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第18章:居場所になる
27話
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一連の騒ぎが収まったところで、裕也と古々は自宅に帰り、ベッドの上に寝転がりながらナツキ救出の状況を振り返る。
『真由美ちゃんは強いわね』
「強いな……でも、あの強さはなんというか、危ない。自己犠牲が過ぎるよ……でも、もしも俺達がナツキちゃんの両親を殴って終わらせていたら……同じ結果になったかな? 何と言うか、母親は今まで通り異常な感じだったが、父親は何だか目が覚めていたような気がする……ベルトで真由美を叩いていたときとか、めっちゃ弱弱しかったし、それにわざと6回打って、俺が殴るように仕向けていたように見えた」
『実際その通りよ。父親は正気を取り戻したようで、罪悪感に押しつぶされそうだった……その罪悪感を少しでも和らげるように自らを罰したのね。真由美ちゃんが体を張って、「心の痛み」を証明したおかげで。
あなたの言う通り、もしもシンプルに殴って両親を成敗していたら……今でも父親は母親と同じ態度だったのかもしれない。真由美ちゃんの英断、ね』
「……あんな危ない事、してほしくないけれどな。背中とは言え、傷が残るだろ」
『綺麗な背中よりも大事なものを守ろうとしたのよ、彼女は……褒めてあげましょう』
「そうするべきなんだろうけれどさ」
はぁ、と裕也はため息をつく。
「俺はあいつを止めるべきなのか、それともあいつのやりたいようにやらせておくべきなのか、わからねえよ」
『私にもわからない。死ななければ、傷害が残らなければ、やりたいようにやらせちゃってもいいかもしれないけれど。でも、何か間違って死んじゃう可能性もあると考えると、ちょっとね……危なっかしい。でもさ、あの子がそんなに危なっかしいことができるのは、あなたを信用しているからよ? あなたがあの場にいて、もしものことがあれば全力で守ってくれる。そう確信しているから、あの子は体を張れる……あの子が無茶しちゃうのは、あなたのせいなんだから、責任取りなさいな』
「確かに、真由美を危ない目に合わせたくなければ、俺が仇を取るなんて言わずに前に出ればいいだけの話だもんな。俺のせいって言われても否定できないか」
古々の言う通りだ、と裕也は苦笑する。
「責任、とらなきゃ、か」
そんなことを言われてもどうすればいいんだ、と裕也はため息をついた。
そのまま、しばらくの沈黙。
『ナツキちゃんさ、あんな状況だから不安定だと思う。あなた達に心のケアをしてほしいのと……それでもだめだったら、その……いつかあなたにそうしたように、私があの子の守護霊になるって言うのは、どうかな? いますぐにじゃないけれど』
「お前が、ナツキの守護霊に?」
裕也は驚きオウム返しをする。しばらくそのまま古々と自分の関係を振り返ってみたが、確かに、古々がいたおかげで自分は自分を見つめなおすことが出来たような気もする。家族が欲しくて、一人ぼっちの部屋が寂しくて、だからここを家に連れて帰ったとき、内心は嬉しさを抑えきれなかった。でも、今は明日香や百合根だけじゃない、素華や真由美、アキラなんかもいてくれる。
古々が別の誰かの守護霊になったとして、今すぐいなくなるわけじゃない。
「まぁ、いいんじゃないのか?」
寂しいが、守護霊とは守られるべき者に憑いてあげるべきだ。自分が守られるべき者でなくなったというのなら、それを受け入れるべきだろう。
「今度はあの子を守ってやれよ。ナツキちゃんを導いてやってくれ」
『うん……ありがとう』
古々も裕也も複雑な気分だ。しかし、考えていることは鏡写しのようで同じこと。『子離れってこんな感じなのかな?』『一人立ちって、こういうことなのかな?』というものだった。
『真由美ちゃんは強いわね』
「強いな……でも、あの強さはなんというか、危ない。自己犠牲が過ぎるよ……でも、もしも俺達がナツキちゃんの両親を殴って終わらせていたら……同じ結果になったかな? 何と言うか、母親は今まで通り異常な感じだったが、父親は何だか目が覚めていたような気がする……ベルトで真由美を叩いていたときとか、めっちゃ弱弱しかったし、それにわざと6回打って、俺が殴るように仕向けていたように見えた」
『実際その通りよ。父親は正気を取り戻したようで、罪悪感に押しつぶされそうだった……その罪悪感を少しでも和らげるように自らを罰したのね。真由美ちゃんが体を張って、「心の痛み」を証明したおかげで。
あなたの言う通り、もしもシンプルに殴って両親を成敗していたら……今でも父親は母親と同じ態度だったのかもしれない。真由美ちゃんの英断、ね』
「……あんな危ない事、してほしくないけれどな。背中とは言え、傷が残るだろ」
『綺麗な背中よりも大事なものを守ろうとしたのよ、彼女は……褒めてあげましょう』
「そうするべきなんだろうけれどさ」
はぁ、と裕也はため息をつく。
「俺はあいつを止めるべきなのか、それともあいつのやりたいようにやらせておくべきなのか、わからねえよ」
『私にもわからない。死ななければ、傷害が残らなければ、やりたいようにやらせちゃってもいいかもしれないけれど。でも、何か間違って死んじゃう可能性もあると考えると、ちょっとね……危なっかしい。でもさ、あの子がそんなに危なっかしいことができるのは、あなたを信用しているからよ? あなたがあの場にいて、もしものことがあれば全力で守ってくれる。そう確信しているから、あの子は体を張れる……あの子が無茶しちゃうのは、あなたのせいなんだから、責任取りなさいな』
「確かに、真由美を危ない目に合わせたくなければ、俺が仇を取るなんて言わずに前に出ればいいだけの話だもんな。俺のせいって言われても否定できないか」
古々の言う通りだ、と裕也は苦笑する。
「責任、とらなきゃ、か」
そんなことを言われてもどうすればいいんだ、と裕也はため息をついた。
そのまま、しばらくの沈黙。
『ナツキちゃんさ、あんな状況だから不安定だと思う。あなた達に心のケアをしてほしいのと……それでもだめだったら、その……いつかあなたにそうしたように、私があの子の守護霊になるって言うのは、どうかな? いますぐにじゃないけれど』
「お前が、ナツキの守護霊に?」
裕也は驚きオウム返しをする。しばらくそのまま古々と自分の関係を振り返ってみたが、確かに、古々がいたおかげで自分は自分を見つめなおすことが出来たような気もする。家族が欲しくて、一人ぼっちの部屋が寂しくて、だからここを家に連れて帰ったとき、内心は嬉しさを抑えきれなかった。でも、今は明日香や百合根だけじゃない、素華や真由美、アキラなんかもいてくれる。
古々が別の誰かの守護霊になったとして、今すぐいなくなるわけじゃない。
「まぁ、いいんじゃないのか?」
寂しいが、守護霊とは守られるべき者に憑いてあげるべきだ。自分が守られるべき者でなくなったというのなら、それを受け入れるべきだろう。
「今度はあの子を守ってやれよ。ナツキちゃんを導いてやってくれ」
『うん……ありがとう』
古々も裕也も複雑な気分だ。しかし、考えていることは鏡写しのようで同じこと。『子離れってこんな感じなのかな?』『一人立ちって、こういうことなのかな?』というものだった。
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