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最後の異世界生活~カノン編~

~美桜の手紙~

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カノンと一ノ瀬家、峰岸君や原さんがともに食卓を囲み夕食を終えた後、峰岸君と原さんをカノンと、かなめが送っていった。


翌日。
カノンは学校へ行く支度をしてリビングまで下りたが、ゆいが二日も目を覚まさなかった事を心配し、大事をとって今日一日家でゆっくりするように伝えた。

カノンは大丈夫と言いかけたが、美桜の体を借りている身の為、ゆいを心配させまいと、家で大事をとる事を決めた。

「……さて…どうしましょう…。朝ごはんは食べましたし、部屋着にも着替えました。心配掛けないようにと、学校はお休みする事になりましたし………勉強しましょう。明日から通う、学校の授業について行けるように。」

カノンは美桜の部屋の本棚や勉強机に近づき、カノンがこの世界で最後に勉強した痕跡を探した。

「………ありましたわ…。さすが、美桜さん…お勉強した冊子、全て残してありますわ。助かりました。」

カノンは見つけた冊子を手に勉強机に向かい、冊子と一緒に見つけた白紙のルーズリーフ用紙にペンを走らせ、勉強を始めた。

数時間後、休憩をはさみながら行っていた勉強も一段落し、時計を見ると時刻はお昼を過ぎており、カノンのお腹も丁度空いてきた頃だった。

「……もう少しで美桜さんがこの間まで勉強をした所までたどり着きますわ…。ですが…お腹も空いてきました…。腹が減っては…えぇっと…戦い…いえ…いくさ…と読むのですよね。腹が減っては…戦は…で…でき…できん…?んー…ぬ?あ!そうですわ!腹が減っては戦はできぬ…ですわ!!…………今後使い道がある言葉でしょうか。……自問自答している場合ではありませんわね、下におりましょう。」

カノンは勉強をしていた手を止め、美桜の部屋から出て、台所に向かった。

ゆいお母様が、冷蔵庫の中は好きに使っていいとおっしゃってました…。何にしましょうか…。朝食に食べた白米は残ってますし………塩おにぎりにしましょう。」

カノンは食器や道具を揃え、手を洗い、濡れた左手に塩をちょっとだけ塗り、炊飯器に入っていた白米を少量手に取り、両手で握り器に盛り付けていった。
昼食の準備を終えたカノンは器を手に持ち、リビングのソファに座り、テレビを付けて、自分で握ったおにぎりを黙々と食べながら、ぼんやりとテレビを見ながら考え事をしていた。

『お昼のニュースです。今日のニュースアップは―――。』

「(この後は…美桜さんの日記を僭越ながら拝見して……勉強はまたしますが、少し体を動かして…筋肉のトレーニングも少ししましょう。明日から学校生活が始まりますが、空手の部活とお教室が始まりますもの。目標の実現に向けて、少しでも行動しなければ。………あ…お昼のニュース…どの国も、セクハラやパワハラ…ひどいですわね。この大人……許せません…。けど…この国で、わたくしに出来る事…何があるのでしょうか。)」

カノンはテレビで流れたニュースと、自分の国を重ねた。
おにぎりを全て食べ終えたカノンは、テレビを消し、座っていたソファから立ち上がり、シンクに向かった。

器を洗い終わったカノンは、美桜の部屋に戻り、美桜の日記を探した。

美桜の日記は勉強机に立てられてあり、カノンは遠慮がちに日記を手に取り、開いた。
カノンが開いたページに薄いピンク色の封筒が挟まっていた。
その封筒には『カノンさんへ』とカノンの国の文字で書かれており、カノンは封の中を開き、中から紙を取り出し、読み上げた。

『カノンさんへ

お手紙にするのは初めてで、なんだか恥ずかしい思いです。

入れ替わった事は驚きましたが、カノンさんのおかげで家族との距離…縮められました。ありがとうございます。

いろいろありましたが…詳細は、日記に書いてありますので、そちらをご覧ください。

あと…カノンさんに謝らないといけない事があります。

カノンさんの世界で、やり残した事があります。

その為に入れ替わる事…お体を借りる事を許して欲しいです。

家族と距離が縮み、好きな人とも結ばれて、日々の生活が順風満帆に事が進み始めたのですが、やはりカノンさんの世界の事が頭から離れません。

この世界での事が中途半端なのは重々承知で、考えに考えた結果、おまじないを唱える事にしました。

カノンさんが始めた空手も、私なりに出来る事をしたのですが、結果が思うように出せていないです。

がっかりさせたならすみません。

この世界での生活で不慣れな事も多いとは思いますが、どうか、この世界での生活…お任せしたいです。

こんなお願い、おかしいかもしれませんが、どうか…お願いします。

それと、占い師さんに会う機会がありまして、入れ替わる力が弱くなっていると言われました。

もし、体調が悪くなった時などは無茶しないでください。どうかご武運を。

美桜より』

「(美桜さんの字…可愛らしい字で…わたくしの国の文字も使ってくれて…。こんなに嬉しいお手紙は初めてですわ。お手紙を書く事も、占い師さんに言われた事も…本当に同じですわね。美桜さん…託された事…やり遂げます。お任せください。)」

カノンは美桜の手紙を読み終え、便箋を握りしめながら、決意を固くし、胸に刻んだ。
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