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第14章:愛情不足の代償

5話

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「だ、だめ……」
 要がお気楽に、無警戒な女のふりをしていたら、震える声で望海が言った。その態度を見て望海はやっぱり、特別なレッスンなんてものは、女子生徒を家に連れ込むための方便であることを確信する。
「どうしてダメなの? まさか、特別レッスンは……自宅に女子生徒を招き入れるための方便、とか?」
 要は、急に望海と視線を合わせ、真面目な声で問いかける。望海は言葉に詰まってしまった。
「正直な話、飯塚さんは熱意はあるけれど……あんまり歌も上手くないし、なんかこう、そんなに好きじゃないって感じ。なんで選ばれたのか不思議だったけれど、もしもコーチの特別レッスンとやらが、ちょっとした取引で、あなたがそれに乗っていたのだとしたら……色々と納得いくんだよね。私は、歌を歌うのが好きで……コンクールに無理に出場するつもりもないし。
 別に、望海ちゃんが、私が想像してる方法でレギュラー入りしたとしても、別に……好きにすればいいと思う。納得ずくで、今の結果に満足しているならそれでもいいと思う。けれど、もしも……なんかまずいことになっているんだったら、助けを求めたほうがいいと思うよ……うん、それだけ。
 私達、別に仲がいいわけではないけれどさ。でも、同じ部活で一緒に歌を歌った仲じゃん? 私はコンクールには出場できていないけれど、文化祭とか学校のイベントで何度も歌いあったわけだし……なんか、知り合いが酷い目にあっていたら、助けたいと思うの普通じゃん?」
 望海は心当たりがあるのだろう。こんな失礼な話をされて何も反論できないということはそういうことだ。しかし、黒であることはほぼ確実でもそれを咎めたりは出来ない。隠し通したいと思うのなら、無理やり暴くことは彼女の心の傷を無理やり広げてしまうことになるから。
「あのさ……私、どうすればいいのかな?」
「どうって、私はまだ何も聞かせてもらっていないんだよ……? 話しづらいとは思うけれど、どうすればいいかなんて……何も知らない私にはわからないよ。」
「だよね」
 望海は俯きながら涙ぐむ。
「その……一回だけでも、コンクールに出られればって思ったけれど……あいつ……私、その時の映像を撮られていて……それで……何度も……」
 よく聞くような話であった。例えばオレオレ詐欺の犯罪グループは、使い捨ての下っ端の個人情報を最初に握ることで逃げられないようにするだとか。悪いことや卑劣なこと、楽をしても受けようとする人は、もっと卑劣なことをしようとする人にいいように使われてしまう。そのお手本のような出来事だ。
「……私は、どうすればいいのかな?」
「えっと、私とか、あなただけじゃどうしようもないから……頼れる人なら知ってるよ。相撲部の噂、聞いたことあるでしょ? その人たちに事情を話せるのなら……」
 相撲部は学校でいじめを解決しただとか、カツアゲにあっているところを助けてもらっただとか、商店街の落書き犯を捕まえただとか、様々な噂が広まっている。彼らならば、きっと……
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