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第14章:愛情不足の代償

16話

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「そんなの……綺麗ごとだよ」
 別の方法で、何とか家族の愛を得られないかと、縋りつくように望海は言う。
「そうですかね? 私は、家族は支えあうべきとか、そういう風潮のほうがきれいごとに聞こえますけれど……私は、家族だから支えあうんじゃなくて、支えあってるから家族なんだと思いますよ?」
 真由美がそう言うと、望海は下を向いて考える。家族を切り捨てる、だなんてことはそう簡単に決められることではない。
「ほら、ちょうど家を借りるのに困らないくらいのお金だって手に入るわけですし。部屋を借りるのって保証人が必要なんですけれど、300万円あれば保証人無しでも借りられるんですよ。私、高校を卒業したら家を出ようかと考えているから、そういうの調べてるんですよ……
 でも、私は良くても妹がって思うと、気軽に家を出るわけにもいかないし、どうしようかななんて考えてて……そう考えると、守るべき家族がいないってのはむしろ羨ましくすら思えちゃうな、なんて……」
 重い沈黙の時間が流れる。真由美は元気づけるために色々言ったつもりだが、それでも相手がどう受け取るかはわからないのだ。もしかしたら、余計に傷ついてしまうこともあるかもしれない。いくつ失言があったのだろう、と頭の中で反芻しながら、その先を言う。
「すみません、私も自分勝手にしゃべり過ぎました。でも、出来ることならプラスに考えてみましょう。私、家族をあきらめたおかげで今幸せですから……諦めるってネガティブなことのように思えますけれど、穴の開いたバケツに水を注ぐのをやめて、他のことに注力できるっていう、プラスのことなんですよ。飯塚先輩も、もしよければ、考えてください」
「私はあなたみたいに……強くなれないよ……」
「私だって最初から強かったわけじゃないんですよ? 相撲部の皆さんが強くしてくれたんです」
 そう言って真由美は微笑みかけた。
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