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第17章:詐欺の片棒

15話

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「よし、それならあれね。事務所、やめましょ」
 一通り話をし終えたところで、明日香はそう言ってカナを驚かせた。
「ちょっと、話聞いてた!? 私達、アイドルをやめたいわけじゃないんだよ!?」
「うん、だからアイドルをやめるとは言ってないでしょ? 事務所をやめるの」
「……そんな、屁理屈みたいな」
「まずは、プロデューサーから会場のオーナーとか、ダンスや歌のトレーナー? とか、衣装デザイナーとかそれぞれの名刺をもらいなさい。プライベートで親交があるなら、今回のことはきちんと話してもいいと思う。それと、貴方たちはアイドル事務所との契約書を持って弁護士に無料相談に行きなさい。なんか色々とやめるときの契約とかあると思うけれど、どれだけぶっちぎって、あと腐れなく辞められるか、弁護士に相談するの」
「あの、明日香先輩……3年の契約を満了せずにアイドルをやめたら違約金を払うって契約書に書いてあるんですけれど……なんで分かったんですか?」
「……勘? っていうか、やっぱりそういうのあるんだ。ふーん……」
 明日香は、ドラマやマンガでアイドルを夢見る少年少女が悪いアイドル事務所にハメられてしまう話を見て、何度かそういう場面を見たことがあるのだが、本当にそんなことがあるものなのか、と苦笑する。
「ちなみにいくら?」
「200万円、です」
「あははははは……はぁ。カナ、それはね、金のなる木……いや、金の卵を産む鶏を逃がさないための、見せかけの罠よ。見せかけの罠だから、実際は罠を踏んでも何も起こらないから大丈夫。でも、弁護士のお墨付きがないと、相手の口車に乗せられちゃう可能性があるから、弁護士を味方につけておいた方がきっとすんなりやめられちゃうよ。えっと……今ちょっと通話しながらパソコンで調べてみたんだけれどさ。労働基準法附則137条には、『期間の定めのある契約を結んだ場合は期間初日から1年を経過すれば、申し出によりいつでも退職できる』って書いてあるし、弁護士に相談してみればいいと思うよ……でもまぁ、私は素人だから、今回の件にそれが通じるかわかんないし、やっぱりプロに任せた方がいいよねー。
 とりあえず、弁護士に相談することは確定。私達の法律知識なんて付け焼刃じゃ役に立たないだろうし、用心棒は必要」
「でも……」
 明日香がどんどん話を進めていくと、カナはさすがについていけなかった。それでも、明日香は突っ走る。
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