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第17章:詐欺の片棒

14話

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 カナは何も言わなかったが、しばらくの沈黙、それが答えのようなものだった。そう、あるんだ、何かが。
「あのさ、明日香先輩は、警察沙汰とか慣れてます?」
「まぁ、人助けをするうえで、警察とか弁護士とかかわったことはあるよ……。もしかして、弁護士が必要な案件だったりする?」
 明日香がそう尋ねると、また長い沈黙を挟んでカナは『うん』と言う。
「私ね……こういうの、なんていうのか知らないけれど、詐欺みたいなことをしてる……。まず、ファンの人に、連絡先の入った紙を渡して、恋人関係になるの。そしたら、事務所の人にデートに行っているところを撮影される。そしたら、事務所の人はこう脅すの……『恋人を作ったのがバレたら違約金30万円だって覚えてるよなぁ?』って……『私はそんな大金払えない』って泣く。あ、30万円ってところは、ファンの懐事情によって、50万だったり、70万だったりする……すると、ファンの人は結構あっさりと払ってくれるの。
 もちろん、私達のために借金をしなさそうな人を選んではいるけれど……そうじゃないとさ、刺されるかもしれないからって……」
「うわぁ……『自分のせいでカナちゃんが苦しんでるなんて!』って罪悪感を植え付けて、それで金を払わせるってわけ? なんというか、その……やばいね」
 百合根から聞いていた話の通りだと、明日香は眉をひそめた。
「シホちゃんもやってる……私達、そうやってファンを騙すようなことは止めたいの。短期的に見れば稼げるかもしれないけれど、こんなことは長期的に見ればファンを減らすだけだし、何より、それだけのことをしても、私達の給料が低いの」
「ふむ?」
「私達だってお金のためにアイドルやっているわけじゃないけれど、そこまでしているのにまともな報酬も支払われないから、ダンスや歌の練習とかも最低限しかできない……プロデューサーは、会場代とかレッスン代はもちろんだけれど、根回しとかワイロ的なものに金を使ってるとかって言ってて、詳しい会計も見せてくれないし……
 そりゃ、私達は世間知らずな高校生だけれど、それでも……少しくらいは社会の仕組みだって習ってる……どうにか、したいんだけれど……」
 一度堰を切ってしまえば、カナからの愚痴は留まるところを知らない。先ほどの恋人商法の他にも、シークレットで下着を売るようなことなど、かなりギリギリを攻めた商売もやっており、そんなことをしても大した実入りがないなどの愚痴も聞かされる。ファンを裏切ることはもちろんだが、あまりにも気持ちの悪いことはやめてほしいというのが彼女の言い分だった。
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