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~元に戻ったカノンの生活編 Chapter2~
~ヤキモチ~
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――バルコニー
カノンは挨拶が長く続いた事もあり、バルコニーで風にあたり休憩をしていると、何人かのご令息に声を掛けられ、しばし会話をしていた。
中には好意を持っている者もいるようでお見合いやお茶会などの話が出始めた。
さすがのカノンも好意を持つ者の多さに圧倒されたじろぐが、表に出ないように冷静に笑顔で対応した。
「(……まさかこの場でこんなにもお見合いの話を持ってこられるとは…。それに…明らかに口説いてる方もいましたわ…。今の方々には丁重に断りのお返事を書かなくては…。殿下にも挨拶まだですし…探しに戻りましょう。)」
カノンはご令息達からのアプローチが落ち着き再びパーティー会場に戻りライラックの姿を探し始めた。
会場内を見渡しながら探していると令嬢友達のアイリスと出合い、挨拶を交わしライラックの事を訪ねた。
アイリスは気まずそうに人だかりを指さして教えてくれた。
だが、アイリスが指さした人だかりと言うのは女性ばかりで、カノンが疑問に思いながら目を凝らしてみると、女性達に囲まれ笑顔で対応しているライラックの姿があった。
「…なんだか…楽しそうですわね。」
「殿下…私達の前では軽い感じだけれど、身分や見た目、物腰も柔らかいので人気なんですよ…。挨拶がまだだったのですよね。わたくしも協力しますので殿下のもとへ参りましょう。」
「……えぇ…ご協力…ありがとうございます。(他のご令嬢とあんなに…。)」
カノンはやや呆けた状態でアイリスと会話し、アイリスの協力のもとライラックに近づいた。
「皆様、ごきげんよう。カノン様が殿下にご挨拶がまだとの事で少し殿下を解放して頂けないかしら。それに…お忙しい身分の殿下をあまり独占しているのもよろしくないですわ。ほどほどにしてくださいまし。」
爵位の高いアイリスの言葉にライラックを囲んでいた令嬢達は渋々挨拶をしてその場を去って行った。
その場に三人だけ残り、ライラックは助かったとアイリスにお礼を伝えた。
お礼を聞いたアイリスはごゆっくりと挨拶をしてその場を去り二人だけにした。
カノンは先ほどまで抱いていた感情を考えながらライラックに挨拶をする。
カノンの口から出た挨拶はいつもと違い少しだけ冷たく淡々としており、挨拶を終えたカノンはライラックの顔をまともに見れず下を向いた。
「カノン嬢?……少しいつもと様子が違うようだけど…パーティーに疲れてしまったかい?どこかで休む?…何か飲み物を…。」
「………そんな風に…他の子にも優しいのですか。」
「え……今…何て…」
「…はっ…いいえ、何でもありませんわ!申し訳ありません、失礼致します。(失言ですわ!あんな事言うなんて!)」
ライラックの優しさにカノンは他の子にも優しく接しているのかと考えると胸を掴まれるような感覚を抱き、小さい声で心の声がこぼれた。
その声をライラックは微かに拾い、カノンはそれに気づき慌ててお辞儀をしライラックに背中を向けて会場を飛び出した。
「(わたくし…なぜあのような事を…なぜあんな感情を…。)」
「カノン嬢!待って!」
カノンが会場を飛び出し、行く当てもなく王宮の廊下を走っていると、後ろから追いかけてきたライラックに名前を呼ばれ、カノンに追いついた彼に腕を掴まれ二人は立ち止まった。
カノンは振り返り俯きながらライラックの腕を優しく振り払う。
「やっと…はぁ…追いついた…君…そのヒールで…走るの早いよ…はぁ…。」
「……殿下…急に会場を飛び出した事は謝罪致します。ですが…殿下は会場に早くお戻りくださいまし…。」
「…君を残して戻れないよ。一緒に戻ろう?」
ライラックに会場に戻る事を促すカノンだが、ライラックはカノンに一緒に戻る事を伝える。
その優しさに先ほどの女性に囲まれたライラックの姿がカノンの頭をよぎり、俯いたまま頭を左右に小さく振り会場に戻りたくはないと伝えた。
その様子にライラックはカノンの顔を覗き込み声を掛ける。
「…カノン嬢?会場で何かあったのかい?何か…気に障るような事したかな?」
「なんでも…ありませんわ…。本当に…何も…。」
「何でもないように見えないよ。言ってくれないとわからない事もある。何があったの?カノン嬢?」
ライラックはカノンが何故会場に戻りたくないのか理由を聞こうと優しく接し、カノンの左頬に自身の右手を伸ばし触れようとした刹那、カノンに振り払われた。
カノンはライラックに優しくされる度に切ない感情から怒りの感情に次第に変わっていった。
「…優しくしないでくださいまし。他の子に優しくした後に…わたくしにその優しさを向けないでください。」
「……カノン嬢…それは…ヤキモチ?」
「?!ちっ…違いますわ!断じてそのようなものではありません!殿下の優しさは煩わしいのです!わたくしの事は…ほっといてくださいまし!」
カノンは怒りの感情と図星を突かれ本気ではない言葉を勢いで伝えてしまい、気付いた時には遅く、ライラックの顔は一瞬驚いた顔をしたがすぐに寂しそうに微笑んだ。
「僕は…さっき君が他のご令息達に囲まれている時、ヤキモチを焼いたよ。僕は基本、誰にでも優しいわけではないよ。君だから優しくするんだ。それも必要なかったみたいだね。僕は先に戻ってるから。」
カノンが否定する間もなくライラックは寂しそうに、だが最後の方は淡々とした様子で伝え踵を返し、カノンをその場に残して会場に戻っていった。
「(……どうして…こうなってしまうの…変わったつもりでいて…何も変わってないわ…。本当は…ヤキモチ…なんですの。)」
カノンは去って行くライラックの背中を見ながら左頬に静かに一筋の涙を流した。
カノンは挨拶が長く続いた事もあり、バルコニーで風にあたり休憩をしていると、何人かのご令息に声を掛けられ、しばし会話をしていた。
中には好意を持っている者もいるようでお見合いやお茶会などの話が出始めた。
さすがのカノンも好意を持つ者の多さに圧倒されたじろぐが、表に出ないように冷静に笑顔で対応した。
「(……まさかこの場でこんなにもお見合いの話を持ってこられるとは…。それに…明らかに口説いてる方もいましたわ…。今の方々には丁重に断りのお返事を書かなくては…。殿下にも挨拶まだですし…探しに戻りましょう。)」
カノンはご令息達からのアプローチが落ち着き再びパーティー会場に戻りライラックの姿を探し始めた。
会場内を見渡しながら探していると令嬢友達のアイリスと出合い、挨拶を交わしライラックの事を訪ねた。
アイリスは気まずそうに人だかりを指さして教えてくれた。
だが、アイリスが指さした人だかりと言うのは女性ばかりで、カノンが疑問に思いながら目を凝らしてみると、女性達に囲まれ笑顔で対応しているライラックの姿があった。
「…なんだか…楽しそうですわね。」
「殿下…私達の前では軽い感じだけれど、身分や見た目、物腰も柔らかいので人気なんですよ…。挨拶がまだだったのですよね。わたくしも協力しますので殿下のもとへ参りましょう。」
「……えぇ…ご協力…ありがとうございます。(他のご令嬢とあんなに…。)」
カノンはやや呆けた状態でアイリスと会話し、アイリスの協力のもとライラックに近づいた。
「皆様、ごきげんよう。カノン様が殿下にご挨拶がまだとの事で少し殿下を解放して頂けないかしら。それに…お忙しい身分の殿下をあまり独占しているのもよろしくないですわ。ほどほどにしてくださいまし。」
爵位の高いアイリスの言葉にライラックを囲んでいた令嬢達は渋々挨拶をしてその場を去って行った。
その場に三人だけ残り、ライラックは助かったとアイリスにお礼を伝えた。
お礼を聞いたアイリスはごゆっくりと挨拶をしてその場を去り二人だけにした。
カノンは先ほどまで抱いていた感情を考えながらライラックに挨拶をする。
カノンの口から出た挨拶はいつもと違い少しだけ冷たく淡々としており、挨拶を終えたカノンはライラックの顔をまともに見れず下を向いた。
「カノン嬢?……少しいつもと様子が違うようだけど…パーティーに疲れてしまったかい?どこかで休む?…何か飲み物を…。」
「………そんな風に…他の子にも優しいのですか。」
「え……今…何て…」
「…はっ…いいえ、何でもありませんわ!申し訳ありません、失礼致します。(失言ですわ!あんな事言うなんて!)」
ライラックの優しさにカノンは他の子にも優しく接しているのかと考えると胸を掴まれるような感覚を抱き、小さい声で心の声がこぼれた。
その声をライラックは微かに拾い、カノンはそれに気づき慌ててお辞儀をしライラックに背中を向けて会場を飛び出した。
「(わたくし…なぜあのような事を…なぜあんな感情を…。)」
「カノン嬢!待って!」
カノンが会場を飛び出し、行く当てもなく王宮の廊下を走っていると、後ろから追いかけてきたライラックに名前を呼ばれ、カノンに追いついた彼に腕を掴まれ二人は立ち止まった。
カノンは振り返り俯きながらライラックの腕を優しく振り払う。
「やっと…はぁ…追いついた…君…そのヒールで…走るの早いよ…はぁ…。」
「……殿下…急に会場を飛び出した事は謝罪致します。ですが…殿下は会場に早くお戻りくださいまし…。」
「…君を残して戻れないよ。一緒に戻ろう?」
ライラックに会場に戻る事を促すカノンだが、ライラックはカノンに一緒に戻る事を伝える。
その優しさに先ほどの女性に囲まれたライラックの姿がカノンの頭をよぎり、俯いたまま頭を左右に小さく振り会場に戻りたくはないと伝えた。
その様子にライラックはカノンの顔を覗き込み声を掛ける。
「…カノン嬢?会場で何かあったのかい?何か…気に障るような事したかな?」
「なんでも…ありませんわ…。本当に…何も…。」
「何でもないように見えないよ。言ってくれないとわからない事もある。何があったの?カノン嬢?」
ライラックはカノンが何故会場に戻りたくないのか理由を聞こうと優しく接し、カノンの左頬に自身の右手を伸ばし触れようとした刹那、カノンに振り払われた。
カノンはライラックに優しくされる度に切ない感情から怒りの感情に次第に変わっていった。
「…優しくしないでくださいまし。他の子に優しくした後に…わたくしにその優しさを向けないでください。」
「……カノン嬢…それは…ヤキモチ?」
「?!ちっ…違いますわ!断じてそのようなものではありません!殿下の優しさは煩わしいのです!わたくしの事は…ほっといてくださいまし!」
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「僕は…さっき君が他のご令息達に囲まれている時、ヤキモチを焼いたよ。僕は基本、誰にでも優しいわけではないよ。君だから優しくするんだ。それも必要なかったみたいだね。僕は先に戻ってるから。」
カノンが否定する間もなくライラックは寂しそうに、だが最後の方は淡々とした様子で伝え踵を返し、カノンをその場に残して会場に戻っていった。
「(……どうして…こうなってしまうの…変わったつもりでいて…何も変わってないわ…。本当は…ヤキモチ…なんですの。)」
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