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第14章:愛情不足の代償
7話
しおりを挟む「それじゃあ、やると決まったらまずは隠しカメラを選ばないとね。腕時計型の盗撮機とか、ぬいぐるみ型、メガネ型、ボタン型、色々あるけれど……ちょっと持ってくるね」
明日香はそう言って自宅に戻り、盗聴器と盗撮機を選別してくる。
「それを使って、その小島春斗コーチって奴が色々変な要求しているところを撮ればいいんだろ? 例えば、コーチが『じゃあ要ちゃん、服を脱いで』とか……言うシーンを」
「演技だとはわかっててもきもい!」
裕也のたとえ話に素華は容赦なく嫌な顔をする。
「好きでもない年上のおっさんにそんなことは言われたくないですねぇ……」
真由美は苦笑する。心の中では、裕也に言われたらと思うと……と、心がときめいたのは内緒だ。そんな雑談を挟んでいるうちに、明日香が盗聴器や隠しカメラの選別をして戻ってくる。
「はい、これらの中から違和感が少ないものを選ぶとして。と、私達が隠しカメラを使うから思い出したんだけれど、そのコーチの特別レッスンを受けた子って、脅されているとかって話でしょ? そいつも隠しカメラとかで動画を撮影しているってことだ。ってことは、パソコンとかスマホとかを調べればボロボロ出てくるはず。そういうところをきちんと証拠に残して……それで、動画とかも証拠としてデータを保存しないとね。あまり気は進まないけれど」
結局、この相撲部の人助け部門でリーダー格となる明日香と裕也は、そんなに頭が良くない。かといって悪いわけではないが、結局のところ出たとこ勝負で何とかするしかない。ただ、二人は現状の打破、ばかりを考えていて、少し見落としがちなこともある。もちろん、脅されている状況を打破し、これ以上惨めな気持ちにならないことも大事なのだが……
「あの、証拠をつかむってことは、私の動画が……」
望海が顔を曇らせている。明日香や裕也のやり方では、どうやっても望海が脅しに使われてしまった動画を一部分だけでも見てしまうことになる。一応明日香も『あまり気は進まない』と口にしてこそいるものの、『目的のためには仕方ない』という割り切りのせいで大した事がないかのように扱われてしまっている。
「あの、望海さん。あの二人は、他人を積極的に傷つけるような真似はしません……だから、心配しないでください」
望海の様子に気づいた真由美が、二人をフォローする。
「ただ、ちょっとあの二人は……なんていうかな。現状を上手く打破することに関しては上手いんですが、その……ちょっとばかし、頼ってきてくれた人のことを置いてけぼりにして解決してしまうきらいがありまして……貴方の動画は、あなたが確認しましょう。それでいいですよね?
なんと話すべきか迷いつつ、言葉を選びつつ真由美は続ける。自分の動画は自分で確認。自分の過去から目を逸らしたいが、確かにそれしかなさそうだと、望海は頷いた。
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