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第14章:愛情不足の代償

20話

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『愛情の学び方ねぇ……人との接し方を学べば、友達もできる。友達がいれば、最低限の愛情は摂取できる。そして、その気になれば愛情は簡単に与えられるし、その気になれば簡単に与えてくれる相手が見つかる。そういうことを、段階的に学んで行く必要があるわ。前提条件となる人の接し方は、本来……というか、通常は親が教えなきゃいけないものよ。親が彼女を愛さなかったから、彼女は人とのかかわり方がわからない。人と関われないから、友達を作ったり、友達を認識したりすることができない。だからあの子は、友情という缶詰がそばにあることも気づかず、愛情に飢えていた』
「あぁ……なるほど。缶詰の中に食糧が入ってることも知らない、か。」
『極端な話ではあるけれどね。缶詰ほど食べ応えのある愛はそこまで頻繁に転がってないだろうけれど、野イチゴやどんぐりだって落ちてる……親からちゃんと愛情を受け、人付き合いの方法を学んでいれば、世界は小さな愛情が、探せば割とあるものだって、気付けるはず。あの子は今からそれに気づけるかしらね?』
「それに気づけないと、ホスト狂いコース、か……俺も、明日香に出会えなかったら風俗嬢に入れ込んでいたかもなぁ」
 古々の話を聞きながら、裕也は風俗嬢に入れ込む自分の姿を想像する。さすがに風俗は行ったことがなく(そもそも身分証明書が必要なので無理)想像するしかないのだが、きっとロクなものじゃないことはわかる。
「明日香は……愛情不足だと将来大変になることを知ってて、であったばかりの俺の話を聞いてくれたりとか、色々よくしてくれてたのかな……? 明日香が俺に熱心に話しかけてくれて、俺の話を聞いてくれたから……俺はまともに生きられたわけだし。小さなころの俺に、缶詰の中には食料が詰まってるぞ。どんぐりも野イチゴも食べられるぞって教えてくれてたのかな」
『まさか、小学三年生でそこまで自力で考えられるほど、明日香ちゃんは頭良くないわ』
「ひっでぇ言い方だなお前。まぁ、確かに小学三年生でそれが出来たら天才か……」
『明日香のお母さん。友子さんは一応柔道の師範やってるから……彼女も教育者として、ちゃんと勉強しているの。昔の経緯は不明だけれど、お母さんが明日香ちゃんにアドバイスしていたとか、多分そんなところじゃないかな? ただ、親に言われただけで、小学三年生の女子が、同年代の子供ときちんとお話し出来るってだけでも相当な才能の持ち主だと思うけれどね』
「……そうだな。人との接し方なんて、言われてすぐにできるものじゃねーよなぁ……」
 古々に言われ、裕也は頷いた。
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