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第18章:居場所になる
11話
しおりを挟む「とにかく、躾のために多少の体罰は必要かもしれませんが、それは子供の行いで重大な金額や身体的な損害が出るときだけの話。そんな、くだらないことで殴られる子供の気持ちになったことはあるんですか? そもそもですね、日本には信仰の自由というものがあるんです。子供に信仰を強制するってのは、この子たちの言う通り、憲法違反なんですからね……」
ナツキの怯えた様子や怪我を見て、幸弘は正義感が見過ごせなかったようで、長い説教をしている。結局、自分たちで何とかするよりもこうして警察を嗾けるののが一番早い。高校生の若造に対する態度からは一転、委縮した両親を見ながら、真由美は自分の父親のことを思い出す。あいつも警察の前では弱弱しいし、反撃を受けないと思っていた相手からの反撃には弱かった。
今回はナツキ自身が反撃したわけではないが、彼女の反抗が巡り巡って反撃となったのだ。これを機に懲りてくれればいいのだが、そううまくはいかないだろうとは皆が思っていた。
「なんというか、今日は通報してくれてありがとう。ほんの一か月前にも子供が虐待死したニュースを見たし、なんというか、あの子もそうなるんじゃないかと思うと……今こうして発見できたのは良かった……けれど」
長い説教を終えた後、対応してくれた幸弘は相撲部のメンバーに向かってそうお礼をする。
「でも、女の子が相手を挑発しちゃだめだ! いや、女の子じゃなくてもダメ! 変に刺激して、相手がナイフとか持ってたら手遅れになるぞ!」
「ほんとそれ……それに助けられたこともあるけれどさ」
幸弘の真由美に対する説教を聞き終えて、裕也は頷きながらそう言った。
「荒事は俺か明日香に任せろよ。今日は押し倒されるだけでよかったが、手をねんざしたり、頭をぶつけて死ぬことだってあるんだからな?」
「……確かに、そうですね」
でも、そうでもしないと、先輩の様に活躍できない。真由美にはそれが辛い。
「警察を呼ぶとき有利にしたかったのはわかるけれどさ」
その有効性は、裕也も気づいていたようだ。それでも、彼は真由美が押し倒された時、ヒヤっとして慌てて助けに入ってしまった。本当はもう少し放置しておくつもりだったのに、である。
「ごめんなさい」
心配そうな顔でそんなことを言われると、さすがにこう返すしかない。反省した様子を見て、裕也は古々のほうを見る。
「あいつら反省してた?」
『……わかってると思うけれど、してない。次は上手くやろうって腹』
「監視しといて」
『了解。今回ばっかりは言われなくとも、よ。振々と交代で報告するわ』
古々は苦笑してナツキ達の家まで憑いていく。不安そうなナツキや両親に憑いていた雑多な悪霊は古々に威圧されて逃げていったが、こんなことくらいでは両親はもう変わらないだろう。もはや両親は悪霊に惑わされる段階はとっくに終わり、自分から沼にはまり込んでしまっている。悪霊を祓ったところで、両親の暴走は止まらないはずだ。
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