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第16章:恋心の行方
7話
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そして、放課後。そんな最悪のコンディションだが、自慢するためにアキラは神社へと向かう。傍らには素華もいる。痴漢をしていた男の悲惨なその後を想像しながら、大いに話は盛り上がっていた。
「私初めて催涙スプレーを人にかけたんだけれど……いや、マジで全然目を開けられないんだね。やろうと思えば、私でもあのままぶちのめせたかも」
「室内で使ったら本当にまずいことになってたかもね。いや、俺にかからないでよかった。泣きっ面にハチなんてレベルじゃねえよ」
二人はいつになく話しに盛り上がっており、先に来ていた裕也はその様子を見て不思議そうにそちらを見る。
「どうしたお前ら? なんか今日は仲良さそうじゃないか」
「へへん、聞いて驚いてください!」
裕也に様子がおかしいことを指摘され、素華は誇らしげに朝あったことを説明する。素華はアキラの名誉のためだろうか、少しだけ大袈裟に伝えていたのだけれど、アキラは照れながら、『そんな感じです』と。素華の自慢を肯定した。
「やるじゃん、二人とも」
「でしょう? それで遅刻しちゃいまして……警察もさすがに、及川さんのやらかしたことに思うところはあったみたいで。何度も警察から傷つける意図はなかったのかって聞かれちゃいましたね」
「いやそりゃ、ホームから落ちたらそうなるよなぁ。指の一本も触れていないし、誘導していなくても……大ごとだし」
「大ごとだけれど、私は警告したから何の問題もないですけれどね。怒ったら怒りに任せて行動すると、馬鹿を見るっていい経験ですよ」
「痛快でしたよね、あの瞬間。俺も、素手で殴り倒せるくらい逞しかったらよかったのになぁ……素華さんはすごいですね」
アキラは女性に助けられてしまったことを恥ずかしく思い、ため息をつく。
「いやいや、いくら不意打ちでも催涙スプレーをぶっかけるのは私一人じゃ難しいことだし……アキラ君も。ちゃんといいことをした時は、誇っていいんだよ? あなたがいなきゃ、私もあの時声をかけられたかどうか……」
素華は苦笑するアキラと裕也に胸を張って断言する。本来ならばアキラのほうがそれくらい胸を張るべきなのだが。ただ、彼女の思惑は、一人ではどうしようもできなかったアキラは誇るよりも先に、自分の力不足を感じてしょげている節があったため……そんなことは関係ない、一人で何とかならなくても誇っていいのだと、素華は自ら率先して偉ぶっているのだ。
「そう言っていただけるのは嬉しいんですが、俺はそこまで堂々とするのはちょっと恥ずかしいので……」
アキラはそう言って苦笑するばかりであった。
「私初めて催涙スプレーを人にかけたんだけれど……いや、マジで全然目を開けられないんだね。やろうと思えば、私でもあのままぶちのめせたかも」
「室内で使ったら本当にまずいことになってたかもね。いや、俺にかからないでよかった。泣きっ面にハチなんてレベルじゃねえよ」
二人はいつになく話しに盛り上がっており、先に来ていた裕也はその様子を見て不思議そうにそちらを見る。
「どうしたお前ら? なんか今日は仲良さそうじゃないか」
「へへん、聞いて驚いてください!」
裕也に様子がおかしいことを指摘され、素華は誇らしげに朝あったことを説明する。素華はアキラの名誉のためだろうか、少しだけ大袈裟に伝えていたのだけれど、アキラは照れながら、『そんな感じです』と。素華の自慢を肯定した。
「やるじゃん、二人とも」
「でしょう? それで遅刻しちゃいまして……警察もさすがに、及川さんのやらかしたことに思うところはあったみたいで。何度も警察から傷つける意図はなかったのかって聞かれちゃいましたね」
「いやそりゃ、ホームから落ちたらそうなるよなぁ。指の一本も触れていないし、誘導していなくても……大ごとだし」
「大ごとだけれど、私は警告したから何の問題もないですけれどね。怒ったら怒りに任せて行動すると、馬鹿を見るっていい経験ですよ」
「痛快でしたよね、あの瞬間。俺も、素手で殴り倒せるくらい逞しかったらよかったのになぁ……素華さんはすごいですね」
アキラは女性に助けられてしまったことを恥ずかしく思い、ため息をつく。
「いやいや、いくら不意打ちでも催涙スプレーをぶっかけるのは私一人じゃ難しいことだし……アキラ君も。ちゃんといいことをした時は、誇っていいんだよ? あなたがいなきゃ、私もあの時声をかけられたかどうか……」
素華は苦笑するアキラと裕也に胸を張って断言する。本来ならばアキラのほうがそれくらい胸を張るべきなのだが。ただ、彼女の思惑は、一人ではどうしようもできなかったアキラは誇るよりも先に、自分の力不足を感じてしょげている節があったため……そんなことは関係ない、一人で何とかならなくても誇っていいのだと、素華は自ら率先して偉ぶっているのだ。
「そう言っていただけるのは嬉しいんですが、俺はそこまで堂々とするのはちょっと恥ずかしいので……」
アキラはそう言って苦笑するばかりであった。
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