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第19章:母親
13話
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「で、あんた。息子と暮らし何がしたいの? 彼氏が息子を殴るところを見たいとか? 今の裕也君じゃ、返り討ちにしちゃうだろうけれどね」
「でも、それを見ながらセックス出来るんでしょ? いい趣味してるねー」
明日香と百合根は追撃を止めることなく、さらに母親を責める。母親は泣き出し、無言になってしまった。
「泣けば許されると思ってるんじゃねーぞ? お前、俺が子供の時にそう言ったよな。その言葉、そっくりそのまま返すよ」
優菜はここまで完膚なきまでに自分を否定されるとは思っていなかったのだろう。泣いたまま顔をあげようとすらしない。百合根や明日香は優菜の昔の姿を知っているからともかく、真由美と素華は話でしか彼女の所業を聞いておらず、さすがにちょっと言い過ぎたろうか? さすがにかわいそうではないだろうか? と、少し心配そうな顔をしている。
もちろん、裕也や明日香がつまらない嘘をつくとは思っていないのだが、それでも。部外者の自分まで便乗して相手を罵倒することは、想像以上に罪悪感が湧くものであった。
優菜はずっと黙っている。そのまま、衝動的に飛び出して何かをやらかさないかと心配になるくらいの様子だが、怖いくらいに動きがない。相変わらず、裕也の視線は実の親を見ているというのに親の仇でも見るかのようだ。重すぎる沈黙から逃げ出したい雰囲気の中、ようやく優菜が沈黙が破る。
「どうして……どうしてあんたは、愛されてるのよ! 私には何もない! 誰も愛してくれなかったのに……」
「知らねーよ。お前は愛してほしいばっかりで、相手のことを愛していねーからだろ。そんな奴を誰が愛するんだ? わかったらとっとと帰れ。大人のお店で客でも取って金を稼いでろ」
いくらなんでも口が悪すぎじゃないかと思うくらいに裕也は母親を罵倒する。
「五月蠅い! 恵まれてるくせに! 勝手なことを言うな! バーカ!」
耐え切れなくなった優菜は、涙を流しながらハンドバッグを手に取ると、逃げるように社務所を後にする。
「息子に向かって馬鹿、か。まぁ、この状況じゃそうも言いたくなるかもしれないが……はぁ。これでもう、俺んところには来ないだろ」
その後ろ姿を追うこともなく、裕也は一息ついて椅子に座る。
「言いたいこと言いまくったけれど、素直に退散してくれたよかった」
「確かに。面の皮が厚い奴だと、どれだけ自分が悪いとわかり切っているような状況でもごねるからね。多重債務者とか、自分が借りた癖に開き直る奴がいてさー、そういう感じじゃなくって良かったよ」
明日香と百合根も一息ついているが、その様子を見て、真由美はたまらず優菜のことを追おうとする。
「真由美……追うのか?」
その後ろ姿に裕也が尋ねる。
「……はい。三橋先輩のいうことが本当だとしたら、確かにあの人がしたことは許せないのは分かります。ただ、その……ちょっと、あまりにも可哀そうで。なんか、最後に言った恵まれてるっていう言葉が……すごく、引っかかって……」
「まぁ、言いたくはないが、恵まれてるのは事実だしな……何をする気かわからないけれど、追うなら好きにしろよ、真由美」
真由美の発言が何か痛いところを突いたのだろう裕也は、ため息をつきながらも、真由美に好きな行動を許す。
「はい、好きにします!」
言われた通りに真由美は好きにすることにした。裕也は古々に視線をやる。
「でも、それを見ながらセックス出来るんでしょ? いい趣味してるねー」
明日香と百合根は追撃を止めることなく、さらに母親を責める。母親は泣き出し、無言になってしまった。
「泣けば許されると思ってるんじゃねーぞ? お前、俺が子供の時にそう言ったよな。その言葉、そっくりそのまま返すよ」
優菜はここまで完膚なきまでに自分を否定されるとは思っていなかったのだろう。泣いたまま顔をあげようとすらしない。百合根や明日香は優菜の昔の姿を知っているからともかく、真由美と素華は話でしか彼女の所業を聞いておらず、さすがにちょっと言い過ぎたろうか? さすがにかわいそうではないだろうか? と、少し心配そうな顔をしている。
もちろん、裕也や明日香がつまらない嘘をつくとは思っていないのだが、それでも。部外者の自分まで便乗して相手を罵倒することは、想像以上に罪悪感が湧くものであった。
優菜はずっと黙っている。そのまま、衝動的に飛び出して何かをやらかさないかと心配になるくらいの様子だが、怖いくらいに動きがない。相変わらず、裕也の視線は実の親を見ているというのに親の仇でも見るかのようだ。重すぎる沈黙から逃げ出したい雰囲気の中、ようやく優菜が沈黙が破る。
「どうして……どうしてあんたは、愛されてるのよ! 私には何もない! 誰も愛してくれなかったのに……」
「知らねーよ。お前は愛してほしいばっかりで、相手のことを愛していねーからだろ。そんな奴を誰が愛するんだ? わかったらとっとと帰れ。大人のお店で客でも取って金を稼いでろ」
いくらなんでも口が悪すぎじゃないかと思うくらいに裕也は母親を罵倒する。
「五月蠅い! 恵まれてるくせに! 勝手なことを言うな! バーカ!」
耐え切れなくなった優菜は、涙を流しながらハンドバッグを手に取ると、逃げるように社務所を後にする。
「息子に向かって馬鹿、か。まぁ、この状況じゃそうも言いたくなるかもしれないが……はぁ。これでもう、俺んところには来ないだろ」
その後ろ姿を追うこともなく、裕也は一息ついて椅子に座る。
「言いたいこと言いまくったけれど、素直に退散してくれたよかった」
「確かに。面の皮が厚い奴だと、どれだけ自分が悪いとわかり切っているような状況でもごねるからね。多重債務者とか、自分が借りた癖に開き直る奴がいてさー、そういう感じじゃなくって良かったよ」
明日香と百合根も一息ついているが、その様子を見て、真由美はたまらず優菜のことを追おうとする。
「真由美……追うのか?」
その後ろ姿に裕也が尋ねる。
「……はい。三橋先輩のいうことが本当だとしたら、確かにあの人がしたことは許せないのは分かります。ただ、その……ちょっと、あまりにも可哀そうで。なんか、最後に言った恵まれてるっていう言葉が……すごく、引っかかって……」
「まぁ、言いたくはないが、恵まれてるのは事実だしな……何をする気かわからないけれど、追うなら好きにしろよ、真由美」
真由美の発言が何か痛いところを突いたのだろう裕也は、ため息をつきながらも、真由美に好きな行動を許す。
「はい、好きにします!」
言われた通りに真由美は好きにすることにした。裕也は古々に視線をやる。
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