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第17章:詐欺の片棒

4話:戦うアイドル

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 そうして、修学旅行に行っていたメンバーが帰ってきたある日の土曜日。今日は受験勉強のために毎日勉強机にかじりついている百合根も、気分転換のためにと相撲部の練習に参加している。どうやらこの百合根という女はこの相撲部をジムか何かと勘違いしているのかもしれないが、それについてはもういうまい。
 今日の食事当番は素華。作るメニューはレタスとツナとエビをふんだんに使用した海鮮チャーハンと、野菜たっぷりのひき肉スープだ。
『おっと、来客だ……普通の参拝じゃない雰囲気の何者かがいるぞ? まぁ、殴り込みではなさそうだ』
 他のメンバーがまだ体を動かしている最中、妙な雰囲気の来客を感じた振々は、そう言って相撲部の注目を促す。
相撲部の視線が注がれたその先にいたのは、どうやら自分たちとあまり変わらない年齢の女性のようであった。
「あらぁ、かーちゃんじゃん。どうしたの?」
 尋ねてきたのは、かーちゃん……明日香の知り合いのようである。
「えっと、紹介するね。この子はかーちゃん……柚木崎 カナゆきざき かなっていう子で……ウチの空手道場の門下生。お父さんにビシバシ鍛えてもらってる仲間なの」
「押忍! ここがうわさに聞いていた相撲部っすね! よろしくお願いします!」
「あ、よろしく。俺は三橋裕也……この相撲部の部員です」
「よろしく。私は木村百合根。かわいい子ね、年下かしら?」
 裕也と百合根がカナに頭を下げる。
「……いや、別に道場で稽古中じゃないんだから押忍とか言わなくてもいいけれど。で、どうしたの?」
「いえ、部活の最中のようなので、待ちます! というか、大事な先輩なのに連絡先の交換すらしていないのが迂闊過ぎたっす!」
「……そうだね。あとで連絡先交換しよっか」
 と、いうわけで、かなえは待つことになったのだが、ただ待つのは暇だったせいか、相撲部も驚きなくらいの柔軟運動をした後、上段蹴りの練習をした。昼食が出来たことを知らせに来た素華も、その蹴りの美しさには思わず見惚れていた。
 なんせ、体がきれいなYの字になるほど足を高く掲げ、その状態でピタリと静止するのだ。下半身の力も体幹も、恐ろしく鍛え上げられている。
「ねぇ、明日香。あの子、空手初めて何年?」
 その仕草があまりにも見事なもので、百合根が明日香に問う。
「まだ1年よ。つっても、あの体は昔っからダンスで鍛えていたから、運動歴は8年くらい……かなりのベテランだよ。ここに入門したその日から上段蹴りは90%くらい出来てたし。型稽古も、経験者以上の精度を一日でマスターするくらい……間違いなく逸材よ」
「……なるほど、納得。やっぱり、ダンスって格闘技なのね」
 あまりに見事な空手の腕前がどうやって培われたか納得して、百合根は頷いた。
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