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第14章:愛情不足の代償

15話

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「じゃあ、私も家族に暴力を振るえっていうんですか!? そんなことしたって愛されるわけもない!」
 望海が感情的になって声を上げる。真由美の方法はあまりにも乱暴だ、そんな方法で愛を手に入れられるわけがない、と。だが、真由美が言いたいのは愛を手に入れる方法ではない。
「違いますよ。愛されなくっても別にいいじゃないですか」
 愛を返してくれない相手のために、愛されるための努力をするのは辞めたほうがいい、と真由美は言いたいのだ。
「私は家族に愛されていないとは言いませんが、少なくとも、父親には愛されていなかった。母親には愛情があるから育てて貰えているわけじゃなく、寂しいからそばに置きたいだけのような感じですし。今は、妹と、部活の仲間のほうがよっぽど……心を通い合わせられている気がします。両親なんかよりもずっと、愛されている気がします」
 言いながら真由美はつばを飲み込み望海を見つめる。
「……何よりあなたは、ただ同じ部活で歌を歌っている仲間というだけで、体を張ってくれる人がいるじゃないですか。家族に相談する前に、そんな人に弱音を漏らせたってことは、それが答えなんだと思いますよ。心の奥底では、家族よりも、部活仲間のほうを信用してる」
「そりゃ……あんなこと、家族に言ったら、今以上に……家族にバカにされて、疎まれるだけで」
「話を聞く限りだとそうなんでしょうね。だとしたら、辛いときに助け合えないのを、家族だなんて言いませんよ。実際、私を助けたのは家族じゃなく、その時点では赤の他人だった相撲部でした。あなたを助けたのも、血のつながりなんてない赤の他人だったじゃないですか?」
 真由美に言われた望海は、俯き首を横に振る。すぐに受け入れられる話ではないが、反論をしないところを見ると、頭の中ではわかっているらしい。感情的に反論をすることもしない。
「私は飯塚さんのことを、ただの合唱部の部員ということしか知りません。でも、貴方のことを私よりもよく知っている人が、あなたを心配しています。もしも、貴方と血のつながりがある存在が、あなたのことを心配していないというのなら……いっそ、捨てちゃってもいいんじゃないですかね? 私は、今の母親にそうしようと考えています」
「真田さんは、それで辛くないんですか?」
「辛いですよ。でも、辛くても、相撲部のみんながいて救われるんです。人を助けてくれる人の傍って、すごく居心地がいいんです。皆優しくて……気のいい人たちだから。望海さんも、近くにいる人を、もっと信頼したほうがいいと思います。
 遠くの親類より近くの他人……これは何も物理的な距離だけじゃなく、心の距離も、だと思いますよ?」
 真由美が自身の経験を交えて語る話に、望海が思うところは多い。しかし、彼女はまだ家族をあきらめきれない、家族の愛を求めてしまう。

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