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第17章:詐欺の片棒

23話

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 明日香の言葉で話が逸れてしまったので、百合根首を振って気を取り直すと話を続ける。
「ま、でも、この世界からヤクザが一人でも消えるのはいいことだし? 世間の人はヤクザの収入が減ろうがざまぁ見ろって感じだろうし、それはいいことなのよね……はぁ、当事者だと複雑な気分だけれど」
 百合根は愚痴を漏らしながら立ち上がる。
「バトルガールがヤクザとのかかわりから抜けだせたのも、アイドルのプロデューサーが組抜け出来たのも、明日香と裕也のおかげなんだよね?」
「うん、多分。今回、百合根がバトルガールズの悪事を教えてくれなかったら、あの子たちはいまだに詐欺の片棒を担いでいたはずだし……本当に、教えてくれてありがとうね」
「そう、どういたしまして、だね」
 感謝してもらえたというのに、百合根の顔も声も少し悩ましげだ。
「どうしたの? なんか悩み事?」
 その様子が引っかかって明日香が尋ねる。 
「……なんというか、私って父親がヤクザだからさ。人に迷惑をかけながら生きてるなって、そんな感じの負い目を感じてて、ヤクザの力を利用して人助けをするなんてこともしてきたわけだけれど」
「あら、百合根はお金を稼ぐためにいじめとかの困りごとを解決していたわけじゃなくって?」
「それは半分本当だけれど半分嘘よ。照れ隠しというのもあるし? 裕也には話したんだけれどさ、私は人を傷つけたり虐げるのが好きなの……でも、それを一般市民にやったら私が悪者になっちゃうから、悪人を虐げることでその欲求を満たしていてさ。
 でも、例え悪人でも人を虐げるってさ、楽しい反面、全く罪悪感がないわけじゃなくって……あの、デブ。あるぽんだっけ? あいつも、糞野郎とは言え、同じ人間なわけだし、ざまぁみろと思う反面、ちょっとだけ引っかかることもあったわけ。でも今回、私は純粋な人助けを出来ていたような気がしてさ……やっぱりこう、人助けをするときは、誰も苦しまないのが一番だな、とも思ったわけ。厄介な性分だよね、人を虐げることが我慢できないって」
 百合根が少し顔を曇らせながらため息をつく。
「確かに、人を傷つけないのが一番だけれど、百合根のそれは必要悪って奴だよ。むしろ、自分の欲求を健全な方法で消化させているわけだから、いい事じゃないの?」
「健全かなぁ……」
 明日香が手放しで自分を褒めてくれるので、百合根は苦笑しながら頷いた。
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