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第17章:詐欺の片棒

11話

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 そうして、完成した新曲PVを改めて見てわかる……二人はダンスの切れこそすさまじいが、顔は化粧をして及第点、歌はまぁまぁといったところで個性がない。
 確かに、ラーメン屋だったら平々凡々、激戦区に店を出していればすぐにつぶれてしまいそうな実力だった。しかし、どちらもすさまじい蹴りを放ち、格闘技の動きをダンスにも取り入れていることから、その味が他とは差別化となり、何とか生き残れているともいえる。
「しかし……なんというか、すごいな。新曲のPVなんて何ヶ月も前から決まっているものだと思ったけれど、こんな突貫工事で進めるだなんて……」
「掛けられるお金も少ないし、会議の時間すらもったいないからって、ウチのチームはそういうかんじなんです。もっとも、売れているチームはもっとお金も時間もかけるそうですが……まぁ、地下アイドルなんてそんなもんですよ」
 まだ、カナが神社を訪ねてきてから二週間しか経ってない。スケジュールも過密で、練習時間も少ししか取れなかったせいもあり、裕也がボコボコにやられるシーンでは割と裕也の耐久力だよりで、防御とか寸止めとか、そういうのが不完全なままに戦うことになってしまったところもある。そのせいか、女性相手と言えど痣が出来る程度にはダメージも受けてしまった。それはつまり、二人の手足にも多少のダメージが残っているというわけで……ハードな仕事である。
 しかし、出来たPVは割といいものだ。まだ一般公開されていないPVをいち早く自宅で見た裕也は、思っていたよりも良い出来栄えに思わず笑みがこぼれた。
『ねえこれ、蹴りが本気で入ってない?』
「寸止め失敗しても俺が耐えるって宣言したからな……さすがにハイキックは手加減してくれたが、ミドルキックは防具と俺の耐久力を信じて割とマジでやってる……」
 編集されたものを古々と一緒に見ることになったが、古々の指摘通り、胴蹴りは寸止めに失敗しているおかげかなかなかに迫力のある蹴りが決まっている。慰謝料込みの出演料を貰った甲斐はあるというわけだ。
『それにしても、明日香ちゃんも裕也も、演技がノリノリねぇ……』
「バトルガールの成功がかかってるから、そりゃ必死にもなるさ」
 PV発表と同時期に行われるトゥモローチャンネルとのコラボ動画もそれなりに客は集まるだろう。ミニスカートから露出した引き締まった美しい生足。そして逞しくも美しい二の腕。戦うアイドルにふさわしい肉体は、トゥモローチャンネルを好む層と需要が噛みあいそうだ。あとは、明日香がトゥモローチャンネルとバトルガールズのコラボ放送を行うその日、何か隠していないかをカナに聞いてみるだけだ。
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