃんがこうやって倒れたという事は…カノンちゃんの国にいる、美桜ちゃんも同じような事が起きてる…と言うのは、考えられないのかな?
だって、二人とも…運命共同体なんでしょ?」
「……たしかに…。
わたくし、体調が悪くなったりした際は、おまじないを唱えて欲しいとお手紙を書きましたわ。
……今回は…危うく夢に閉じ込められそうになりましたが、きっと…大丈夫ですわ。
もし、わたくしと同じ事が美桜さんにも起こっているのなら、ものすごく、頭の回る方ですから、何かしら行動すると思うのです。
二度と目を覚まさない、夢に閉じ込められる…そんな事にはならないと思います。
と、言いますか、そんな事にはさせませんわ。
今は…大切な人達がいますから…。
きっと、美桜さんも同じ思いですわ。」
カノンは、沈んだ表情を浮かべている皆の顔を真っ直ぐに見ながら、力強く伝えた。
そのカノンの言葉に、俯いていた顔を上げ、全部の不安は拭いきれなくても、幾分か安心したような表情に戻った。
「……そういえば…いのりちゃん、いまだに手を握ってくれていますが……。」
カノンは目覚める前に手を掴まれた感覚がしたが、実際に原さんに手を握られており、それは今現在も握られていた為、手に視線を向けながら、原さんに声を掛けた。
「うわぁ!ご、ごめんね!私、ずっと、握ったままだったね…。
えっと…カノンちゃんがなかなか目を覚まさないなと思っていたら、急に苦しそうにうなされたから、とっさに手を握って、名前を呼んでいたの。」
「…そうでしたか…。いのりちゃんや皆さんの呼びかけのおかげで、苦しい夢から覚める事が出来ましたわ。ありがとうございます。」
カノンの笑顔に、皆は安心したように優しい笑顔を向けた。
空気が重いものから和やかなものに変わり、結の提案で皆は夕食を食べる事になり、各々が美桜の部屋からダイニングテーブルへと移動した。
その間、原さんや峰岸君は家に連絡を入れ、帰りが遅くなる事を伝えた。
カノンは皆が部屋から出て行ったのを確認し、制服から部屋着へと着替えを始めた。
その頃、美桜の部屋の外では、ダイニングテーブルに向かいながら要と峰岸君が会話をしていた。
「……あの…要さん…。」
「んだよ。」
「……この間は…言い過ぎました。」
「…この間?…何かあったか?」
「えっと…美桜ちゃんの名前呼び…背中を押してくれた時です。」
「………あったか?そんな事…。つーか、もう名前呼びしてんのかよ、生意気な。」
「……。(…要さんが背中押してくれたのに…。素直じゃないんだな…でも、やっぱり、優しい人なんだな。)」
「…妹が笑ってんなら、それでいい。……俺は…そういうの、へたくそだから…。
癪だが、お前になら任せられる。
……だがな!!まだ、『お兄さん』なんて呼ぶんじゃねぇぞ!!それだけはまだ許さねぇし、認めねぇ!!
あと、今日は俺が夕食を作ったから、有り難く食え!!
それで一応チャラだ!!!」
要は不器用な優しさで峰岸君を気遣い、峰岸君もその気持ちが伝わり、笑顔で意気揚々とダイニングテーブルに向かっていった。
原さんはその様子を安心したような、楽しそうな表情で見ていた。
「…皆さん…ここは…わたくし…学校の廊下にいたはずでは…。」
カノンは状況を把握しようと体を起こし、空いている手をおでこに当て、記憶を思い起こした。
そんなカノンの疑問に原さんが事のいきさつを説明した。
「そう…でしたの…ご心配お掛けしました…申し訳ありません。」
「ううん、カノンちゃんが無事でよかったよ。あれから4時間も目を覚まさないからほんと、心配した。」
原さんとカノンのやり取りを見守っていた峰岸君が、原さんの後ろの方から身を乗り出し、眉を下げ、申し訳なさそうにカノンに声を掛けた。
「……カノンさん…ごめんね…。僕が、からかうなんてしなければ、こんな事には…。」
「…いいえ、雅君のせいではありませんわ。
……おまじないの力が…弱まっていると思うのです…。
以前、占いをされる方に…そう言われました。」
「それ…美桜ちゃんも言ってた。」
峰岸君や原さん、カノンが三人で会話している中に、それまで離れた場所に座って様子を見守っていた要や結、徹も会話に加わるため、ベッド横の空いてる場所に腰を下ろした。
「力が弱まっているとは…どういう事だよ…。それ…この先…どうなるんだ。
二人とも…大丈夫なのか…。」
「……どうなるかは…わかりません…。
ただ…力が弱まっている理由は…回数制限や…おまじないをする時の気持ちの問題のようです。
おまじないの本を解読している時に、ある程度把握はしていますの。」
「……そうか…。」
カノンの言葉に肩を落とす要。
要と同様に結や徹も肩を落とし、沈んだ顔で俯いた。
重い空気の中、口を開いたのは原さんだった。
「……今…カノンちゃんがこうやって倒れたという事は…カノンちゃんの国にいる、美桜ちゃんも同じような事が起きてる…と言うのは、考えられないのかな?
だって、二人とも…運命共同体なんでしょ?」
「……たしかに…。
わたくし、体調が悪くなったりした際は、おまじないを唱えて欲しいとお手紙を書きましたわ。
……今回は…危うく夢に閉じ込められそうになりましたが、きっと…大丈夫ですわ。
もし、わたくしと同じ事が美桜さんにも起こっているのなら、ものすごく、頭の回る方ですから、何かしら行動すると思うのです。
二度と目を覚まさない、夢に閉じ込められる…そんな事にはならないと思います。
と、言いますか、そんな事にはさせませんわ。
今は…大切な人達がいますから…。
きっと、美桜さんも同じ思いですわ。」
カノンは、沈んだ表情を浮かべている皆の顔を真っ直ぐに見ながら、力強く伝えた。
そのカノンの言葉に、俯いていた顔を上げ、全部の不安は拭いきれなくても、幾分か安心したような表情に戻った。
「……そういえば…いのりちゃん、いまだに手を握ってくれていますが……。」
カノンは目覚める前に手を掴まれた感覚がしたが、実際に原さんに手を握られており、それは今現在も握られていた為、手に視線を向けながら、原さんに声を掛けた。
「うわぁ!ご、ごめんね!私、ずっと、握ったままだったね…。
えっと…カノンちゃんがなかなか目を覚まさないなと思っていたら、急に苦しそうにうなされたから、とっさに手を握って、名前を呼んでいたの。」
「…そうでしたか…。いのりちゃんや皆さんの呼びかけのおかげで、苦しい夢から覚める事が出来ましたわ。ありがとうございます。」
カノンの笑顔に、皆は安心したように優しい笑顔を向けた。
空気が重いものから和やかなものに変わり、結の提案で皆は夕食を食べる事になり、各々が美桜の部屋からダイニングテーブルへと移動した。
その間、原さんや峰岸君は家に連絡を入れ、帰りが遅くなる事を伝えた。
カノンは皆が部屋から出て行ったのを確認し、制服から部屋着へと着替えを始めた。
その頃、美桜の部屋の外では、ダイニングテーブルに向かいながら要と峰岸君が会話をしていた。
「……あの…要さん…。」
「んだよ。」
「……この間は…言い過ぎました。」
「…この間?…何かあったか?」
「えっと…美桜ちゃんの名前呼び…背中を押してくれた時です。」
「………あったか?そんな事…。つーか、もう名前呼びしてんのかよ、生意気な。」
「……。(…要さんが背中押してくれたのに…。素直じゃないんだな…でも、やっぱり、優しい人なんだな。)」
「…妹が笑ってんなら、それでいい。……俺は…そういうの、へたくそだから…。
癪だが、お前になら任せられる。
……だがな!!まだ、『お兄さん』なんて呼ぶんじゃねぇぞ!!それだけはまだ許さねぇし、認めねぇ!!
あと、今日は俺が夕食を作ったから、有り難く食え!!
それで一応チャラだ!!!」
要は不器用な優しさで峰岸君を気遣い、峰岸君もその気持ちが伝わり、笑顔で意気揚々とダイニングテーブルに向かっていった。
原さんはその様子を安心したような、楽しそうな表情で見ていた。
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