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第17章:詐欺の片棒

5話

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 その後、部員たちはカナも交えつつ昼食を食べ、ダンスの経験やら、相撲部の活動内容やら、色んな事を話した。そして、何故ダンスをしているかも……
「私、アイドルを目指しているんです。駅前にあるライブハウスで地下アイドル的な活動もしてて……それで私、バトルガールズっていう、ユニットを組んでいるんです」
「お、おう……なんか、変わった名前のアイドルだな」
 裕也は苦笑する。
「モチーフはなんと言いますか、日曜日の朝に放送しているプリティでキュアッキュアな女の子で……戦えるアイドルを目指して、活動してるんです」
「なんというか、個性的ですね」
 真由美もどう反応していいか、困りがちに言った。
「でも、変わってるってことは、注目されるってことです。プロデューサー曰く、どんなにおいしい料理でも、それがありふれた品目であれば、良品の一つでしかない。だからゲテモノでも、変わった料理店のほうが客を集められる可能性はあるって……例えば100万人のラーメン好きがいても、ラーメン店が1万件あったら客は平均100人しか来ない。売上げトップの店でも1000人がせいぜいだろう。でも、虫料理や爬虫類の料理に、1000人の愛好者がいて、3件しか店がなければ……」
「333人の客が入ることになりますね。平均で」
 真由美が頷く。
「要するに、そういうことなんです。と、言っても私達の方向性は虫料理程マニアックな自覚はないんですが……。私の相方はキックボクシングを学んでいて……歌う前に、悪のプロデューサーをぶちのめすのが恒例行事なんです。あ、もちろんプロデューサーも素人じゃないし、一応服の下に防具はつけてますし、本気で殺しにかかってるわけじゃないですよ? あくまで、ヒーローショーみたいなノリなんです」
「アイドルやってたのは知ってたけれど、そこまで色物だったのね……でも、キックボクシングに空手かぁ。どっちも打撃主体なのね」
 明日香は苦笑する。アイドル活動のために彼女が入門してきたのは知っている。だが、そのアイドル活動というのがまるでヒーローショーのような寸劇も含まれているというのは、少々以外であった。
「打撃系の技は見栄えがするので、それに……柔道とかレスリングはがっつり組み合うことになっちゃいますし、男性と組みあったらそれは問題でしょう……アイドルなので」
「女同士で組み合えばそれはそれで需要あるんじゃないのか?」
 カナの説明に裕也がそう言うと、周囲の視線が一斉に裕也の方へ向く。
「そうね。私もそういうの好き」
 明日香は微笑みながらそんなことを言ったが、他の皆は苦笑していた。あー、失言したかなこりゃ、と裕也は気まずくなてしまった。
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