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第14章:愛情不足の代償
4話
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「……でも、確証もないし、その女子生徒に詳しく聞くのも憚られる。そうなると部外者の私には何もできないよ? その疑わしい子が誰かは聞かないけれど、その子を問い詰めるなり、コーチを問い詰めるなり、やり方はいくらでもあるだろうけれど……この件で不幸になるべきは、今のところそのコーチだけ。しかも、コーチが悪いことを舌という確証もない……いや、グレーではあるけれどさ。それ以外が不幸になるのなら、私は迂闊に動けない。助けてほしいなら、本人が助けを求めてくれないと……」
明日香は勝手に首を突っ込んで人助けをすることはある。しかし、そういう時は善悪や損得がはっきりしている時だけだ。雪野恭平の時は、労働者を食い物にする会社が絶対的な悪であることがほぼ確実であり、その被害者となる恭平を助ける分には、彼が損することまずあり得なかった。
しかし、今回の場合はそうはならない。
「……じゃあ、私が聞いてみる」
「大丈夫なの? それしかないとは思うけれど……ま、その子が何も口を割らなかったら、それで放っておくしかないわね。別に、そのコーチとやらが無理やり手を掴んで襲い掛かったわけでもないんだろうし」
明日香は、苦しんでいる女性がいればそれを放っておくつもりはない。しかし、苦しむとわかっていて自ら飛び込むような女性に関しては、それを無理やり助けるのは違うと思っている。だが、もしも裸の動画で脅された桜川美紀のように、一度の過ちを犯してしまったがために、その時の写真や動画を使っていつまでも脅されたりなどしていたら……そういう可能性も考えると、やはり放ってはおけなかった。
明日香は待つことしかできないため、白石はその日、『どうしてレギュラーに選ばれたかわからないのに、選ばれた生徒』に接触を図る。彼女の名前は飯塚 望海。誰よりも真面目に合唱部へ毎日足を運び、腹筋を鍛えて声を出し、背筋を鍛えて姿勢を正し、家に帰ってからも喉のケアを怠らない。努力ならだれにも負けていない子である。
その頑張りはあるのだが、彼女はどう頑張っても良い声が出せず、音程もいまいち。声があらぬ方向に震えてしまって安定して長い音が出せないなど、素人に毛が生えた程度の歌唱力しかない。ありていに言ってしまえば、こういう子を才能がない、というのだろう。
その子を人気のないところに呼び出した要は、戸惑う彼女をよそに話を切り出す。
「あのさ、私ね……小島コーチにレギュラー入りを誘われたんだ」
「へ、へー……良かったじゃん。それで?」
望海には明らかに動揺していることが見て取れた。口調も何だかおぼつかないし、目も泳いでいる。
「でも、その代わりの特別レッスンをするからって、家に来るように誘われちゃった。どんな特別レッスンしてもらえるんだろ? 楽しみ!」
「え、それは……」
要はお気楽にコーチに誘われたことを話す。特別レッスンが文字通り、特別な熱血指導だと思っている風に話していれば、望海は何か警告してくれるのではないだろうか、と。
「ん? どしたの? そういえば、望海さんは特別レッスンとか、受けたことあったりする? もしそうならさ、ちょっと緊張するからさぁ、どんなことするのか教えてくれないかなぁ。今から似たようなトレーニングやっておくのもいいかもだし」
要はそう言って望海から情報を引き出そうとする
明日香は勝手に首を突っ込んで人助けをすることはある。しかし、そういう時は善悪や損得がはっきりしている時だけだ。雪野恭平の時は、労働者を食い物にする会社が絶対的な悪であることがほぼ確実であり、その被害者となる恭平を助ける分には、彼が損することまずあり得なかった。
しかし、今回の場合はそうはならない。
「……じゃあ、私が聞いてみる」
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明日香は、苦しんでいる女性がいればそれを放っておくつもりはない。しかし、苦しむとわかっていて自ら飛び込むような女性に関しては、それを無理やり助けるのは違うと思っている。だが、もしも裸の動画で脅された桜川美紀のように、一度の過ちを犯してしまったがために、その時の写真や動画を使っていつまでも脅されたりなどしていたら……そういう可能性も考えると、やはり放ってはおけなかった。
明日香は待つことしかできないため、白石はその日、『どうしてレギュラーに選ばれたかわからないのに、選ばれた生徒』に接触を図る。彼女の名前は飯塚 望海。誰よりも真面目に合唱部へ毎日足を運び、腹筋を鍛えて声を出し、背筋を鍛えて姿勢を正し、家に帰ってからも喉のケアを怠らない。努力ならだれにも負けていない子である。
その頑張りはあるのだが、彼女はどう頑張っても良い声が出せず、音程もいまいち。声があらぬ方向に震えてしまって安定して長い音が出せないなど、素人に毛が生えた程度の歌唱力しかない。ありていに言ってしまえば、こういう子を才能がない、というのだろう。
その子を人気のないところに呼び出した要は、戸惑う彼女をよそに話を切り出す。
「あのさ、私ね……小島コーチにレギュラー入りを誘われたんだ」
「へ、へー……良かったじゃん。それで?」
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「でも、その代わりの特別レッスンをするからって、家に来るように誘われちゃった。どんな特別レッスンしてもらえるんだろ? 楽しみ!」
「え、それは……」
要はお気楽にコーチに誘われたことを話す。特別レッスンが文字通り、特別な熱血指導だと思っている風に話していれば、望海は何か警告してくれるのではないだろうか、と。
「ん? どしたの? そういえば、望海さんは特別レッスンとか、受けたことあったりする? もしそうならさ、ちょっと緊張するからさぁ、どんなことするのか教えてくれないかなぁ。今から似たようなトレーニングやっておくのもいいかもだし」
要はそう言って望海から情報を引き出そうとする
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