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第14章:愛情不足の代償

10話

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 今回、要が使うのは、ブラに仕込んだ催涙スプレーだ。ズボンや下着を自分から脱がせるとなったコーチは目をぎらつかせ、油断しきっている。下半身を見つめるのに夢中なコーチは、要の上半身の動きなど全く見ていない。要はブラジャーの裏側に軽くテープで張り付けた催涙スプレーを手に取り、安全装置を外すと、パンツを脱がそうとしている春斗コーチの鼻面を軽く蹴り飛ばす。
「うぎゃ」
 と、驚き声を上げた春斗からあとずさりながら、要は催涙スプレーを吹きかけた。
「うぎゃぁぁぁぁ」
 もう言葉にならないうめき声が室内に鳴り響く。タバスコの何十倍も辛い、カプサイシンの塊のような液体を顔面に散布されるのだ、もはや目を開けるどころか正気を保つことすら困難である。正直、こんな状況になってしまえばもう、裕也も明日香も必要ない。要一人でもその気になれば武器を使って制圧できるだろう。
 とはいえ、今回のは春斗コーチをボコボコに叩きのめすことが目的ではないのだ。もちろん、許されるならばそうしたいところだが、お金をせびるために、仕事に支障が出るような怪我は良くない。
 それに、要は今まで普通に生きてきた女子高生、当然のことだが荒事には慣れていない。この卑劣なエロ教師を脅すのも、口止めするのも、どうやればいいかなんて漫画やドラマの世界でしか想像できない。だが、そういうアフターケアは相撲部が担当してくれるから大丈夫なはずだ。
 要は手早くチェーンロックと家のカギを開け。下着姿のまま外に出る。そんな要を、外の人間にみられないように素華が素早くワンピースをかぶせてあげた。ぶかぶかのノースリーブなワンピースは5秒もあればきちんと着用できた。
「大丈夫ですか? 行きましょう」
「うん、大丈夫……ありがとう」
 要はワンピースを素早く着込むと、足早にコーチのアパートを後にする。
「死ね! 糞エロおやじ」
 最後、捨て台詞を吐いて要はその場を後にする。
「私達も盗聴器で中の様子を聞いてたけれど、あれは酷いね……ちょっと、そのままネットにばらまきたいレベルの気持ち悪さ」
 素華はそういって苦笑する。
「やめてよ。モザイクかけてても私が恥ずかしいじゃない」
「ですよねー」
 怒りをあらわにする要に、素華は苦笑しながら肯定するのであった。
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